中薬学テキスト ‐ 第二章 清熱薬

第二章 清熱薬

清熱薬は清解裏熱を主要な作用とする薬物です。《素問》にある“熱者寒之”、また《神農本草経》の“療熱以寒薬”などの記載を原則とし、薬性は寒、涼で清熱瀉火、燥湿、涼血、解毒、清虚熱などの効能を通して、病を治療するのを目的とします。またほとんどの薬物が苦味を持ちます。このカテゴリーに属する薬物は主に外感の熱病、高熱煩渇、湿熱瀉痢、温毒発斑、癰腫瘡毒、陰虚発熱などの表邪を解き、裏熱熾盛、積滞などの裏熱証に用います。

気血虚実の様々な裏熱証に用いるため、また薬物の効能が多岐にわたるため、清熱薬は清熱瀉火薬、清熱燥湿薬、清熱解毒薬、清熱涼血薬、清虚熱薬の五つに大別されます。清熱瀉火薬は、邪熱を排気させる効能を主とし、主に温熱病で高熱煩渇、汗があり脈:洪大などの気の実熱証に用います。清熱燥湿薬は燥湿の熱を解く働きを主とし、下痢、黄疸などの湿熱証に用います。清熱解毒薬は清熱瀉火薬の中でも特に解毒作用に優れた薬物で、癰腫瘡瘍、丹毒、扁桃腺、喉の腫れ、痛みなど熱毒が旺盛な病証に用います。清熱涼血薬は血中の熱邪を除く効能を主とし、吐血、下血、出血、あざなど血の実熱証に用います。清虚熱薬は虚熱を冷ます作用を主とし、陰虚による発熱や骨蒸労熱、温邪傷陰、夜熱早涼などの虚熱証に用います。またこれらの分類に清肝明目薬を加えて六分類にすることもあります。

清熱薬を応用するには熱が気、血どちらにあるのか、また実熱なのか虚熱なのか、病状は局部なのか全身なのかなどを正しく見極める必要があります。また熱証による病は他の症状を併発することが多く、ほとんどの場合は清熱薬に別の薬を配合して用いることになります。例えば熱証で表邪もある場合は、まず表邪を除いてから裏熱を治療するか、清熱薬に解表薬を配合して用います。また裏熱が積滞しているものには瀉下薬と配合して用います。

清熱薬の性は寒涼で、脾や胃を容易に傷つけて気の運化に影響します。脾、胃の気虚があるものや、食の細い人、便秘のある人などには慎重に使いましょう。また味は苦で、こちらも容易に津液を消耗させ乾燥を引き起こします。陰虚で津液不足の人にも慎重に使いましょう。時に潤津の作用を持つ薬物もあります。また陰が強く陽に勝る場合、例えば真寒仮熱の証などに投与すると反って病状を悪化させます。慎重に弁証を行いみだりに投与するのは控えましょう。

このカテゴリーに属する薬物の多くには一定の共通する薬理作用があります。例えば抗病原微生物作用、抗腫瘍作用、抗炎症作用、免疫機能増強作用などで、臨床上重要な薬物が少なくありません。植物薬だけでなく、一部鉱物薬を含みます。数は多いですがよく使う薬物が多いので、丸暗記するつもりで覚えましょう。

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