難易度:☆☆☆ 調理時間:1時間以内
河南省の伝統料理『胡辣湯│河南風胡椒スープ』のレシピを紹介します。台湾各地で食べられる「羹」の原型になった料理といわれる絶品料理です。
この『胡辣湯』の属する料理体系である河南料理は「豫菜」とも呼ばれ、四大、八大、またはそれ以上に分類される料理の母体料理と言われています。「中華厨祖」とも呼ばれ、す中原のあらゆる料理の基礎になった料理体系とされているのです。
河南地域はまさに中原の中心にあり、中華料理の伝統的な特色のひとつである「中」と「和」の思想を体現しています。東西南北あらゆる料理の特徴を兼ね備えており、中華人民共和国成立後は国宴の席ではこの河南料理を中心として採用する決定が下されました。このことから各省の宴席では河南料理の形式を真似て料理が提供されるようにもなり、近代に入ってからも中華各地のあらゆる料理に影響を与え続けているのです。
河南地域では麺と米の両方を主食とし、漢、宋、唐の時代には宮廷料理も残されています。また周や商の時代の料理の特徴も残しているとされます。恐ろしく歴史の古い料理体系で中華料理の母体系と呼ばれるのも納得です。
さて、この『胡辣湯』は唐の時代に中国に胡椒が伝来してから割りと早い時期に開発された料理(薬物?)が元になっているとされます。 時代は下がって北宋の時代、開封に都が定められた時期から、中国医学では胡椒やトウガラシなど海外からもたらされた体を温める作用のある薬物が健康に効果があることが分かり、当時の医学の進歩と相まって非常に流行しました。漢方薬の勉強をしたことのある人ならおなじみ《太平恵民和剤局方》という書物には、胡椒やトウガラシを使った体を温める作用のある処方がたくさん記載されています。体の冷えや胃腸の働きの低下が病気を引き起こすことは、この時代から知られていたのですね。ちなみに今から1000年ほど前の話です。
《太平恵民和剤局方》には今で言う漢方薬なのか薬膳料理なのか分類が難しい、おいしそうな処方がいくつも記載されています。例えば今でいう『酸辣湯』のような胡椒と酢を使った処方もあり、胸焼けなどを治すとされています。興味のある人は調べてみましょう。体を温めて病気を治すという概念は一般庶民にも広く知られ、多くの新しい料理が生まれることになりました。
時代は下って明の時代末期、ある官吏が皇帝の歓心を買うため高僧に命じて「延命の薬」を作らせます。この薬を皇帝に献上したところ非常に喜ばれ、薬は「御湯」という名前を賜ることになりました。明朝滅亡後、地方に逃げ延びた宮廷の料理人がこの「御湯」を民衆に広め、その材料から『胡辣湯』と呼ばれるようになります。今では各地域で独自の発展を遂げた『胡辣湯』もあるようですが、味付けは基本的に同じです。
『胡辣湯』の特徴は「聞:鼻をくすぐるスープの香り、看:スープに沈んだ具と表面の酢とごま油のコントラスト、 吃:スープと具の味、品:食べ終わったあと10分以上続く胡椒の辛味」の四つとされます。レシピでは麺を使っていますが、ナンや揚げパンのようなものをつけて食べることもあります。
皇帝が絶賛したという『胡辣湯│河南風胡椒スープ』をぜひ味わってみましょう。台湾ではたぶん食べられません…。手間は掛かりますが特殊な材料は使わないので、作った方が早いです。
[材料]
煮込み牛スジ ……… 80g
小麦粉 ……… 80g
韓国冷麺(→Point参照) ……… 80g
ピーナッツ ……… 20粒
干しキクラゲ ……… 5枚
金針菜 ……… 8個
ネギ ……… 15g
トウガラシ ……… 2本
[調味料]
醤油 ……… 小さじ2
塩 ……… 小さじ1/2
固形ブイヨン ……… 小さじ1/2
胡椒 ……… 大さじ1
ごま油 ……… 小さじ1
酢 ……… 小さじ2
水 ……… 2000cc
[作り方]
1.韓国冷麺、金針菜、干しキクラゲをそれぞれ別々の温水に30分ほど付けて水を吸わせておく。金針菜は3cmの長さに切る。キクラゲは幅2mmの千切りにする。
2.小麦粉を少量の水で練り(→Point参照)、10円玉大にちぎって平たくし30分ほど涼しい場所で寝かせておく。その後ボウルに入れた水500ccに10分ほど浸けておく(→Point参照)。
3.中火で熱した鍋に小さじ2のサラダ油(分量外)をひき、トウガラシとネギを炒めて香りを出したら、牛スジを軽く炒め、水1500ccを加えて沸騰させる。続いてピーナッツを加えて弱火で25分煮込む。
4.作り方2で浸けておいた生地を取り出し、軽く握り絞って半分ほどの大きさにする。絞った水は元のボウルに戻す(→Point参照)。
5.作り方4の小麦粉生地を作り方3の鍋に加え、よくかき混ぜた後、韓国冷麺、金針菜、キクラゲを加えて10分ほど煮込む。
6.作り方5の鍋を強火でぐらぐらと沸騰させ、作り方4で小麦粉生地を取り出した後の水を少しずつ加えながら、鍋をよくかき混ぜる。全て加え終わったら醤油、固形ブイヨン、塩と胡椒を加えて味を整える。さらに3分ほど煮込み、最後に酢とごま油を振りかけて完成。
Point!
本来はサツマイモ澱粉で作った「红薯粉条」という特殊な麺を使います。レシピでは日本では手に入れるのが難しいので、材料と食感が煮ている韓国冷麺を使っています。長すぎる場合は鍋に入れる前にハサミで半分から1/3ほどに切っておきましょう。
小麦粉は餃子の皮くらいの硬さに練ります。九州の団子汁の具のように指先で潰して不均等で扁平な形に指先で潰しておきます。
小麦粉を練ったものを浸けておく水は捨てません。後で調理に使うので捨てないようにしましょう。
小麦粉生地が水を吸いボウルの水量は減少します。生地を絞って水を戻しますが、ボウルに水を足す必要はありません。絞った生地は親指大の大きさになり色は半透明になります。
煮込み牛スジは以前紹介した『牛肉麺』の牛スジ煮込みの方法で作ったものや、おでんの具、スーパーで売られているお惣菜、ご家庭で作った醤油煮込みなどを使ってください。
牛すじ煮込みの味付けにより、スープの塩気がすこし変わります。塩の量は適宜増減してください。また水1500ccの部分は中華スープに変えてもよいでしょう。
金針菜は「ワスレナグサ」の花を乾燥させたもの、手に入らない場合は菊の花や乾燥もやしなどで代用しましょう。
細切れにした豆腐を加えた『豆腐胡辣湯』などもあります。
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