千金雞│千金鶏

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難易度:☆ 調理時間:30分以内
『千金雞│千金鶏』という面白い名前の料理を紹介します。「一刻値千金」という成語から生まれた快速鶏肉料理です。

中国語学習者がはじめに習う単語に時間の概念があります。時間の長さを現すときは、天、小時、分、秒など。日時をあらわすときは、号、点、分鐘、秒鐘などと日本語との微妙な違いに困惑する方も多いかもしれません。

時間を学ぶ時に必ず教科書に載っているのが「刻」という単位。台湾ではまったく使いませんが、15分を表す時間単位です。刻とは水時計の刻みのことで、古代中国では1日=100刻の時制が用いられていました。時代によって一日が96刻になったり108刻になったりもしましたが、清代に西洋から一日24時間制が導入されてから、24で割り切れる1日=96刻制が定められました。これから1時間=4刻、1刻=15分というわけです。

中国には「一刻値千金」、つまり「時は金なり」という成語があり、この料理は調理がほぼ15分で終了するので『千金鶏』という名前が付けられました。調理時はストップウォッチを片手に挑戦してみましょう(笑)。下準備もあるのでなかなか本当に15分というわけにはいきませんが、時間との戦いを強く意識させられる料理です。

味付けは『すき焼き』に似て少し濃い目、ご飯などのおかずに最適です。ぜひ再現してお楽しみください。


咖哩南瓜片│カボチャの薄切りカレー風味

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難易度:☆ 調理時間:30分以内
中餐乙級素菜證照」シリーズから、『咖哩南瓜片│カボチャの薄切りカレー風味』のレシピを紹介します。調理はとても簡単ですが、薄切りにしたカボチャにちょうどいい塩梅で火を通す技巧が求められます。

日本ではカボチャは一年を通して購入できますが、カボチャの本来の旬は夏から秋にかけて。ナノになぜ一年を通して新鮮なカボチャが手に入るかというと、冬から春のカボチャは南半球から輸入しているからなのです。また日本は縦長の国土を生かして初夏は沖縄のもの盛夏から秋口までは北海道のものと全国土を使ってカボチャの出荷時期をずらしています。これにより年中おいしいカボチャが食べられるというわけです。近年は中国産のカボチャが解禁されたので、北海道より北部の黒竜江省や吉林省から初冬にカボチャを輸入することが可能になりました。

以上のようにスーパーでは一年を通してカボチャの産地が移り変わります。海外産の農作物がいやだという人も多いでしょうが、農作物の旬と安定供給のシステムをご理解の上、品質を見極めたうえでご賞味ください。

 それではレシピです。カボチャの甘さとカレーの辛さがほど良く調和したおかず料理、ぜひお楽しみください。



涼拌三絲南瓜│カボチャと三色野菜のサラダ

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難易度:☆ 調理時間:30分以内
中餐乙級素菜證照」シリーズから、『涼拌三絲南瓜│カボチャと三色野菜のサラダ』のレシピを紹介します。カボチャをはじめ、キュウリ、タケノコの千切りの技巧が試される料理です。それぞれ硬さが似ていますので、包丁技術の修練にはもって来いです。

カボチャの属するウリ科には有用な植物が多いと『炸南瓜球』の記事で書きました。ここではウリ科の有用植物をざっとまとめて見ましょう。

アマチャヅル:成分の化学構造が高麗人参に似ていることから一時期非常にブームになりました。中国語で「五葉蔘」などといい、胃潰瘍などの薬にされます。

ラカンカ:漢字で「羅漢果」と書きます。モグロシドという砂糖ではない特殊な甘味成分を含み、低カロリーの甘味料として注目されています。薬局ではのど飴や甘味料として有名です。

ゴーヤ:ニガウリの別名でも知られ、正式和名はツルレイシ。台湾料理ではおなじみの食材です。

ヘチマ:小学校の栽培実習でおなじみヘチマ。中華料理では未成熟果実が食材になります。ヘチマ水は化粧水としての用途の他、咳止めなどにも用います。

ヒョウタン:中華料理では食用にもされますが、酒や水の器としての方が有名でしょう。

トウガン:中華料理ではすっかりおなじみの食材。癖がないので様々なスープ料理に使われます。

スイカ:夏の風物詩としてアジア各国で大量に消費されます。皮は西瓜皮(せいかひ)という生薬になります。

キュウリ:世界中で食べられている野菜の一つで、様々な品種があります。低カロリー食材としてもおなじみです。

メロン:中国語で「甜瓜」といいますが、果肉の黄色い中国産の品種である「哈密瓜」をメロンの正式名称と勘違いしている台湾人が数多くいます。西日本の島嶼部では野生化したものがあるそうです。

他にもカラスウリ、マクワウリ、ズッキーニなど様々な種類があります。それぞれに亜種や栽培品種が多数あります。「人類が栽培した最も古い作物」といわれるのも納得です。栽培されているものは接木されているものが多いので、根と果実で元の植物が異なるものも多数あります。

ウリにまつわる古代神話や童話も世界中にあるので、興味のある方は収集して研究してみましょう。それではレシピです。



粉蒸南瓜塊│カボチャの粉蒸し

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難易度: 調理時間:2時間
中餐乙級素菜證照」シリーズから、『粉蒸南瓜塊│カボチャの粉蒸し』のレシピを紹介します。カボチャに米粉で作った衣をまぶしてから蒸して作る「粉蒸」という技法で作る料理です。和食にはない調理方法ですのでぜひ覚えておきましょう。

(記事は明日更新します)


炸南瓜球│カボチャ揚げ饅頭

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難易度:☆ 調理時間:1時間以内
中餐乙級素菜證照」シリーズから、『炸南瓜球│カボチャ揚げ饅頭』のレシピを紹介します。カボチャを生地に練りこんで作るおやつ代わりの料理です。以前紹介した『地瓜球│サツマイモボール 』とは名前は同じですが細かい作り方が異なります。

カボチャは漢字で南瓜とかき、ウリ科の植物であるのは名前の通り。カボチャを含むウリ科の植物は分類が「とても」安定しない科として植物学の世界ではとても有名です(笑)。ウリ科には約130の属がありますが、この属間の類縁関係が未確定な物が多く、新たな説が次々と登場しては消えていきます。学習者泣かせの科といえるでしょう。その理由の一つに人類登場と同じくらいの古くから「食用」にされており、世界中で古代から食用にされてきたため遺伝子がめちゃくちゃに混ざり合っていることも関係しているようです。未だに野生種が見つかっていないものも数多くあるそうです。野生のメロンやスイカなどもあるそうで、絶対においしくないと思いますが一度味わってみたいものですね。

ウリ科の植物には生薬として使われるものも数多くあるので、食用だけでなく薬用としても人類に大きく貢献しています。かくいうカボチャの種も「南瓜子(なんかし)」という利尿の薬として古代中国では用いられました。百日咳ウイルスにも効果があるそうです。カボチャの種は豊富な栄養素を含有するので、今でも健康スナックとして世界各地で人気があります。

皆さんもカボチャを丸ごと手に入れたら種を捨てずに乾燥させ、煎って食べたり、お茶にしたりしてみましょう。

それではレシピです。ほんのり甘い中華カボチャスイーツをお楽しみください。



燒冰糖南瓜│カボチャとナツメの砂糖炒め

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難易度: 調理時間:1時間以内
さていよいよ始まった「中餐乙級素菜」シリーズ。記念すべきシリーズ第一弾は『燒冰糖南瓜│カボチャとナツメの砂糖炒め』のレシピを紹介します。

カボチャの形を崩さないように作るのが技で、一度蒸して半分火を通してから炒めて火を通します。角を残しつつも完全に火を通せるように練習してください。

さて、カボチャは60度前後でじっくり加熱することでデンプンを糖に変えるタンパク質が働き、甘味がますという性質があります。「以前紹介したサツマイモの調理方法」と同じです。長期間保存することでも甘味が増すので、新鮮なものよりも収穫してから1ヶ月から1ヵ月半ほど経ったものが保管した物が最も糖度が高くなります。石焼芋のように石焼カボチャを売るのも面白いかもしれませんね。ちなみにこの糖度の高さを利用してカボチャを使ってビールも造れます。

食物繊維を豊富に含み緑黄色野菜で、台湾の客家の間では「番瓜(蕃瓜)」とも書かれます。中国では日本のもの以上に多くの品種のカボチャが流通しており、台湾の市場でも日本では見たことのないような珍しいカボチャを見かけることが出来ます。機会があれば食べ比べてみましょう。

それではレシピです。このシリーズを通して様々な素食技法を学んでいきましょう。


中餐乙級葷菜證照の課題料理

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本ブログでも人気の「中餐丙級證照」 シリーズに続いて、いよいよ「中餐乙級證照」シリーズの始まりです。2013年に甲級の資格試験の開始が本格的に議論され始めたので、数年内に甲級試験が はじまる予定ですが、それまでは乙級試験が台湾における中華料理資格試験の最高峰です。乙級は葷菜と素菜、即ち肉を使った料理と使わない料理に分けられて おり、課題で扱う料理が異なります。

ここでは葷菜と素菜に分かれている乙級中餐烹調技術士の葷菜部門の課題料理を解説して行きます。

丙 級では課題の料理が「大体作れているか」 が合否の判断基準ですが、乙級では作る手順だけでなく「味」も合否の基準になります。課題料理は以下に示すように全部で105種類。201、202、203の3グループ、それぞれのグループにつきA、B、C、D、Eの五組の料理があり、それぞれの組に7種類の料理があります。実地試験では 201菜式から一組、202から一組、203から1組の合計21種類の料理を二人一組で作ります。材料は肉に魚介に野菜、調理方法は揚げたり蒸したり炒めたりと非常に幅広い中華料理の技術が試されます。一通り全部作れるようになっておけば中華料理の基礎はほぼ習得したと考えてよいでしょう。

あわせて学科試験もあるので料理以外の座学も必要です。外国人でも受験することが出来るので、腕(と中国語)に自信のある方は挑戦してみてはいかがですか?

  • 201菜式
    • A
      1. 蒸牛肉丸│蒸し牛つみれ(☆)
      2. 煙燻黃魚│揚げ黄魚の燻製(☆☆)
      3. 五柳魷魚
      4. 糖醋佛手黃瓜
      5. 白果燴芥菜
      6. 掛霜腰果
      7. 炸韮菜春捲
    • B
      1. 酸菜炒牛肉絲
      2. 松鼠黃魚
      3. 白果炒魷魚
      4. 涼拌佛手黃瓜
      5. 金銀蛋扒芥菜
      6. 掛霜腰果
      7. 炸肉絲春捲
    • C
      1. 炒牛肉鬆
      2. 拆燴黃魚羹
      3. 椒鹽魷魚
      4. 麻辣佛手黃瓜
      5. 金菇扒芥菜
      6. 掛霜腰果
      7. 炸牡蠣春捲
    • D
      1. 煎牛肉餅
      2. 酥炸黃魚條
      3. 彩椒炒魷魚
      4. 酸辣黃瓜條
      5. 三菇燴芥菜
      6. 掛霜腰果
      7. 炸韮黃春捲
    • E
      1. 彩椒滑牛肉片
      2. 蒜子燒黃魚
      3. 西芹炒魷魚
      4. 廣東泡菜
      5. 竹笙燴芥菜
      6. 掛霜腰果
      7. 炸素菜春捲
  • 202菜式
    • A
      1. 炸杏片蝦球
      2. 粉蒸小排骨
      3. 蔥油雞
      4. 宮保墨魚捲
      5. 佛手白菜
      6. 三絲蛋皮捲
      7. 鮮肉水餃
    • B
      1. 椒鹽蝦球
      2. 京都排骨
      3. 人參枸杞醉雞
      4. 家常墨魚捲
      5. 香菇白菜膽
      6. 高麗菜蛋皮捲
      7. 花素煎餃
    • C
      1. 蝦丸蔬片湯
      2. 豉汁小排骨
      3. 玉樹上湯雞
      4. 金鈎墨魚絲
      5. 什錦白菜捲
      6. 豆芽菜蛋皮捲
      7. 香煎餃子
    • D
      1. 時蔬燴蝦丸
      2. 蔥串排骨
      3. 燻雞
      4. 芫爆墨魚捲
      5. 銀杏白菜膽
      6. 韮黃蛋皮捲
      7. 蝦仁水餃
    • E
      1. 三絲蝦球
      2. 紅燒排骨
      3. 家鄉屈雞
      4. 蔥油灼墨魚片
      5. 千層白菜
      6. 冬粉蛋皮捲
      7. 高麗菜水餃
  • 203菜式
    • A
      1. 滑豬肉片
      2. 五柳鱸魚
      3. 蒸一品雞排
      4. 香蕉蝦捲
      5. 威化洋菇海皇羹
      6. 干貝燴芥菜
      7. 八寶芋泥
    • B
      1. 炒豬肉鬆
      2. 鱸魚兩吃
      3. 油淋去骨雞
      4. 百花豆腐
      5. 鮮菇三層樓
      6. 蟹肉燴芥菜
      7. 芋泥西米露
    • C
      1. 蒸豬肉丸
      2. 松鼠鱸魚
      3. 香橙燒雞排
      4. 沙拉蝦捲紫菜
      5. 翡翠芙蓉羹珍菇
      6. 香菇燴芥菜
      7. 蛋黃芋棗
    • D
      1. 乾炸豬肉丸
      2. 鱸魚羹
      3. 百花釀雞腿
      4. 蘋果蝦鬆
      5. 鮑菇燒白菜
      6. 蜊肉燴芥菜
      7. 紅心芋泥
    • E
      1. 煎豬肉餅
      2. 麒麟蒸魚
      3. 八寶封雞腿
      4. 果律蝦球
      5. 碧綠雙味菇
      6. 芥菜鹹蛋湯
      7. 豆沙芋棗│サトイモ団子(☆)

中餐乙級素菜證照の課題料理

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本ブログでも人気の「中餐丙級證照」シリーズに続いて、いよいよ「中餐乙級證照」シリーズの始まりです。2013年に甲級の資格試験の開始が本格的に議論され始めたので、数年内に甲級試験がはじまる予定ですが、それまでは乙級試験が台湾における中華料理資格試験の最高峰です。乙級は葷菜と素菜、即ち肉を使った料理と使わない料理に分けられており、課題で扱う料理が異なります。

ここでは葷菜と素菜に分かれている乙級中餐烹調技術士の素菜部門の課題料理を解説して行きます。

丙級では課題の料理が「大体作れているか」 が合否の判断基準ですが、乙級では作る手順だけでなく「味」も合否の基準になります。課題料理は以下に示すように全部で90種類。18種類の主材料が6種類ずつ301、302、303の3グループに分けられており、それぞれの材料につきA、B、C、D、Eの五組の料理が課題になっています。実地試験では301菜式から一組、302から一組、303から1組の合計15種類の料理を作ることになります。レシピのそれぞれの組は根菜、豆腐、青菜、素肉、茸、麺・飯の組み合わせになっており、満遍なくいろんな素材を使って様々な料理の技能を確認できるように考えられています。

あわせて学科試験もあるので料理以外の座学も必要です。外国人でも受験することが出来るので、腕(と中国語)に自信のある方は挑戦してみてはいかがですか?

  • 301菜式
  • 302菜式
    • 芋頭│タロイモ
      1. 紅燒芋塊
      2. 酥炸芋條
      3. 三菇芋丁羹
      4. 糖醋芋丸
      5. 鹹味蒸芋絲塊
    • 乾絲│干し豆腐の千切り
      1. 青椒炒干絲
      2. 木樨涼拌干絲
      3. 涼拌三色干絲
      4. 涼拌芹菜干絲
      5. 涼拌辣味干絲
    • 高麗菜│キャベツ
      1. 涼拌糖醋高麗菜絲
      2. 燒三絲高麗菜捲
      3. 蒸什錦高麗菜捲
      4. 炒雙色高麗菜
      5. 炒宮保高麗菜
    • 烤麩│焼き麩
      1. 滷五香烤麩塊
      2. 棗粒燜烤麩塊
      3. 焦溜烤麩片
      4. 鮮筍燴烤麩塊
      5. 燒胡蘿蔔烤麩塊
    • 鮑菇│エリンギ
      1. 酸菜鮑片湯
      2. 腐衣鮑片湯
      3. 糖醋鮑花
      4. 蘿蔔鮑片湯
      5. 竹筍鮑片湯
    • 米粉│ビーフン
      1. 銀芽炒米粉
      2. 沙茶炒米粉
      3. 南瓜炒米粉
      4. 三絲炒米粉
      5. 三菇炒米粉
  • 303菜式
    • 馬鈴薯│ジャガイモ
      1. 糖醋馬鈴薯排
      2. 咖哩馬鈴薯塊
      3. 炸馬鈴薯球
      4. 焦溜馬鈴薯絲
      5. 沙拉醬拌馬鈴薯泥
    • 豆皮│湯葉
      1. 薑汁豆包排
      2. 酥炸三色豆包捲
      3. 燒茄汁豆包塊
      4. 香煎豆包排
      5. 酥炸五色豆包捲
    • 西芹菜│セロリ
      1. 涼拌三色芹菜
      2. 涼拌花生仁芹菜
      3. 涼拌酸辣芹菜
      4. 涼拌蒟蒻芹菜
      5. 炒銀芽芹菜
    • 麵筋│グルテンミート
      1. 酥炸芝麻麵筋
      2. 茄汁麵筋球
      3. 炒三色麵筋片
      4. 燒豆干麵筋片
      5. 滷竹筍麵筋
    • 金針菇│シメジタケ
      1. 金菇豆腐羹
      2. 扁尖金菇湯
      3. 三絲金菇湯
      4. 榨菜金菇湯
      5. 金菇粉絲湯
    • 白飯│ご飯
      1. 翡翠炒飯
      2. 五彩炒飯
      3. 三丁炒飯
      4. 咖哩炒飯
      5. 蕃茄豆包炒飯

牛蒡雞肉湯│ゴボウと鶏肉のスープ

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難易度:☆ 調理時間:1時間以内
本日は炊飯器で作れる『牛蒡雞肉湯│ゴボウと鶏肉のスープ』のレシピを紹介します。ゴボウと鶏肉をその他の材料と一緒に炊飯器に入れるだけで作るお手軽スープです。

皆さん牛蒡の種は生薬になることを知っていましたか?今回は牛蒡の種「牛蒡子(ごぼうし)」、または悪実(あくじつ)について解説してみたいと思います。

牛蒡子はゴボウ Arctium lappa L. の種子を乾燥させた生薬で性味は辛、苦、寒で、帰経は肺、胃です。疏散風熱、透疹利咽、解毒散腫の効能があります。日本ではあまりなじみがありませんが、中医学で風邪に使われる有名な薬「銀翹散(ぎんぎょうさん)」にも配合されています。特に乳腺炎に絶大な効果があるので、漢方薬を使う産婦人科や門前の薬局ではおなじみの生薬かもしれません。皮膚に常在する細菌に優れた殺菌効果を持つことも分かっており、皮膚病に煎じ液を塗布したりして使うこともあります。近年抗腫瘍作用が発見されたことで、今後おおきく消費量を延ばしそうな生薬の一つです。

もちろんその根っこであるゴボウにも似たような作用があります。近年日本ではテレビでゴボウ茶が取り上げられたこともありブームになっているようですが、台湾旅行時に買い込んでお土産にすると喜ばれるかもしれません。

それではレシピです。簡単です。



芝麻三絲四季豆│サヤインゲンと三色野菜の胡麻和え

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難易度:☆ 調理時間:30分以内
中餐丙級證照」シリーズより、『芝麻三絲四季豆│サヤインゲンと三色野菜の胡麻和え』のレシピを紹介します。茹でて和えるだけのお手軽料理です。野菜しか使わない素食でもあります。

中餐丙級證照」シリーズはやっと2/3が終わりました。早いとこシリーズを完成させて中薬学テキストや「丙級中餐素食」シリーズに取り掛かりたいと思います。更新ペース上げるかもしれません。

本レシピでメインに使う四季豆│サヤインゲンはインゲンマメの食用の莢のことです。数ある食用豆の中でも、高たんぱく、低脂肪、そして安価、なんとアミノ酸スコアがほぼ100という使える食品です。肉類の不足するアフリカ地域などでは主要な蛋白源として食べられてもいます。

インゲン豆は16世紀末にヨーロッパから中国に伝えられました。そして50年ほど経った1654年(明朝末期)、帰化僧である「隠元隆琦」によって日本に伝えられました。この隠元隆琦は福建省福州の出身で長崎の唐人寺に招聘されて日本にやってくるのですが、この時の船を手配したのがかの鄭成功。20数人の弟子を連れて日本にやってきたとされますが、おそらく明朝末期の混乱を避けての意味もあったのでしょう。半数以上の弟子らが日本に帰化し、その一族は今も日本に住んでいます。もしどこかで違う歯車がかみ合っていれば、インゲン豆は隠元隆琦と共に台湾に伝えられ、彼らの腹を満たしていたかも知れません。

インゲン豆と鄭成功は意外なところで繋がっていたのですね。それではレシピいって見ましょう。


廣式滷鴨翅│広東式カモ手羽先煮込み

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難易度: 調理時間:1時間以内
本格『廣式滷鴨翅│広東式カモ手羽先煮込み』のレシピです。香辛料をたくさん使って本格的に作ってみます。本場と同じ味付けをぜひお楽しみください。

今回は生薬「陳皮(ちんぴ)」にスポットライトを当てて見ましょう。日本でも七味唐辛子に香辛料として加えられたり、ぬか床の風味付けに使われたりすることからおなじみの陳皮。ミカンの皮を乾燥させたものというのは、多くの人がご存知のとおりです。もともとは「橘皮(きっぴ)」と呼ばれていましたが、古いもの即ち陳旧のものがよいとされるので「陳皮」と名付けられました。特に広東省産のものを「廣陳皮」と呼び、最高級品とされます。


冬に我々がコタツで食べるあのミカンが、陳皮の元になる植物ウンシュウミカン Citrus reticulata です。皮を乾燥させるとそのまま陳皮になります。実は生薬「陳皮」は加工方法が日本と台湾で若干異なります。日本ではそのまま乾燥させたものを主に使いますが、中国の一部、また台湾では一度蒸してから乾燥させたものを主に使います。一度蒸したものは真っ黒なので、日本の陳皮しか知らない方が、台湾で陳皮を購入するとびっくりするかもしれません。

またウンシュウミカンの成熟した果皮を乾燥させたものが「陳皮」ですが、未成熟果実の皮を乾燥させたものは「青皮」と呼び使い分けます。陳皮が理気調中、燥湿化痰の薬であるのに対し、青皮は疏肝破気、散結消滞と効能が異なります。含まれる成分はほとんど同じなのですが、特定の成分の比率の違いが薬効の違いになって現れるようです。不思議ですね。

他にもミカン科の生薬には、枳実、仏手、香櫞、黄柏、呉茱萸、山椒、橙皮など様々なものがあります。枳実、仏手、香櫞は科だけでなく属まで陳皮と同じです。ほかにも中華料理でおなじみ「花椒(この料理でも使います)」もミカン科の植物の果皮ですので覚えておきましょう。拡大してよく見てみるとミカンの皮に似ていることが分かります。

それではレシピいってみましょう。カモの手羽先専用の調合ですのでもちろんカモ肉との相性はピッタリですが、それ以外の肉類を煮込んでも美味です。いろいろなものを煮込むのに使ってください。


汽鍋雞│汽鍋鶏

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難易度: 調理時間:2時間
本日は『汽鍋雞│汽鍋鶏』という雲南省の伝統料理を紹介します。専用に作った特殊な鍋を使うので、日本で再現するのはまず不可能ですが…、何とか工夫してやって見ましょう。

そういえば雲南料理を紹介するのははじめてかもしれません。というわけで雲南料理の特徴を説明しておきます。雲南省は中華人民共和国の南端、ベトナムやミャンマーとの国境に位置し、明代までは独立王朝がありました。中華王朝の支配域に組み込まれてからは漢人の流入が本格化し、もともとこの地に住んでいた民族は現在少数民族とされています。雲南省特有の有名な料理といえば今回紹介する『汽鍋雞』や『過橋米線』くらいですが、漢人が伝えた四川料理を少しアレンジしたものがよく食べられます。もともとこの地に居住していた民族はタイ人やベトナム人と共通の祖先を持つものがあり、タイ料理やベトナム料理のような民族料理も盛んに食べられます。

『汽鍋雞』の難易度が☆3つであるのは、特殊な形状の「汽鍋」と呼ばれる鍋を使うためです。日本に数件あるという雲南料理の店では現地から取り寄せて使っていると思いますが、個人がこれを手に入れるのは至難の技。雲南省に直接赴いて現地で購入するか、陶芸を習得して自分で焼くかした方が早いかもしれません(笑)。

汽鍋の原理は口で説明するより写真を見ていただいた方が早いでしょう。






上記写真のように鍋の中央部に小さな穴が開いています。






上の図は汽鍋で加熱しているときの断面図です。寸胴鍋でお湯を沸かして上に汽鍋を載せます。A部分で発生した蒸気が、鍋の穴Bから、蓋をした鍋全体に行き渡り、食材を上下から加熱します。蒸し器の原理に似ていますが、蓋をした鍋の中に蒸気を導引するのがこの調理器具の特徴です。蓋を開ける直前まで温度がほとんど下がりません。蒸し器のように蒸気を逃さず蓋の内側に熱を閉じ込めて調理します。面白い調理器具ですね。

どんな環境の下でもほぼ一定の温度で調理でき、原理上調理温度は約85度、ダシをとるには最高の温度です。素材の風味をほとんど逃さずに調理することが可能で、香辛料や生薬を煮出すのにも最適です。汽鍋を使った薬膳料理も数多く存在します。

台北でも食べられますので、美食の次なるステージを目指す方はぜひ一度食べてみましょう。以下のお店で食べられます。

滇味廚房 過橋米線‧汽鍋雞
 台北市信義区永吉路30巷178弄2号
 02-2938-4788

日本で汽鍋を手に入れるのはまず無理でしょうが、レシピでは急須や小型の土鍋で再現しています。

醬爆雞丁│中華風鶏肉の醤油炒め

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難易度:☆ 調理時間:30分以内
シンプルに鶏肉だけで作る『醬爆雞丁│中華風鶏肉の醤油炒め』のレシピを紹介します。久しぶりの中華料理らしい中華料理かもしれません(笑)。

さて、中国では古くから食用にされてきた「鳥」肉。今でこそニワトリの肉が大部分ですが、大量飼育方法が確立される前はそれはもうありとあらゆる鳥が食用にされてきました。今回は「鳥」という字を詳しく見てみましょう。

「鳥」の字が、鳥類の象形文字であることは皆さんご存知かと思います。この字をよく見ていただきたいのですが、下に四つの点、つまり脚がありますね。小学校ではここまで説明しないので、ご存知の方は少ないかと思いますが…実はこの「鳥」の字は正確には「地面を走る鳥」の象形文字です。なるほど「鶏」は地面を走る鳥ですね。他にも人間が容易に捕獲できる狩りの対象や、生活に密着していた鳥類もこの字を使って表します。

逆に空を飛んでいる鳥の象形文字は「隹」です。小さな隹が「雀」で、他にも隼や雁などに使われています。火であぶって「焦」の字になったり、人の獲物を「奪」ったり、畑を害する鳥を追い払うのに「奮」闘したり…、色々な派生漢字があります。こういった解釈はあくまで後世のものなので何処まで本当かは知りませんがなかなか面白いですね。

この両方を含んでいる字が「鷹」で、「建物の中で、人が、隹に命令して、鳥を捕らえる」の意味を表しています。この漢字ができた当時から鷹匠がいたんですね。他にも鳥にまつわる漢字は非常に多岐にわたります。古代から中華世界では主要な蛋白源としてそれだけ大事だったということでしょう。機会があればどんどん紹介していきますので、お楽しみに。

最後に鳥が天上(正)に飛び去って終「焉」ということで…、レシピいきます!


杞菊貞蓍茶│杞菊貞蓍茶

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難易度: 調理時間:1時間以内
久しぶりの薬膳飲料、その名も『杞菊貞蓍茶│杞菊貞蓍茶』です。「こきくていぎちゃ」と読みましょう。

枸杞」も「女貞子」も「黄蓍」も簡単に当ブログで触れたことがあるので、本日はもう一つの材料「(杭)菊花」について説明したいと思います。

実は菊花は古くは《神農本草經》に記載されている薬物です。キク科イエギク Chyrsanthemum morifolium Ramat. の頭状花序を乾燥させたもので、中国語での植物名は杭白菊といいます。生薬の別名は白菊花、黃菊花、滁菊花、杭菊花など。白菊花と滁菊花は白い花のもの、黃菊花と杭菊花は黄色い花のものを指します。

台湾を訪れる日本人の皆様は旅行中に絶対に“二度”、図案化された菊を目にする機会がありますが、おわかりでしょうか?そう、パスポートの表紙のマークも菊ですね。日本人には非常に馴染みのある植物です。

菊花は中医学では発散風熱薬に分類され、性味は辛、甘、苦、微寒で、帰経は肺、肝とされます。疏風清熱、平肝明目、解毒の効能があります。日本でも刺身のつまとして食用にされることが多いので、解毒の効能を知っている人も多いかもしれません。近代研究によって殺菌作用と血管拡張作用などが明らかになっており、高血圧や心臓病治療などにも応用されています。

細かくは色によって使い分けたりもします。白いものは清熱、明目、平肝の目的でよく使われ、黄色いものは外感風熱によく使われます。もう一つ似た薬に「野菊花」というものもあるのですが、こちらは解毒の作用が比較的強いとされます。野菊花は C. indicum L. という植物を使います。日本でも菊花茶などの名前で普通にお茶として買えます。入手が容易な生薬の一つです。

菊花は補腎の枸杞と組み合わせて腎陰虚による赤目、のぼせ、めまいなどに効果を発揮します。免疫力を高める女貞子と黄蓍を配しているので、放射線療法などの免疫力を低下させる物理治療中に飲んでもよさそうです。また高血圧によるめまいやふらつきなどがあるときにもいいでしょう。

もちろん菊花を単独で煮出してもうっすらと甘いおいしいお茶が出来ます。菊花茶は口内炎や喉のはれなどにも効果がありますので覚えておきましょう。

というわけで本日のレシピです。女貞子の入手が少し難しいかもしれませんが、ご入用の方はメールでご連絡ください。

糖心蛋│中華風半熟卵

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難易度: 調理時間:数日
香辛料を使ったレシピを大公開しております。まだまだありますが、今年の冬は出し惜しみせず生薬・香辛料を使った絶品料理をがんがん紹介していくのでご期待ください。

本日は『糖心蛋│中華風半熟卵』 のレシピを紹介します。

本日も生薬の紹介を。当ブログでも時々目にする香辛料「山奈」について解説したいと思います。

山奈はショウガ科バンウコン Kaempferia galanga L. の根茎を乾燥させたものです。別名を三奈、沙姜、山辣ともいい、中国のレシピ本によってはこちらの名前で記載されていることも多いです。生薬の読み方は「サンナ」で間違いないのですが、日本ではインドからもたらされた時になぜか別の植物と勘違いされてしまい、ショウガ科の別の植物(Hedychium属の植物)にサンナという和名がつけられています。間違えないように注意しましょう。

実は台湾でも日本統治の影響からか Hedychium属の植物を山奈と表記して薬草屋さん(青草行)で売っていることがあります。台湾名を穗花山奈などというので紛らわしく中医学的にも間違いなのですが、店員さんに正しい植物を指摘しても無駄です。諦めましょう(笑)。

この山奈は日本ではあまり使われませんが、中国、東南アジアではとても一般的香辛料でカレーやスープに味付けのために入れられます。ただ複雑なことに例えばインドネシア語で Galangal とよばれる香辛料には、山奈をはじめとする数種類の他のショウガ科の植物がいろいろ含まれます。中国語でも山奈、南姜、(植物の)高良薑をひとまとめにして(香辛料の)高良薑と呼んだりします。面倒くさいですね(笑)。

ショウガに樟脳(学名の由来にもなっています)が混ざったような鮮烈な香りが特徴で、筆者も大好きな香辛料の一つです。日本でも…お寺で使う高級線香などに配合されたりしているようです。甘口男の火鍋にも入ってます。

ショウガ科の薬物らしく、温中化湿、行気止痛の効能があります。Kaempferia もそうですが、 Hedychium も非常に美しい花を咲かせるので、観賞用としてもおすすめです。ショウガのように地下茎で増やせるので、手に入れる機会があったら栽培して見ましょう。

それではレシピです。筆者はレシピを見るだけで涎が出ます(笑)。


藥燉排骨│豚バラの生薬煮込み

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難易度: 調理時間:2時間
夜市や屋台でおなじみ『藥燉排骨│豚バラの生薬煮込み』のレシピを紹介します。食べる前から体に良さそうな香りが立ち込めます。これをおいしそうと感じるか、薬臭いと感じるかは人それぞれです(笑)。

以前も同名の料理を紹介しています。以前のレシピはこちら。本日のコラムには非常に専門的な話題が含まれるので、難しい!と思った方は深く考えずに一気にレシピまで飛んでください。

さて、本日のレシピは少々解説が必要でしょう。日本でもそうですが、台湾や中国では名前をそのまま伝えただけでは買えない生薬がいくつかあります。いったいどういうことでしょうか?

まず材料1にある「牛膝」という生薬を見てみましょう。もちろんこの名前のまま生薬辞典などには載っていると思いますが、その基原植物を見るとヒユ科の懷牛膝 Achyranthes bidentata Bl. と川牛Cyathula officinalis Kuan の根の二種類(またはそれ以上)が記載されています。まったく別の植物がそれぞれ同じ名前の生薬として指定されているのです。懷膝と川膝などとも呼び分けます。基本的にどちらも同じ効能を持つのですが、懷牛脈は補肝腎強筋骨の効能が強く、川牛膝は活血祛瘀の効能に長けているとされます。中医学では使い分けるので注意が必要です。さらにディープな話をすると懷牛膝の野生品や A. longifolia Mak 、A. aspera L. は 清熱利咽、活血通淋の効能が比較的強いとされ、中医師によればこれらも使い分けます。もちろん薬膳で使うくらいなら気にして使い分けることはありませんが、いろいろな植物をまとめて牛膝というということは覚えておきましょう。また「膝」の字を書くのが面倒くさいので音の似ている「夕」や「七」で代用したりもします。異名というか表記が様々なのも牛膝の特徴です。台湾や中国で購入する時は懷牛膝と川牛膝の少なくともどちらかを指定する必要があるので覚えておきましょう。ちなみに日本の薬局方ではA. bidentataA. fauriei Leveillé et Vaniot の二種類が、韓国の薬局方では A. bidentataA. japonica Nakai の二種類が指定されています。A. bidentata 以外の基原植物が国によって違うのも問題を複雑にしています。

今回のレシピでは懷牛膝 Achyranthes bidentata Bl. を使ってください。日本でなら普通に「ゴシツください」といえば買えます。

そしてもう一つ「芍薬」です。こちらもこの名前のまま生薬辞典などには記載されていますが、芍薬は植物ではなくその加工方法によって名前が変わります。ご存知「立てば芍薬、座れば牡丹」のあのシャクヤクの根を乾燥させたものですが、外皮をつけたものを「赤芍」、外皮を除いたものを「白芍」と呼び分けます。赤芍は栽培品も野生品も含まれますが、白芍は栽培品のみという特徴もあります。赤芍は清熱涼血の効能が強く、白芍は補血、止血の効能が強いとされています。日本の薬局方では元になる植物は Paeonia lactiflora Pallas だけ指定されていますが、台湾や中国では他のボタン属の植物のものも結構出回っています。薬剤師や薬学生の方は牡丹皮との違いも復習しておきましょう(笑)。

今回のレシピでは赤芍、白芍どちらを使ってもかまいません。

鬚人参や炙黄蓍の説明もしたいところですが…、またの機会にしておきましょう。

問題は実際に生薬を目にしたときに…どうやって見分けるの?ということですが…。もちろん普通の人はまず無理でしょう。しかし世の中には自分を含めて好きモノが多数いまして、自分の研究している分野の生薬なら見ただけで植物の種類…だけでなく、生育年数(!)、産地(!)、そしてちょっと口に入れれば成分の含有量までほぼ正確に当てることができるようになるのです。筆者の大学時代の研究室にはそういう人間ばかりが揃っていました(笑)。生薬のソムリエみたいなものですね。といわけで、生薬や香辛料の購入は専門家に任せてしまうのが一番です。そういう人は質問すると喜んで答えてくれますので、わからないことはどんどん訪ねてみましょう。筆者もそういう人間の一人なので、分からないことがあればいつでもメールください(笑)。

というわけで、本日は冬場の台湾で絶対に食べたい軽食の一つ『藥燉排骨』の本格レシピです。正直ここまで本格的な生薬を配合して作る『藥燉排骨』は台湾でも少ないと思いますが…。生薬の勉強をしながらぜひ日本でも作ってみてください。


滷牛健│牛スジ煮込み

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難易度:☆(材料入手による)  調理時間:2時間
冬到来ということで特殊な香辛料を組み合わせ煮込み料理を紹介しましょう。『滷牛健│牛スジ煮込み』と名前は単純ですが、香辛料の組み合わせはなかなか面白いものとなっています。

今回のレシピでは「青皮」、「木香」というちょっと珍しい生薬を使います。 簡単に見てみましょう。

「青皮」とはいわゆるポンカンなどの未成熟果実の皮を乾燥させたもので、同じくミカン科の果皮である陳皮や橘皮の仲間の生薬です。精油成分を豊富に含み清冽な香りが特徴です。通常は十字に切れ込みを入れて皮を剥き乾燥させているので、「四花青皮」とも呼ばれます。ほぼ陳皮と同じ疏肝破気、散結消滞という効能を持ちますがその作用は強く、特に消化不良、気鬱などに用いられます。青皮を配合している有名な処方は青皮以外にもいろいろな香辛料が使われていることが多く、そのままスープにして飲むとおいしそうなものばかりです(笑)。

青皮、山楂、神曲、麥芽、草果を組み合わせた「青皮丸」という処方があるのですが、砂糖を加えてそのままお菓子として食べられそうなおいしそうな組み合わせです。涎が出そうな組み合わせですね。

「木香」には実は「雲木香」と「川木香」の二種類がありまして、それぞれ元の植物が違います。日本の生薬で木香といった場合は「雲木香」のことですが、実はこの雲木香 Saussurea costus または S. lappa はワシントン条約で国際取引が全面禁止されています。とても貴重な生薬なのです。雲南省あたりで産出するのでこの名前があります。川木香 Vladimiria souliei は四川省あたりで産出するのでこの名前があります。こちらは特に取引を規制されていはいません。

雲木香も川木香も、どちらも行気止痛の効能を持ちますが、雲木香は更に健脾消食、止瀉などの効能を持ちます。薬として使う場合は普通は雲木香を使います。料理で使うなら、手に入れやすく安価な川木香で十分です。

香辛料を一つずつ味わった経験がないと全体の香りや味を想像するのは難しいかと思いますが、一つ香りを嗅いだだけで胃腸が蠕動を開始し涎があふれ出すような本能を拳骨で叩く鮮烈な香りが特徴です。

味わってみたい方は…メールでご相談ください。香辛料のセット格安で送ります。


東山鴨頭│東山鴨頭

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難易度: 調理時間:2時間
ついにこの料理を紹介するときがやってきました。今回は『東山鴨頭│東山鴨頭』のレシピを紹介します。アヒルの頭を香辛料スープで煮込んで揚げて乾燥させてを繰り返して作る珍味です。

いわゆるゲテモノ台湾料理に分類される料理なのですが…、かなり美味いんです。台北市では饒河街夜市などで食べられます。

もともとは1960年台に台南市東山区で生まれた料理で、現在も発祥のお店が残っています。不思議なことに東山区ではアヒルの養殖は行われておらず、地域の名産を使ったわけでもない料理がそのおいしさから有名になってしまいました。

そしていつもの通りというか…、台湾発祥の料理ではよくあることというか…、わが店こそが創始店だという訴訟がやっぱり起きていまして、未だに決着は付いていません(笑)。その製作過程からもともとは『滷味』の屋台やお店が作っていたことは容易に推察されますが、東山鴨頭の名称を最初に使ったのがどの店で、その店の開業を支援した師匠の店がどこで、その店が参考にした別店舗のメニューがあって…、いつものぐだぐだの争いが展開されています。「東山」というのが地名というのもはっきりとした商標を主張できないポイントとなっているようです。「青森リンゴ」みたいなものですね。

さて台湾の創始店に関する訴訟には実はもう一つ典型的な例があります。創始店も創始者も明らかであるが、その店の二代目三代目が配偶者と「離婚」した場合の商標の帰属問題です。台湾では家族経営の飲食店が多いのも理由の一つです。経営や仕込みのノウハウは後代の社長もその配偶者も同じように持っており、しかも結婚してからの共有財産は基本的に折半。二代目三代目が持っていた商標権やその子供らの親権も裁判で争われ、結果同じルーツを持つ創始店が二つ(家族がバラバラになった場合それ以上)の「元祖」が登場するわけです。特に有名店ではゴシップ記事になってしまうので、離婚の原因が明らかになったりすると本来の血統を継いでいる二代目三代目の店よりも、その元奥さんのお店の方が儲かったりする例も一つや二つではありません。また創始者に子供が数人おり、創始者が突然死亡したりする場合も、たいてい訴訟合戦に発展します。すぐ隣にまったく同じような味の同じような店がある場合は…、大体はそういうことです。台湾の飲食店はこういった闇の部分(?)を大なり小なり抱えています。宜蘭の有名スイーツ店とか台南の有名滷味店とか、例はいくらでもあります。社会学や心理学のレポートでこういう例を題材にしても面白いかもしれませんね。

さて、『東山鴨頭』は台湾では普通夜食や間食として食べられます。調理方法はちょっと複雑で、まず香辛料のスープにした処理したアヒルの頭を浸けておき、味が染みたら油で揚げて、油を切ったら再び香辛料スープで煮込み、取り出して乾燥させたものを、直前に加熱して食べます。材料は安いのですが手間がかかっているためそれほど安くない価格で提供されます。通常はアヒルの頭以外にも首、腸、舌、水かき、ぼんじりなどの部位を使っても作ります。夜市や屋台で見かけることがあったらぜひ購入してみましょう。

食べるのに勇気がいる台湾料理の一つですが、機会があればぜひ一度挑戦してみてください。慣れると病み付きになります。


燒酒雞│焼酒鶏

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難易度: 調理時間:1時間以内
冬の風物詩鍋料理!本日は台湾風の『燒酒雞│焼酒鶏』のレシピを紹介します。色々な香辛料を混ぜた酒ベースのスープで鶏肉を煮込んで作ります。体が芯から温まります。

薬膳や生薬に詳しい方は材料を見てもらうと分かると思いますが、手足の冷えや血虚に効果のある薬剤がずらりと並んでいます。冬に手足が冷えるという方はぜひご賞味ください。

さてこの焼酒鶏、台湾では非常にポピュラーな薬膳料理なのですが、毎年のように同じような問題が発生します。そう、飲酒運転です(笑)。『燒酒雞』のスープの大部分がお酒をベースに作られているため、加熱不足で少量残ったアルコール分が飲酒と同じ効果を与えてしまうのです。

通常は弱火で長時間加熱してアルコールを飛ばしているのですが、煩雑期は作った端から注文が入り、アルコールが完全に飛んでいない状態でお客さんの元に提供されることもしばしば。逆にそうでないと焼酒鶏じゃないという意見もあるのですが、このため毎年のようにお酒を飲んでいないのに飲酒検問に引っかかっては罰金を取られるという事件が発生します。日本なら「即」規制が入るのでしょうが、台湾のおおらかな警察・司法制度はなかなかすぐに改善とは行かないようです。

このレシピで珍しいのは「橄欖」という生薬を使っていること。カンランという植物の実をを乾燥させた中薬材なのですが、「橄欖」という漢字は西洋のオリーブの訳語として使われることもあるので注意が必要です。西洋料理のレシピで「橄欖」が出てきたらオリーブの意味ですが、今回のレシピのようにその他の香辛料と一緒に使われる場合は、生薬「橄欖」の意味なので間違えないようにしましょう。カンランとオリーブの実は見た目が良く似ているのですが、まったく別の植物です。生薬「橄欖」には清熱解毒、利咽消腫の効能があります。

久しぶりに材料を集めるのが大変な料理を紹介しますが、その分寒い冬を乗り越える薬膳効果は抜群、しかもとてもおいしいのでぜひ挑戦してみましょう。材料は全て日本の漢方薬局で手に入りますが、購入と調合が面倒くさい方は甘口男までメールください。材料は日本で買うよりも安く手に入ります。

★甘口男では提携企業の協力で正規輸出をすることが可能になりました。珍しい生薬やハーブを台湾から直接輸入して、日本国内で販売することが可能です。もちろん生薬・ハーブ以外の電子製品やその他の台湾製品も正規手続きで輸出が可能です。興味がある方はぜひご相談ください。



紅油燃麵│紅油つけ麺

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難易度:☆ 調理時間:30分以内
本日はお手軽麺料理『紅油燃麵│紅油つけ麺』のレシピを紹介します。四川風の『紅油』を使い、ぴりりとした辛味が特徴のつけ麺風料理です。

前回花椒の麻味とRA1触覚器官についてコラムを書きましたが…、なんとGoogleで「RA1神経」を検索すると、体性感覚を解説した記事の真下に当ブログの『川味涼麵│四川風冷やし中華』の記事が来ることが分かりました(笑)。(前回記事ではRA1神経などと書いていますが原文では「Tactile RA1」となっているので今回は「RA1触覚器官」と訳します。)

学術目的でRA1触覚器官を調べる方がひょんなことから記事を読むかもしれないので、あまり適当なことは書けません…。というわけで今回は花椒と味覚について少し込み入った話をしたいと思います。科学が苦手な方は…、レシピまで一気に飛んでおいしさだけを味わってください(笑)。

花椒の成分がRA1触覚器官を刺激することがわかったのはごく最近2013年の8月のこと。RA1触覚器官は与える振動数によって刺激の感覚が異なりますが、花椒の成分はRA1触覚器官がもっとも強く刺激を感じる50-100Hzの振動数と同じような刺激を与えることが分かりました。花椒の有効成分はα-sanshool、β-sanshoolやα-sanshoamidなどで、これらに共通する R1-CO-NH-R2 の酸アミド構造が刺激に関与するということも明らかになっています。(成分の名前から分かるように日本の山椒にも同じ成分が含まれています)。CO基から供給される電子により窒素原子周りの電子濃度が高くなっており、これがRA1触覚神経に強く刺激を与える原因だそうです。また花椒の成分はR1部分にも二重結合を持っており、そこからも電子が供給されて電子濃度が更に高くなっています。窒素原子周りの電子濃度の高さがあの強烈な麻味を引き起こすのです。(原文:Hagura et al., Food vibrations: Asian spice sets lips trembling, Proc. R. Soc. B: Biol. Sci., 280 (1770) (2013), p. 20131680 http://dx.doi.org/10.1098/rspb.2013.1680)

この研究により感覚の最小単位を探求したり、慢性の痺れや麻痺を治療する医薬品を探索する研究の道が開けました。また「旨味」に加えて新しい味覚が定義される可能性もあります。とくに従来の鎮痛剤や麻酔が効きにくい慢性や麻痺性の疼痛の治療の糸口が見つかったのは大きな前進です。今後この分野の研究が進むと、いずれ新しいアプローチで痛みを改善する医薬品が生まれるかもしれません。

『紅油燃麵』は台北の某有名小籠包のレストランでも食べられます。麺さえ茹でてあれば1分もかからずに作れますので、ぜひ挑戦してみてください。それではレシピです。


川味涼麵│四川風冷やし中華

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難易度:☆ 調理時間:30分以内
本日は季節はずれの涼麺『川味涼麵│四川風冷やし中華』のレシピを紹介します。四川風というだけあって、麻辣な味がポイントです。

さて、本日は味覚についてお話しましょう。人間の舌には味蕾という感覚器官が分布しており、舌先で甘味、下の左右両端で酸味を感じたりとこの辺は皆さんもご存知かと思います。ほかの味も大雑把に説明すると、苦味やうまみは下の根元、塩味は下の真ん中辺りで感じるようになっています。

ところが舌には辛味と麻味を感じる味蕾が存在しません。では辛味や麻味はいったい何処で感じているのでしょうか?辛味は痛覚と温感を感じる神経を刺激しているというのはご存知の方も多いかと思いますが、ではあのピリピリした麻味は何を刺激しているのでしょうか?

答えを言ってしまうと、麻味が刺激しているのはRA1神経繊維という“振動を伝える神経”で、あのぴりぴりした感覚は要は振動麻痺と同じような刺激を脳に与えているのです。麻味と神経線維の研究は食物科学の最先端でもあり、特定の分子構造がこのRA1神経を刺激することも分かっています。痛覚を遮断する麻酔とは異なるシステムで麻痺を起こすため、医学的応用も見据えて研究が進められているようです。

というわけで麻味の秘密に簡単に迫って見ました。もっとディープな話題がほしい方はメール下さい(笑)。


韮菜盒│ニラ焼饅頭

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難易度: 調理時間:1時間以内
本日は『韮菜盒│ニラ焼饅頭』という台湾伝統のパン料理を紹介します。『胡椒餅』に似た豚肉ベースの餡をサクサクパリパリの生地で包んだ焼料理です。

ニラはご存知ネギの仲間、ネギ科の植物で日本でも古代から食用とされてきました。なんと古事記にも登場する由緒正しい野菜です。漢字では「韮」と書きますが、草冠のない「韭」でも同じニラを意味します。なんとも不思議な漢字ですね。日本語では古くは「ミラ」と呼ばれていましたが、なぜか「ニラ」に転化して現在に到ります。

本草書《本草綱目》にも登場し、古代中国では鼻血を止める薬として利用されていました。実は房宮術(詳しくは各自お調べください(笑))の方面でも非常に有名な薬として知られ、「壮陽薬」として用いられます。別名を「草鍾乳」とも呼ばれますが、名前から効能が分かりますか?まぁ…、もう一つ「自然のバイアグラ」の別名を聞けば、どんな効果かはお分かりいただけると思います。

また月経中にニラを煮込んだスープを飲むと、生理痛が軽減したり、溜まっている悪い血を取り除いたりする効能もあります。どうやら血流に関与する成分が豊富に含まれているようですね。

また近代研究によるとニラの種には精子減少に効果があることが分かっており、男性不妊の治療に使われたりもしています。野菜としての利用は言わずもがな、色々な方面(?)で有効活用されているようです。

というわけで今日は食べると元気になる台湾料理『韮菜盒│ニラ焼饅頭』のレシピです。



豬腳煨麵│中華豚足うどん

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難易度: 調理時間:半日
本日は『豬腳煨麵』という料理のレシピを紹介します。いわゆる中華風の鍋焼きうどんで、今回は豚足を使って作って見ましょう。

「煨麵」と淮揚料理(じゅんよう…ではなく、「わいよう」と読みます)で使われる麺の形式で、高温のスープで麺を煮込んで作る料理の形式を指します。厳密にはラーメンの麺を使って作るのでうどんではないのですが、太目の麺を使うことが多く見た目はまったくうどんにしか見えないものもあるので料理名は「うどん」にしています。

さて、このBlogでは口を酸っぱくして何度も何度も指摘していますが、改めて書いておきましょう。「淮(わい)」と「准(じゅん)」は違う漢字です!そもそも意味からしてまったく違うのですが、中華料理のプロやいわゆる中国通の方でも、そして本場中国人でもこの二つの漢字を間違ってしまう人が非常に多いのには驚きます。ちなみに「淮揚菜(料理)」は中国“四大”菜系の一つです。

これだけ由緒ある名前なのに日本語のGoogleで検索してみると…
 淮揚菜 - 138,000件
 准揚菜 - 352,000件
と圧倒的に間違った表記のものが多くヒットします。間違った表記の圧倒的多数は中国語のサイトなのですが、本場中国の検索エンジン百度では…
 淮扬菜 - 5,660,000件
 准扬菜 -   184,000件
と結果が逆転します。台湾のYahoo!奇摩では…
 淮揚菜 - 74,500件
 准揚菜 - 41,400件
 と二つの中間くらい。

検索エンジンのアルゴリズムにもよるでしょうが、日本と台湾では相当な数の人が表記を間違えていることが分かります。中国ではあまり間違っていないように感じますが、日本の正しい表記の総数以上に、間違った表記が存在しているのにも注目です。中国の正しい記事のほとんどがコピペであることを考えるとやっぱり相当数の間違いがあるということでしょう。ヘタするとオンラインの「国語辞典」ですら「淮」と「准」を平気で間違えているので、このブログの読者の方はしっかりと覚えておきましょう。

前置きが長くなりましたが、淮揚菜の名物「煨麵」は中に入れる具により様々に名前を変えて呼ばれます。本日の『豬腳煨麵』を始め、若鶏肉で作った『嫩雞煨麵』や野菜を煮込んだ『什錦煨麵』などもおいしいです。鍋焼きうどんを出汁ではなく、紹興酒と塩で味付けして作ると考えればいいでしょうか。色々な派生レシピを作れるのも魅力ですね。

というわけでレシピです!肌寒くなってきましたが、体を温めて風邪に負けない元気な体を作りましょう。



銀絲卷│銀糸巻

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難易度: 調理時間:1時間以内
中華パン『銀絲卷│銀糸巻』のレシピを紹介します。中には糸状に切った生地が詰められており、ふっくらもっさりとした食感を楽しめます。

『銀絲卷』はもともと中国北部、北京や天津の伝統料理です。近代に入って北京料理のレストランが各地に広がるのと共に、中国各地に伝播しました。今では台湾のコンビニの肉まんコーナーなどでも買えます。名前の由来はもちろんその形状から。

北京や天津ではリアカーなどの荷台でも売られています。筆者も天津で食べた記憶がありますが、とてもお腹が膨れるので慣れてない人は何か飲み物を用意してから食べた方がいいでしょう(笑)。

ちなみにパンと同じで普通は自作するよりスーパーで買ってきて蒸して食べます。台湾のスーパーにもいろんな種類の『銀絲卷』があるので、足を運ぶ機会があれば眺めて見ると面白いと思います。

また蒸したものの他、揚げて作る『炸銀絲卷』もあります。表面だけをパリッときつね色に揚げて作り、サクサクもっちりの食感は砂糖や練乳をまぶして食べるといいデザートになるでしょう。

日本人には少し味気ないかもしれませんが、中国の農民らの生活を食べて味わえるそんな料理です。台湾では食べやすいように少し小ぶりなものが売られています。お菓子やパン作りが趣味の方はぜひ一度挑戦してみて下さい。


紅油抄手│四川ワンタン

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難易度:☆ 調理時間:一瞬
本日は台湾の軽食店でおなじみの四川料理『紅油抄手│四川ワンタン』のレシピを紹介します。ゆでたワンタンに辛味ソースを絡めて食べる料理で、四川省重慶の名物料理です。

同じ料理でも地方によって形が微妙に違うのは台湾でも中国でも日本でも同じです。中国では各土地ごとに様々な形のワンタンがあるのですが、簡単に見てみましょう。ちなみにワンタンはすべて四角い皮で作ります。

まずは日本語の「ワンタン」の名称の由来にもなった広東省の『雲呑、具が多いのが特徴です。同じ福建省でも潮州辺りではワンタンを『』と呼び、皮に魚のすり身を練りこんだ『魚皮餃』と呼ばれるものがものが有名です。広東省のお隣福建省と台湾ではワンタンは『扁食』と呼ばれ、台湾の花蓮地方の『花蓮扁食』は台湾ファンにはおなじみでしょう。同じく福建省沙県では『扁肉』と呼び、通常のワンタンより肉が少なく皮を食べるのが特徴。福建省の福州では『扁肉燕』という『太平燕』の類似料理もあります。北部北京やその周辺では『餛飩│馄饨』と書き、広東風と福建風のどちらのワンタンもこの名前で呼ぶようです。今回紹介する『抄手』は四川風の表記でもちろん辛い味付けが特徴。その他の国では日本の「ワンタン」を始め、韓国の「훈툰(餛飩)、완당(雲呑)」、インドネシアの「Pangsit(扁食)」、ベトナムの「Hoành Thánh(雲呑)」などがあります。各地で『餃子』と名称の交雑が起こっていることがあるので、土地によっては『扁食』と書いて餃子を意味したり、『』と書いてワンタンを意味したりと結構複雑です。これはもうその土地その土地で行って覚えるしかないですね(笑)。更にそれぞれの地方の方言で発音したりするので、その名称は更に複雑です。

ワンタンの起原は華北地方といわれていますが、その歴史は華夏時代(なんと伝説の時代!!)にまで遡るといわれています。当初は「餅」の一種として中に肉餡を包んだものを「飩」、スープに入れたものを『湯餅』と呼んでいました。現在でもスープで食べるワンタンが一般的ですが、揚げたもの、蒸したものなど『餃子』と同じくレパートリーは様々です。

本日紹介するのは四川風のワンタンですが、最後に台湾の三大ワンタンを紹介して起きましょう。
台北の「温州大餛飩」、花蓮の「玉里餛飩」、屏東の「里港郷餛飩」です。全部食べたことがある人は台湾ワンタンマスターを名乗ってもいいでしょう!


鹹冬瓜豆醬蒸魚│ティラピアの冬瓜漬けと白醤油蒸し

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難易度: 調理時間:1時間以内
本日は「中餐丙級證照」シリーズから『鹹冬瓜豆醬蒸魚│ティラピアの冬瓜漬けと白醤油蒸し』のレシピを紹介します。前回、前々回と自作した『中華白醤油』と『トウガンの漬物』を使って作る料理です。

前回、前々回と材料から自作しているので難易度を☆二つにしていますが、材料さえ揃っていれば作るのはとても簡単です。手を抜くなら普通の白醤油とおでんの具のダイコンなどを使って作るといいでしょう。

材料として使うティラピアは日本ではイズミダイやチカダイといった名前で市場で買えると思いますが、高級感を出すためにタイの名前を借りているだけでタイとはまったく関係がありません。ティラピアは1954年にアフリカや中近東から第二次世界大戦後の食糧難を解決するために導入された外来魚で、海水でも淡水でも飼育でき、雑食で美味であることから高級感を出すためにタイの名前を付けられてしまったのです(笑)。当初はナイルティラピア、カワスズメ、ジルティラピアの三種が日本に導入され、当時はすべて Tilapia属の魚だったためティラピアと呼ばれました。現在は分類が変わりジルティラピア以外は Oreochromis属になってしまいました。もっとも食用とされたのはナイルティラピアなのですが、いまさらティラピアと呼ぶのは逆に可哀想な気もしますね…。いわゆる標準和名と学名に差異がある例です。一時期タイの代用品として大量に養殖されましたが、タイの養殖方法が確立するとあっという間に姿を消しました。今ではほとんど見かけることはありません。手に入らなかったら逆にタイで代用してください。

台湾では1946年にシンガポールからカワスズメが導入され、最初に導入した呉振輝と郭啓彰の姓を取って「呉郭魚」と呼ばれています。当時は日本の領土ですが本土よりも導入が早かったのです。現在でも大量に養殖が行われており多くのレストランで食べられます。福建省の沿岸部でも呉郭魚と呼ぶことがあります。

中国に導入されたのは1970年代、湖北省でナイルティラピアの養殖が始まりました。アフリカ(非洲)のナイル(尼羅)から導入されたということで中国語では「羅非魚」と呼びます。台湾とは名称が異なるので注意です。現代では華南地方で大規模養殖が行われており、多くの近代中華料理で使われるようになりました。が!同時に生態系を破壊して一部の在来種が駆逐されてしまうという事態も引き起こしました。生命力が強く攻撃的な魚なので野生化したものの駆逐はかなり難しいようです。

とてもおいしい魚なのですが、色々考えさせられてしまいますね。せめておいしく調理してやるのが情けというものです!それではレシピ行ってみましょう。


黨蔘黃蓍燒鴨│党参黄蓍焼鴨

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難易度:☆ 調理時間:2時間
久しぶりの薬膳料理を!『黨蔘黃蓍燒鴨│党参黄蓍焼鴨』という党参と黄蓍の二大補薬で作る補気の薬膳です。

党参も黄蓍もどちらも非常に使いやすい補薬です。今回は党参について簡単に見てみましょう。

党参の基原植物は Codonopsis pilosula (Franch.) Nannf. といい、古くは人参の代用品として用いられました。始載は《本經逢原》というちょっと珍しい本草書で、人参の説明の後半に山西省に産出する「上黨人參」として登場します。その記載は“產山西太行山者、名上黨人參、雖無甘溫峻補之功、卻有甘平清肺之力、亦不似沙參之性寒專泄肺氣也。”と、わずか一行に過ぎませんが、党参の性質を良く表しています。即ち“甘温峻補の効能はないが、甘平清肺の力がある”というわけです。補中益気の他に後代に入り生津養血の効能も見つかりました。現代では強い免疫機能の増強作用があることも分かっており、様々な免疫疾患にも応用されます。

黄蓍についてはあちこちで紹介しているので今回は詳しくは書きませんが、補気升陽、益衝固表などの効能があります。黄蓍にも党参にも消化機能の増強改善効果があります。また黄蓍も党参もどちらも甘の薬味で、黄蓍は微温、党参は平の薬性ですので、、消化の比較的難しい鴨肉(涼性)を煮込んで食べるにはちょうどいいというわけです。

スープ自体はモヤシを煮込んだようなマメ科(黄蓍)の香ばしさがあり、そしてシソ科(党参)のうっすらさわやかな香りがします。薬用効果も高いですが、とてもおいしい薬膳料理です。

鹹冬瓜│トウガンの漬物

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難易度: 調理時間:数日+熟成
本日は中華風のお漬物、『鹹冬瓜│トウガンの漬物』を作って見ましょう。前回の『黄豆醤』で味を付けるのがポイントです。なければ日本の白醤油で作りましょう。

トウガンは学名を Benincasa hispida といいます。日本では平安時代の古くから食べられています。夏に収穫される野菜ですが、きちんと保存すれば冬まで食べられるということから「冬瓜」と名付けられたと言います。

その成分のほとんどが水分(96%以上が水分です)で味も特にありません。中華料理では通常スープの味をしみこませて味を付けてから食べます。《本草綱目》にも白瓜として記載されている由緒ある食材です。種は冬瓜子などと呼ばれ、古代より清熱利水、解暑熱、消熱痰、止咳嗽の薬としても用いられました。現代ではダイエットにも用いられます。また古くは果実の皮をロバの打撲や骨折の薬として用いた記録も残っています。炎症を抑える作用などもあるようですね。

無味で水分を多く含むこと、またきちんと保存すれば一年中食べられることから、台湾(福建)料理や広東料理では古くからスープ料理に大活躍してきました。おいしいスープさえ作ってしまえば、トウガンを入れて煮込むだけで手軽に食物繊維が取れるのが嬉しいですね!野菜嫌いの子供にも自信を持ってお勧めできる食材です。

3ヶ月と根気の要る漬物ですが、中華料理ファンなら梅干の瓶の横にひとつくらいはこういう漬物を漬けておいてもいいかもしれません。


黃豆醬│中華白醤油

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難易度:☆ 調理時間:30分以内+熟成
本日は調味料『黃豆醬│中華白醤油』を自作してみましょう。家庭で作る醤油…と聞けば難しそうですが、調味料の比率さえ間違えなければほとんど失敗しません。

たまには調味料を自作してみましょう、ということで今回は台湾料理でよく使われる『黃豆醬』、日本ではいわゆる「白醤油」といわれる調味料を作ってみます。日本の白醤油は大豆をほとんど使わず、麦をメインで作りますが、台湾では逆に麦を使わず(ほぼ)大豆だけで作ります。客家語で『蔭醬』、台湾語で『豆揪啊』などとも呼ばれます。

醤油やナンプラーなどの発酵調味料は東アジアのいたるところに残されており、郷愁を呼び覚ます故郷の味となっています。特に日本の「醤油」はその種類の多さと強烈な旨みが特徴で、世界中で「ショーユ」として親しまれていますが、中国の大豆を発酵させた液体調味料も負けてはいません。膨大な国土と各地の気候に合わせた数多くの調味料が存在し、中華料理の味付けに活躍しています。「豆豉」などの固形発酵食品があるのも特徴です。

今回自作する『黃豆醬』は台湾の漢族と客家で作り方が異なります。とはいえ基本的な作り方はどちらも同じですので、それほど気にすることはないでしょう。ぜひ自宅で作り置いて様々な中華料理に応用してみてください。日本人には客家風の白醤油の方が好みかもしれません。

それでは、ガラス瓶を用意してレシピ行ってみましょう!



蛋黃酥│台湾饅頭

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難易度: 調理時間:2時間
台湾伝統のお菓子『蛋黃酥│台湾饅頭』のレシピを紹介します。塩漬けの卵を餡と記事で包んで作るお饅頭のような料理で、サクサクの皮、ふわふわで甘い餡、薄い塩味の卵黄と様々な風味が楽しめます。

台湾で『月餅』をベースに発明された正真正銘の台湾料理ですが、そこかしこに日本の饅頭の製法が見え隠れするのは筆者だけでしょうか(笑)?たまには洋菓子、和菓子以外のお菓子作りも楽しいものです。

レシピでは以前紹介した『鹹蛋』の卵黄部分だけを使います。事前に必要量を作っておきましょう。作り方はこちら

この『蛋黃酥』はもともと中華圏で流通していたこぶし大の『月餅』では大きすぎて女性が子供が食べにくいということで開発されました。1980年代初頭に台中豊原地区のお店で緑豆餡を使って作られたものが最初とされていましたが…台湾ではよくある話、「うちこそが元祖だ!」と名乗りを上げたお店と裁判になり、結局1978年に台中の寶泉食品が開発したものが最初の『蛋黃酥』ということになりました。近年開発された台湾生まれの料理を紹介するたびにこういう記事を書いてる気もしますが、気のせいでしょう(笑)。近年は新しい料理を開発するたびに新聞がすぐに取材に来るので、その新聞の日付が裁判の証拠になったりもします。台湾で「○○発祥の店」を見つけたら壁に貼ってある新聞の日付にも注意してみましょう。

さて昨今の台湾で吹き荒れる食の安全問題の火付け役となったのが、ご存知「ラードに廃油を混ぜていた」問題。この『蛋黃酥』も生地にラードを使うので消費者心理を受けて現在ほとんど流通していません。(それで自作のレシピを書いています。)台中は他にも『太陽餅』や『月餅』生産のメッカでもありますが、消費量がひどくおちこみ一時期全国のスーパーで大量の太陽餅が格安で売られていました。まさに経済学ですね…。

日本の製造業は何かにつけて安心安全を謳いますが、実は現在の台湾は日本以上に安心安全を謳った商品が氾濫しています。こういうときに自分で材料から選んで料理を作れると安心です。安全が不透明な食材が食材が日本にも大量に輸入されていますが、自分の身は自分で守れるように世界中のニュースや食の問題には注目しておきましょう。


蔥燒豆腐│ネギ餡かけ豆腐

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難易度:☆ 調理時間:30分以内
本日は『蔥燒豆腐│ネギ餡かけ豆腐』のレシピを紹介します。醤油ベースの餡を焼いた豆腐にかけて食べる家庭料理です。

料理名にも入っている「蔥│ネギ」は、和食だけでなく中華料理でもおなじみの食材です。日本や中国の生薬学や薬用植物学では今でも古い新エングラー体系を使うのでユリ科ですが、最新のAPG IIIではネギ科です。生薬に関しては古い標本や論文が膨大かつ連続的に蓄積されているので、分類方法を変えると各地で混乱が起きるのでしょう。普通の薬学部の学生が習う生薬や薬用植物もこの新エングラー体系に沿って分類されています。

それでは…今回は植物の分類体系について簡単に触れておきましょう。植物の分類体系には現在「新エングラー体系」、「クロンキスト体系」、「APG分類体系」の三つの体系が存在します。

最も古いのは新エングラー体系(Modified Engler System)で、1887年からエングラーという人によって考案されました。雄しべと雌しべが一本ずつという最も簡単な形状から複雑になる方向に進化したという仮定に基づいて植物を分類する手法で、植物の形態や生活史などともよく一致するのでつい最近までこの分類体系が用いられていました。通常我々が目にする図鑑や高校までの生物学の教科書ではこの新エングラー体系が用いられます。目レベルまでならそれほど数も多くないので、植物学を学ぶ人はラテン語も含めて全部暗記するのが習わしです(笑)。

続いてクロンキスト体系(Cronquist system)、1980年代に登場したストロビロイド説というのを根拠にした学説です。要はヒマワリの種のように、「軸を中心にらせん状に配置された雄しべ、雌しべ、花被などが元となり、そこからあらゆる植物が進化した」とする説です。例に挙げたヒマワリの属するキク科植物を最も進化した植物として考えます。幾何学的、数学的に美しく植物の進化を説明できるため爆発的に普及しました。80年代から90年代にかけての植物学の論文や専門誌では、このクロンキスト体系での植物の進化の過程を説明するものがたくさんあります。筆者が大学生だった90年代後半にも、教授らが自らの論文で新エングラーとクロンキストのどちらを採用するか悩んでおりました。特に有用植物として数の多いマメ科やユリ科の植物は科名がガラリと変わってしまうものが多く、学生も旧来の書き方をするか、流行に乗るか…どちらを採用するか悩んでいたようです。大体は教授の鶴の一声で決まりましたが(笑)。

そして一世を風靡したクロンキスト体系を押しのける形で登場した最新の分類体系がAPG(Angiosperm Phylogeny Group)分類体系です。こちらは植物学者で作る団体が推進する最新の分類体系で、過去二回大きな改訂があり現在はAPG IIIが最新です。それまでの植物の外観を元にした分類とは一線を画した、ゲノム、つまりDNA分析による分類手法が最大の特徴です。登場したのは1998年で、発表当時は多くの植物のゲノム分析が終了していなかったため「未分類」として棚に上げられていた植物が数多くありました。その後2003年のAPG II、2009年のAPG IIIでほぼ全ての被子植物の大まかな分類が確定し、現在はこれを補完する作業が進んでいます。DNA分析によって、今まで双子葉植物と考えられていたものが実は単子葉植物だったことが分かったり、クロンキスト体系でバラバラに分けられたマメ科植物が再び一つにまとめられたりと、大幅な分類の変更(そして確定)が行われました。ゲノム分析は日進月歩で進歩を遂げているため、今後も数々の新しい発見があることでしょう。ついでに目や科が大きく変更になったものもあるため、学名や標準和名が大きく変更されたものもあります。

新エングラー、クロンキスト、APGで科や目が大きく変わったのがわかりやすいのはバラ目あたりでしょうか。詳しくは説明しませんので、興味のある方は調べてみてください。植物好きならこの混乱を楽しみましょう(笑)。

それでは、本日はユリ科だと思ったら、ネギ科だったというネギの風味たっぷりの『蔥燒豆腐│ネギ餡かけ豆腐』のレシピです。難しいことを考えなくても…作れます!


宮保麵腸│宮保素モツ

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難易度:☆ 調理時間:30分以内
本日は前回の『麵腸』を使った『宮保麵腸│素宮保大腸』のレシピを紹介します。食感はまさに本物のモツ、ソースが染みているので眼を閉じて食べると本物と区別できないほどの料理です。

記事は後日更新します。

麵腸の作り方はこちら

麵腸│小麦モツ

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難易度: 調理時間:下準備+1時間以内
本日はちょっと気分を変えて台湾素食材料『麵腸│小麦モツ』を作ってみましょう。小麦グルテンで作る小腸を模した食感の料理で、モツを使ったあらゆる料理に代用品として使えます。

最近「実は菜食主義なんです」というメールをいただきました。これはこの方のためにいいレシピを書かねば!と思い立った次第です。これが作れると『素四神湯』や『素宮保大腸』、或いは『モツ鍋』など様々な料理が楽しめますしね。

さて小麦グルテンとは小麦から抽出したタンパク成分で、水溶性のデンプンや成分を除いた部分のこと。いわゆる『』の原料です。様々な加工がなされては肉の代用品として世界中の菜食主義者らに盛んに食べられています。

実は開発者…というか世界中にこれを広めたのは日本人、マイクロビオティックという健康法の創始者である桜沢如一氏によるものです。台湾では宗教的理由から世界的にも菜食主義者が多い地域で、「素肉」と呼ばれる菜食主義者のためのグルテンを使った偽肉料理が発達しています。

マクロビオティックが世界中に広まる過程で、台湾の素食料理も注目されるようになりました。一部ではどちらも取り入れた新しい健康法などが生まれているようです。ビジネスチャンスかも知れません。

というわけで、今回の料理『麵腸』はモツの代用品として使われる台湾素食の材料です。小麦グルテンから簡単に作れますので菜食主義者も(もちろんそうでない方も)ぜひお試しください。明日はこれを使った『宮保大腸』の予定です。


 
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