難易度:☆ 調理時間:2時間
炊飯器で作るお手軽『東坡肉│トンポーロウ』のレシピを紹介します。材料を入れてスイッチを入れるだけ!とっても簡単に絶品『東坡肉│トンポーロウ』が食べられてしまいます!
『トンポーロウ』は宋代の文豪である蘇軾によって考案された料理です。今回は彼の半生を追いかけてみましょう。
蘇軾は1037年四川省の眉山で生まれました。中国芸術史上まれに見る"全能"の芸術家といわれ、書、詩、絵画、散文など多くの分野で優れた、というよりは当代最高の作品を数多く残しました。唐宋代を通じて優れた散文家を集めた「唐宋八大家」の一人とされます。彼の残した文章は後代の科挙にも数多く採用され、当時の科挙挑戦者らには「蘇文熟、喫羊肉。蘇文生、吃菜羹。(蘇軾の文に習熟すれば(官位を得て)羊肉が食べられる、そうでないなら(まずしいまま)野菜スープを飲むことになる)」という風に表現されました。
もともと大臣の家系に生まれ、父の蘇洵(「唐宋八大家」の一人)と弟の蘇轍(「唐宋八大家」の一人)も優れた芸術家として名を残しており、父と弟を含めて「三蘇」とも呼び称えられます。蘇軾はもともと非常に奔放な性格で、官位を得るまではあちこち遊びまわっては友人らと新しい料理の開発に挑戦したり、山に篭って茶を嗜んだりと仙人のような生活をしていたそうです。
1057年に20歳の若さで科挙に合格してからは、黄河の氾濫を治めたり、地方の裁判長を務めたりしながら創作に励みました。当時の大臣王安石(彼もまた「唐宋八大家」の一人です)により制度を大きく変革する法律が提案され、これが宋の国内で一大論争を巻き起こすのですが、蘇軾はこれに反対、同じく反対派の同僚らと湖州に出奔します。そして湖州で政敵の姦計に嵌り逮捕、投獄、死刑宣告されてしまうのです。
蘇軾の作品を高く評価していた当時の皇后や著名な芸術家仲間らの嘆願により、死刑を免れ黄州に流されました。黄州は豚肉の産地で、名物の豚肉を使って蘇軾が創作した料理は『紅焼肉』と呼ばれて人々に愛されたそうです。その後皇帝が変わり王安石は失脚、反対派の蘇軾も中央に戻され、この時杭州の知事などにつきました。
『トンポーロウ』が生まれたのはこの時とされます。蘇軾が自宅近くを歩いている時に(おそらく蘇軾つきの)料理人が豚肉を炊いているのを見つけました。過去に料理を研究したこともある蘇軾は"豚肉を煮込むときは弱火で、水は少なめに(『紅焼肉』の作り方)、あと食べるなら酒を用意しろ"と言って料理人に紹興酒を送ったそうです。しかし料理の説明と共に酒を送られた料理人はその酒を調理に使うものだと誤解し、すべて鍋に入れて豚肉と一緒に煮込んでしまいました。それを献上された蘇軾はその味に驚き、新しい『紅焼肉』として非常に愛したということです。芸術家としての蘇軾の号は「東坡」というのですが、この新しい『紅焼肉』は号を取って『東坡肉』と呼ばれるようになり、現在に伝わることとなりました。
さて中央に戻った蘇軾ですが、新法反対派の中にあって"合理的ならば新しい法も一部許容すべき"という意見を述べ、反対派の中でも賛同を得られず、1094年に再び広東省恵州にまで左遷、再び新法派が力をつけた1099年には海南島まで飛ばされてしまいました。
更に皇帝が変わって新旧派の融和が図られてからは中央に戻されましたが、蘇軾はその帰路で病死、1101年のことでした。優れた才能を持ちながら時流に翻弄された蘇軾、若いうちから優れた作品を多く残していますが、後半生はある種の諦めというか悟りのような境地で数多くの"抜けた"作品を残しています。興味のある方は著作の現代語訳を読んでみましょう。
もちろん当日の夕食は『トンポーロウ』で。
[材料]
豚三枚肉塊 ……… 500g
ネギ ……… 30g
ショウガ ……… 20g
[調味料]
醤油 ……… 100cc
紹興酒 ……… 200cc
水 ……… 300cc
砂糖 ……… 大さじ2
[作り方]
1.豚三枚肉塊を沸騰したお湯で数十秒表面の色が変わるまで茹でてアクを抜いておく。ネギをぶつ切りにする。ショウガをうす切りにする。
2.炊飯器の内鍋の底にネギとショウガを敷き詰める。この上に豚三枚肉塊を皮を下にして乗せる。更にすべての調味料を混ぜ合わせたものを加え、内鍋を炊飯器にセットしてスイッチを入れて加熱する。
3.炊き上がったら蓋をあけて豚肉の上下を入れ替え、蓋をして20分蒸す。出来上がったら豚肉を器に載せ、内鍋に溜まったソースをかけて完成。
Point!
最初は必ず皮を下にして炊いてください。油をソースに溶かしてうま味を増すためです。また底にネギとショウガを敷かないと皮が鍋の底にくっつくことがあります。ご注意ください。
紹興酒がない方は普通の料理酒で代用してください。
水と砂糖をコーラで代用すると色が濃い目の『東坡肉│トンポーロウ』が出来ます。こちらも独特の風味がありおいしいのでお試しください。
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