炒海瓜子│アサリ炒め

炒海瓜子│アサリ炒め

四方を海に囲まれた台湾では日本と同じように海産物が豊富で、貝類も日本とほぼ同じような種類のものが食べられます。本日紹介する『炒海瓜子』は中でも定番で、熱炒の店では全国どこでも食べることができます。旅行本などでも『アサリの炒め物』などという名前で紹介されていたりするので、旅行中に食べたことがある方も多いかもしれません。

さてまたまた細かい話になりますが、どうにも名称の表記にゆれがあり混乱しています。
日本・中国・台湾のWikipediaで調べたところ、台湾でいわゆる「海瓜子」と呼ばれるらしきものは学名を Ruditapes variegata というらしく、写真を調べても日本でいう「ヒメアサリ」に該当します。日本で言う(狭義の)アサリは学名が Ruditapes philippinarum で、どうやら厳密には別の種のようですが、"広義にはアサリ属に属する二枚貝の総称で、日本でもアサリ以外にヒメアサリ(学名 Ruditapes variegata)もアサリと呼ぶ場合が多い。"と日本のWikipediaにあるので、アサリの炒め物と訳しても問題はなさそうです。

ただし問題はここからです。

1.中国のWikipediaで『海瓜子』を検索すると、「虹彩樱蛤(Tellina iridescens)」という貝がヒットします。
2.台湾のWikipediaで『Ruditapes variegata』 を検索すると、「杂色蛤仔(繁体字では雜色蛤仔)」という貝がヒットし、こちらは台湾での通称を「小眼花帘蛤」というそうです。海瓜子の文字はありません。
3.台湾のWikipediaで『Ruditapes philippinarum』 を検索すると「菲律賓蛤仔」という貝がヒットし、こちらの俗名が「雜色蛤()」というそうです。

三種の貝の別名がめちゃめちゃに混乱しています。

台湾人が「海瓜子」という名で呼んでいる貝は別の種の別名ということで誤用、もしくは中国語のWikipediaの間違いのどちらかの可能性が出てきました。筆者も混乱しております。

写真と実物を見る限り、台湾で一般に『炒海瓜子』として食べられている貝の学名は"Ruditapes variegata" でほぼ間違いは無く、その和名はヒメアサリということも間違いありません。ただし、海瓜子という中文名はもともと別の貝の名で、どこかで誤解が発生しているようです。写真を見る限り間違うような形ではないのですが…、動物は専門ではないのでよく分かりません、覚えていたら今度図書館で図鑑を調べ来ることにします。

まぁ、料理とはまったく関係ありませんので、この辺で…。こんなこと調べる料理ブログはたぶんここだけでしょう。興味の無い方は読み飛ばしてください。

調理は非常に簡単です。砂抜きをしておけば、炒めるのに5分もかかりません。日本で作るなら普通のアサリ(中文で花蛤といいます)を使って作りましょう。海瓜子の謎は謎のまま…来週に続く…(続きません)。




難易度:


調理時間:
下準備+一瞬

材料:
アサリ ………600g
生姜 ……… 15g
ニンニク ……… 20g
ネギ ……… 1本
ごま油 ……… 大さじ2


調味料:
オイスターソース ……… 大さじ1
醤油 ……… 少々
酒 ……… 大さじ3
砂糖 ……… 小さじ1/2

下準備:
1.アサリは塩水に8時間漬けて砂を吐かせておく。殻が開いていないものは捨てる。

2.沸騰したお湯でアサリを1分ほど茹で、取り出しておく。

作り方:
1.生姜とニンニクはみじん切りにする。ネギはぶつ切りにする。

2.熱した鍋にごま油を入れ、ニンニクと生姜、ネギを入れ香りが出るまで炒める。

3.アサリを入れ強火で炒める。調味料をすべて加えサッとかき混ぜたら、蓋をして1分蒸して完成。

Point:
好みで唐辛子や、ピーマン、タマネギなどを加えてみましょう。

台湾では九層塔を加えたりしますが、日本ではバジルなどの香草で代用してもいいと思います。

名前の通り、アサリを炒めただけの料理なので、味付けやその他の具は自由自在です。好みでいろいろとアレンジして作ってみましょう。




9 コメント :

Unknown さんのコメント...

なんとなく調べつつたどり着きました
海瓜子は和名ではイヨスダレって貝ではないでしょうか?
台湾の旭海という漁港で食べたものの柄や形から一致するものはそれっぽいという結論になりました

Higene さんのコメント...

Endo Masataneさま。

情報ありがとうございます。
イヨスダレ確認してみました!
模様はとても似ています。
しかし台湾の「海瓜子」は殻にもう少し深いぎざぎざ模様が入る気が…。

こうなったら徹底的に調べるしかないですね!
後で書店に行って台湾貝類図鑑買ってきちゃいます。

追加情報をお待ちください。

Unknown さんのコメント...

逆にイヨスダレの学名 Paphia undulata (Born,1778)
から画像検索をしてみるとたくさん出てきますが中には模様の少ないモノから、まさにコレだ!と言う見た目のモノまで出てきます。
私が食べたものは黄土色ベースで茶系のギザギザ模様がシッカリ入っているものでした。
住んでる地域によって柄は色々になるかもしれませんね(アサリ自体もそうですから)
独特の間延びした殻の形状からして間違いは無さそうだと思います(近い種類の中にあの形状はあまり無い?ような気がします)

Higene さんのコメント...

Endo Masataneさま

さすがお詳しい!
旭海は南部の港なので台北(たぶん基隆産)で取れたものとは外観が少し異なるかもしれませんね。

図鑑で調べてまいりました。
イヨスダレ Paphia undulata の中国名は波紋巴非蛤、台湾名は波紋橫簾蛤で、別名を「山瓜子」と呼び食用にするとは書かれていましたが、これが「海瓜子」だとは記載がありませんでした。

しかし別の図鑑では山瓜子は Paphia amabilis だとも。

調べる過程で"我国东南沿海5个波纹巴非蛤(Paphia undulata)地理群体的形态差异分析"という中国の論文を見つけて読んでみたのですが、地域によって外観や成分に差異があるようです。論文の本文はこちらです。
http://www.marinejournal.cn/hyyhz/ch/reader/create_pdf.aspx?file_no=201001016&year_id=2010&quarter_id=1&falg=1
論文の回帰分析にミスが有りそうな気もするのですがそれはおいといて…。

こうなったらとことん調べた方が良さそうですね…明日のレシピは「海瓜子」を使ったものにすることにして、本物買ってきます。

しばらくブログウォッチをお願いします。

Higene さんのコメント...

ちなみに台湾貝類図鑑という中央研究院のデータベースによると

1.Ruditapes variegataは
https://shell.sinica.edu.tw/chinese/shellpic_T.php?science_no=2743

2.Paphia undulataは
http://shell.sinica.edu.tw/chinese/shellpic_T.php?science_no=2749

3.Paphia amabilisは
https://shell.sinica.edu.tw/chinese/shellpic_T.php?science_no=2744

となっています。

Unknown さんのコメント...

旭海で炒海瓜子として食べたのは確かに2番の波紋横簾蛤です
中国語名でもスダレの字が入ってるのは面白いですね
旭海は6日間でバイクで台湾の外周を反時計回りに回った時に昼食で立ち寄りました
1月は寒くて「水曜どうでしょう」並のキッツイ旅でした(笑)
他の料理も楽しく拝見させていただいて参考にしています!

Unknown さんのコメント...

ただ炒海瓜子で画像検索すると違う貝ももちろん出ますがかなりの量でイヨスダレが出るのは一体何でしょうね・・・
地域的に南部はイヨスダレを海瓜子として扱ってるとか?

Unknown さんのコメント...

画像検索を眺めていて気付いたのは
「海瓜子」で検索すると1番の貝がメインで一定量の2番が混じる
「山瓜子」で検索すると3番の貝がメインで一定量の2番が混じる
共に2番が混じるのは1/4から1/3くらいですかね?

Higene さんのコメント...

Endo Masataneさま

台湾最高裁判所の上告棄却の主文(92年台上字第6315號)にて以下のような文章が見つかりました。

「三人竟共同基於直航至大陸地區及私運管制物品進口之犯意聯絡,於九十年五月二十九日上午十一時五十分許,由東港安檢所報關出港,航行至東經一百十八度、北緯二十三度五十分即距大陸地區福建省白礁八•五浬處之大陸地區海域,向不詳姓名之人購買橫簾蛤(俗稱山瓜子,起訴書誤為海瓜子)三千二百公斤及小眼花簾蛤(俗稱海瓜子,起訴書誤載為花蛤)九百九十公斤,合計為四千一百九十公斤,已逾公告數額一千公斤而私運進入台灣地區。」

要約すると
「三人は共同で不正輸入の犯意を持って連絡を取りあいながら大陸地区に航海し、(民国)90年5月29日午前11時50分ごろ、東港安檢所に出航の報告をし、東経118度、北緯23度50分、即ち大陸地区福建省白礁8.5kmの大陸地区海域に航海し、氏名不詳の人より"橫簾蛤(俗称山瓜子、起訴状では海瓜子と誤記)3200kg及び小眼花簾蛤(俗称海瓜子、起訴状では花蛤と誤記)990kg、合計4190kgを購入し、1000kgの私的輸入の制限を越えて台湾地区に輸入した。」

という内容です。起訴状で橫簾蛤(俗称山瓜子)を海瓜子、小眼花簾蛤(俗称海瓜子)を花蛤と誤解していたと記載があります。

また2015年に高雄高等裁判所が台湾水産試験所に宛てた質問が公開されているのですが、
Q:有關臺灣高雄地方法院檢察署函請查明「小眼花簾蛤」俗稱「海瓜子」及「橫簾蛤」俗稱「山瓜子」之產地及該二種水產品係屬海上漁獲或是養殖生物案,轉請貴所研處逕復。
 訳:小眼花簾蛤、俗称「海瓜子」及び横簾蛤、俗称「山瓜子」の生物学上の所属、海上漁獲或いは養殖品かどうかについてお答えください。

A:小眼花簾蛤學名 Ruditapes variegates (Sowerby ,1852),主要分布於印度洋、太平洋,包括日本(相模灣以南)、中國(福建平潭以南、廣東、香港、海南)及台灣西部沿海;橫簾蛤學名 Paphia amabilis (Philippi, 1847) 分布於日本(房總以南)、中國(福建、廣東、廣西、海南)及台灣。台灣目前並無上述兩種貝類的養殖,可能屬海上漁獲物。
 訳:小眼花簾蛤、学名 Ruditapes variegates (Sowerby ,1852)はインド洋、日本(相模湾以南)を含む太平洋、中国(福建省平潭以南、広東、香港、海南)及び台湾製部の沿海に分布します。横簾蛤、学名 Paphia amabilis (Philippi, 1847)は日本(房総以南)、中国(福建、広東、広西、海南)及び台湾に分布します。台湾では現在両種の貝についての養殖は行われておらず、おそらく海上において漁獲されたものです。

という文章も見つかりました。どちらも公文書で、特に最高裁判所のものはかなり決定的ですね。というわけで海瓜子(小眼花簾蛤)は Ruditapes variegates、山瓜子(橫簾蛤)は Paphia amabilis で、イヨスダレ Paphia undulata はその両者と混同されているということになりそうです。

裁判所の起訴状ですら間違うレベルなので、漁獲者や料理人、ましてや一般の飲食店で区別がつかないのも納得です。

実際どれだけ誤用されているのか今後も継続して調査していきます。

 
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