難易度:☆ 調理時間:1時間以内
湖北省黄州の名物料理『東坡餅│東坡パン』のレシピを紹介します。練った小麦粉をごま油で揚げて作るサックリとしたパイ風の料理です。
『東坡餅』は名前からも分かるように北宋の大文人蘇軾(号が蘇東坡)と関係のある料理です。蘇軾に関しては以前紹介しているのでこちらの記事を参考にしてください。
若い頃あちこち遊びまわっていた蘇軾は料理や茶にも造詣が深く、『東坡肉』をはじめとする様々な料理を開発しました。今回紹介する『東坡餅』が黄州滞在時に茶菓子として開発した料理の一つです。
黄州に左遷された蘇軾は歩いて数百歩という近くにあった安国寺の和尚參寥と茶飲み友達になりました。蘇軾はこの寺を相当気に入ったのか、ほとんど毎日のように入りびたり、数多くの文学作品を著すことになります。
ある日、茶菓子を買いに出かけた蘇軾は黄州の街中にあった「何氏園」という菓子屋でそれまで見たことのない点心を購入します。寺に戻って參寥に「これって何ていうお菓子?」と訪ねると、參寥は「無名!」と答えました。更に蘇軾は「為甚酥(何でこんなにサクサクなの?)」と聞いたのですが、參寥は別の地方から来た蘇軾の言葉を聞き取れなかったのでしょうか、蘇軾の地元ではこのお菓子を『為甚酥』と呼ぶのだと勘違いして、「そう、それ『為甚酥』って言うんだ。」と答えてしまいます。それ以降名前のなかったこの料理はひょんな勘違いから『為甚酥』と名付けられて売られることになるのです。
数日後酒のつまみにこの『為甚酥』を買いに行かせた蘇軾はこんな詩を詠んでいます。
野飲花間百物無 腰間唯繫一葫蘆
已傾潘子錯著水 更覓君家為甚酥
庭の花に囲まれて適当に飲んでいる以外何もなく、腰には一本のダイコンを挿している。
水を飲む代わりにダイコンをかじっている。後は買いに行かせた為甚酥が届くのを待つだけだ。
(のような意味です)
相当のんびりと過ごしていたようですね。
ある日、東国寺の參寥は蘇軾のために自作の『為甚酥』を作ってまで彼を待っていたのですが、たまたまその日は蘇軾が訪ねてこず、一日放置された自作の『為甚酥』はバラバラになり味も悪くなってしまいました。次の日訪ねて来た蘇軾はバラバラになった『為甚酥』を見て"何で手先の器用なおまえが、もうちょっと日持ちする『為甚酥』を作れないんだ!"と憤慨します。參寥も怒って"おまえが来るのが遅すぎるんだ!"と言い争いになり、その日二人は丸一日中『為甚酥』の作り方の議論をしたのだとか。そして二人はそのまま寺に泊り込みで『為甚酥』の作り方を改良することにし、数回の試作をへてついに改良版『為甚酥』が完成しました。
まず生地を棒状に伸ばしてから巻いて円形にすること、こうすることで時間が経ってもバラバラになりません。そしてごま油を使ってあげることできつね色で美しい見た目を保持できること、そして完成した後に砂糖をまぶすことで味も香りも数日保存できることなど、数々の改良が行われました。彼らの改良した新しい『為甚酥』は作者への尊敬を込めて『東坡餅』と呼ばれることになったのです。
その後『東坡餅』は、黄州の名物となり、来客を迎えるときにはなくてはならない料理となりました。当地を訪れることがあればぜひ味わってみてください。スーパーで袋入りのものが買えるはずです。日本で食べたい方は自作しましょう!
[材料]
小麦粉 ……… 500g
水 ……… 250cc
卵白 ……… 1個
重曹 ……… 1g
砂糖 ………220g
塩 ……… 3g
ごま油 ……… 1200g
[作り方]
1.小麦粉、重曹、塩をボウルにふるい入れ、卵白と水を加えてよくかき混ぜる。手にくっつかなくなるまで生地を練ったら3-4本に生地を分け、それぞれ棒状に成形する。
2.棒状に成形した生地をまとめてらせん状にして延ばし、それを中心から巻いて適当な大きさの円形に成形する。これの表面に少量のごま油を塗り、ラップの上などで10分ほど寝かせておく。
3.まな板にごま油を薄く塗り、作り方2の生地を置いて麺棒で薄く延ばす。生地の左右両側から中心に向かって生地を巻いて棒状にし、長さ約3:5の位置で切り分ける。切った棒状の生地をそれぞれ引き伸ばしながら中心かららせん状に巻き、大小二つの円形の生地を作る。大きな生地の中心に小さな生地を押し付けてまとめる。記事が出来たら表面に少量のごま油を塗っておく。
4.鍋にごま油を入れて140度に熱し、作り方3の生地を入れて表面がきつね色になるまで揚げる(→Point参照)。生地が浮き上がってきたら、取り出して油を切り、砂糖をまぶして完成。
Point!
砂糖はこれでもかというくらいたっぷりつけましょう。
ごま油は白ゴマ由来のなるべく透明なものを使うときれいな見た目になります。黒ゴマ油で作ると(食べられますが)真っ黒になるので注意です。
ごま油の温度は気持ち低めで作りましょう。高温にしすぎると苦味が出ます。
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