難易度:☆ 調理時間:30分以内
宜蘭は蘭陽地方の夜市で作られた台湾生まれの伝統料理『蘭陽卜肉│蘭陽豚天』のレシピを紹介します。サックリした生地で調味料に漬けた豚肉を揚げて作るてんぷら料理です。
台湾東部、宜蘭から蘇澳(この辺り一帯の平原を蘭陽平原と呼びます)辺りに行くと、出店や夜市で『卜肉(Bu3 rou4)』の字を見ることができます。台湾でもほとんどこの地域でしか食べられない伝統料理で、休日はこの料理を求めてやってきた観光客らが列を作ることも。今でこそ台湾人の誰もが知る有名な料理となりましたが、その開発には涙ながらに語れない物語があったようです。
この料理が生まれたのは今から80年ほど前。初代社長吳秀は羅東(宜蘭の南部)の地に小料理屋を構えました。日本統治時代のこの地域は非常に貧しく、気軽にお酒を飲めるのはこの地に赴任してきている日本人ばかり。お店の経営は日本人客頼りになってしまいます。
吳秀の長男は南洋戦線で戦死し、店内には息子の遺影が飾られていました。それからしばらくしてこの店をある日本人料理人が客として訪れました。彼は店内に飾られている遺影を見つけ、「日本帝国のために戦死した台湾人」の話を聞きました。料理人は痛く感激し、自身のもつ日本料理の技法を店主に教えることにしました。
そして日本料理、特にてんぷらの技法を学んだ吳秀は当時の台湾でも安く手に入った豚肉を使ったてんぷらを開発しました。当時台湾では揚げ肉を「爆肉」と表記していましたが、新メニューは台湾語で「爆肉」を意味する『卜肉』と名付けられそのまま現在に伝わっています。
日本統治時代が終わってからは、当時の日本料理店で食べた『てんぷら』を懐かしむ台湾人がこの店に押し寄せて大忙しに。吳秀は友人らを雇って人員不足を解消し商売を続けました。
現在四代目の黃師民氏が経営する本家『卜肉』店は、先代黃淮德の時代に多くのメディアに特集され、忙しさはうなぎのぼりに。先代の時代にメニューを整理し、『卜肉』一本で経営していくことに決めました。また先代は『卜肉』の改良にも取り組みました。もともとさいの目に切った豚肉を揚げて作っていましたが、食感を増すため細長く切った豚肉を使うように改良したのも先代です。
多くの料理人が『卜肉』の技術を学ぶため経営者に交渉を行ってきましたが、黃師民氏は常にこれを断っています。非常に保守的な日本式教育を受けた初代の教えを守り、「家族だけで一店舗を経営するべし」という家訓を守り続けるためということです。いわゆるコカコーラ式の経営です。
さすがに人気店を80年近く続けると、味も外見もほとんど見分けが付かないくらいの模倣料理を同じ名前で提供する店が出てきました。料理名も調理法を示しただけなので商標として登録することも出来ず、現在宜蘭地域には多くの『卜肉』店が林立しています。まぁ、こればっかりは仕方ないですね。
[材料1]
豚肉 ……… 200g
ニンニク ……… 2個
エシャロット ……… 5個
[材料2]
中力粉 ……… 80g
片栗粉 ……… 40g
重曹 ……… 小さじ1/2
ラード ……… 大さじ1
水 ……… 80cc
[調味料1]
胡椒 ……… 少々
固形ブイヨン ……… 小さじ1/2
醤油 ……… 大さじ1
酒 ……… 大さじ1
砂糖 ……… 小さじ1
水 ……… 30cc
[作り方]
1.豚肉を1cmの厚さに薄切りにし、包丁の背で叩いて繊維をほぐす。これを5cm×1cmの長さの細切りにする。
2.ニンニクをみじん切りにし、調味料1と混ぜ合わせてつけ汁を作る。作り方1の豚肉をつけ汁に入れ、よく混ぜ合わせてから冷蔵庫で30分浸けておく。
3.材料2を混ぜ合わせて衣を作り、10分ほど放置して軽く発酵させておく。
4.鍋に揚げ物油を入れて160度に熱し、作り方2の肉に作り方3の衣を付けたものを入れて2分ほど衣がきつね色になるまで揚げる。揚がったら油を切って器に盛りつけたら完成。
Point!
好みで醤油やケチャップをつけて食べます。そのままでも塩気が効いて美味です。
もともと和食のてんぷらの技法を使ったものなので、日本人が和食の技で作った方がおいしく作れるかも知れません。生地に氷を入れておくなど、技を使って作ってみましょう。
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