難易度:☆☆ 調理時間:3時間+下準備
本日は四川省の絶品料理『皮蛋鴨卷│ピータンの鴨皮巻き』のレシピを紹介します。ピータンを調味料に浸した鴨の皮に包むだけ、しかしそのシンプルな見た目からは想像もつかないほどの手間と深い深い味わいのある絶品料理です。
難しい調理行程はなく時間だけがかかります。鶏の皮でも作れますので日本でも手間さえかければ再現が可能です。
台湾でもホテルなどに入っている四川料理のレストランで食べられます。機会があればぜひ食べてみていただきたい一品です。
さて、台湾人の間でまことしやかにささやかれている迷信の一つに「鴨肉には毒がある」というものがあります。特に中医学をかじったり、中医の診療所を受診したりした人たちに広く言われています。実際には鴨肉には毒素など一つもありませんが、今回はこの謎を追ってみましょう。
最も古く鴨肉に毒があると記載した中国の書物は宋代に書かれた《大觀本草》というものですが、この書物の以降数百年にわたり他に鴨肉に毒があると記載した書物はありません。ずっと時代は下って明代に書かれた《本草綱目》には「鴨肉:甘、冷、微毒」と記載されています。が、同時代に書かれたその他の本草書にはまったく「有毒」の記載がありません。ないどころか補益の食物として推奨されています。
この時代は毒といっても、少量を食べただけで昏倒するような強力なものは数えるほどしか知られておらず、鴨肉の毒とはいえ毎日食べれば健康を害するほどの意味だとは思いますが、それにしても有毒と記載された書物が少なすぎます。
いったい何を根拠に台湾人は「鴨肉は有毒」と信じているのでしょうか?
まず、中医学…どちらかといえば薬膳の観点から見れば、古代中国で多くの人が農耕にいそしみ、現代ほど生活が豊かでない時代、彼ら古代中国人は今に比べてはるかに虚弱でした。鴨の性味は甘、冷なので、体が虚弱な人が食べると体の働きを更に弱めてしまいます。宋代は中国医学でも特に温補学と呼ばれる学説が唱えられていた時期で、こうした背景も関係しているのではないかと考えられます。
《本草綱目》の注脚にも、「發冷利、腳氣不可食(寒性の下痢、及び脚気の患者は食べてはいけない)」と書かれており、鴨肉の微毒の由来がその冷性にあることが分かります。鴨肉の脂肪分が鶏肉などの家禽と比べて分解しにくい(またはし易い?)のが原因の一つなのかもしれませんね。
台湾は中国の他の地域と比べても湿気が多く、蒸し暑い気候です。また現在の社会制度上、多くの人々が社会ストレスにさらされ、体の中に熱を貯めては寝苦しい夜を過ごしています。そういう人には鴨肉はベストチョイスです。(ただし酒やショウガと一緒に調理する『薑母鴨』は体を温める作用が強いので注意!)
体質に合っているからこそ、食べ過ぎに注意を喚起するために「鴨肉には毒がある」と単純なフレーズで注意を喚起するのも、あながち間違いとは言い切れません。まぁ、妄信による弊害の方が大きいとは思いますが、そのうち改善してくれることを祈って…。
それではレシピいって見ましょう!
[材料]
鴨皮 ……… 一匹分
ピータン ……… 5個
ショウガ ……… 25g
ネギ ……… 25g
[調味料1]
五香粉 ……… 大さじ1
塩 ………小さじ1/2
味の素 ……… 小さじ1/2
砂糖 ……… 小さじ1
醤油 ……… 小さじ1
酒 ……… 大さじ3
胡椒 ……… 少々
[調味料2]
砂糖 ………… 大さじ1
酢 ……… 大さじ3
ごま油 ……… 大さじ1
[下準備]
1.ショウガとネギはみじん切りにする。鴨皮を良く洗い、皮の両面にショウガ、ネギ、調味料1の五香粉、塩、味の素、砂糖、醤油、酒、胡椒混ぜ合わせたものを良く刷り込む。タッパーなどに入れて蓋をし、冷蔵庫で3-5日ほど漬けておく。
[作り方]
1.下準備した鴨皮を取り出し、調味料を良く落としてからまな板の上に敷いたラップに皮表を下にして広げる。
2.殻を剥いたピータンを縦に半分に切り、作り方1の鴨皮の上に並べる。海苔巻きのように鴨の皮でピータンを包むように巻き、きつく押さえて敷いておいたラップで包んでおく(→Point参照)。
3.ピータンを包んだ鴨皮をラップをしたまま蒸し器に40分ほどかけて火を通す。火が通ったら取り出してラップを外し、熱いうちに表面に調味料2の砂糖と酢を混ぜ合わせたものを塗る(→Point参照)。これを扇風機の前などにおき、表面を軽く乾かしながら冷ます。
4.作り方3で蒸したものの荒熱が取れたら220度に熱したオーブンで8分加熱し、表面がきつね色になったら取り出して冷ます。
5.可能な限り薄く切り、皿に盛りつける。ごま油を散らすか添えるかして完成。
Point!
海苔巻きのようにまっすぐには巻けないので、ラップを使ってまいた後手で押さえて皮とピータンを密着させます。
砂糖と酢を混ぜたものは、正確には麦芽糖と浙江酢で作り、「脆皮水」と呼びます。刷毛などを使うと火を通した皮がほぐれずにきれいに塗れます。
場所によってはピータンの黄身部分がなかったり皮だけだったりしますが、高級料理店ではピータンがきれいな半円形で黄身のある部分だけを使います。
可能な限り薄く切りましょう。高級料理店では本当に厚さ1mmほどのものが出てきます。包丁をよく研いで切ってください。
皮だけを食べてもおいしいです。千切りにしてお酒のおつまみにしましょう。
豚皮だけで同じように調理するとまた一風変わった絶品料理が出来ます。こちらもお試しください。
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