夫妻肺片│牛内臓のおつまみ
本日は奇妙な名前の『夫妻肺片』という料理の紹介です。
漢字では見ての通り「夫婦の肺の切れ端」といった意味で、ちょっと猟奇的な場面を想像してしまうかもしれません。しかし名前と料理に使う材料は余り関係がなく、材料に動物の肺を使っているということでもありません。
では、なぜこのような奇妙な名前なのでしょうか?
この料理は四川省の省都である成都で1936年に発明された料理です。清朝末期の成都では『涼拌廢片』という牛の内臓を使った料理が人力車や苦学生の食事として定着していました。普通の牛肉は高すぎるため、精肉店が廃棄する内臓をもらってきては調理して作ったのが始まりです。もともとの漢字を廃片と書き、要らない場所、捨てるものというような意味です。
1936年に郭朝華と張田政という夫婦(中国は夫婦別姓)が、この「涼拌廢片」を改良し、独特の風味を加えて『夫婦廃片』という料理を作り出します。中の良い夫婦の姿と、テンポの良い会話が楽しめる彼らの店は非常に人気を博し、ついには有名料理店として全国にその名を轟かせるまでになります。廃片ではさすがに見栄えが悪いと多くの人に指摘され、同じ音である肺片と名前を変え現在の『夫婦肺片』が完成します。有名店となった後も、彼らは不断の改良を続け2002年には国家商標管理局から料理名を商標として使用する許可と、中国ホテル協会から”中国名菜”の称号を授与されることになります。
誕生から80年たった今では、台湾においても四川料理の店で楽しめる料理となっております。そのうち日本にも名前を変えて伝わってくるかもしれません。
有名になりすぎてしまったためにパクリ料理が増えるのは仕方ありませんが、現在でも成都では”郭氏伝人夫婦肺片”の名称を使用する時には、(成都においてのみ)オリジナルの店舗から許可と技術の提供を受け、加盟店となければいけないそうです。
あんまり居ないとは思いますが、成都を訪ねることがあれば夫婦肺片の店名にも注意してみてください。オリジナルとそうでないものが一発で分かります。
台湾では四川料理の店で食べることができます。また、同じ四川料理ということもあって麻辣火鍋の店のメニューに載っていることもあります。お酒のお供に最適なので、牛タンが手に入ったら試してみましょう。本場四川では牛の内臓はすべて使うそうですが、今回は牛タンと牛モツのみで作ってみます。
レシピを基に作ってみましょう。
難易度:
☆☆
調理時間:
1時間以内
材料1:
牛タン ……… 200g
牛肉 ……… 200g
ピーナッツ ……… 30g
ネギ ……… 1本
水 ……… 100cc
材料2:
花椒 ……… 5g
八角 ……… 2個
桂皮 ……… 3g
調味料:
ラー油 ……… 30cc
塩 ……… 小さじ1/2
砂糖 ……… 小さじ1/2
花椒粉 ……… 小さじ1/4
ゴマ ……… 少々
味の素 ……… 適量
作り方:
1.水100ccで八角、桂皮、花椒を煮込み50ccまで煮詰める。塩、砂糖、味の素を加え味を整える。キッチンペーパーなどで漉し、花椒粉とラー油を加えてソースを作る。
2.牛肉は薄切りにし沸騰したお湯で3分ほど茹でてアクを抜いておく。牛タンは沸騰したお湯で30分ほど茹でて皮を剥く。どちらも0.5cmほどの厚さに切っておく。
3.器に牛肉と牛タンを並べ、砕いたピーナッツと千切りにしたネギを上に乗せる。
4.作り方1のソースを上にかけ、ゴマを散らして完成。
Point:
冷やしてもおいしく食べられます。
本来は牛ミノ、ハチノス、センマイ、ギャラ、心臓、モツ、レバーなどあらゆる内臓部位を使って作ります。日本では精肉店などで注文しないと全部そろわないので、ここでは牛タンのみ使っています。手に入れば少しずつ牛肉の部分を置き換えて使ってみてください。
日本で通常売られている牛の内臓は下処理を終えているので、特に何もすることはありませんが、ほんばでは各内臓を下処理をするところから詳細なレシピがあります。生石灰に浸けるとかですが、日本で買う場合は下処理がほぼ終わっているのであまり気にする必要はありません。
ちなみに夫婦肺片のオリジナルのお店は今でも営業しています。いまでは郭氏の息子が法人の代表をしているようです。“郭氏传人夫妻废片”总店、地址:中华人民共和国四川省成都市武侯区燃灯寺东街32号、电话:028-85081886。
作り方1で煮詰めるソースを和風のだし汁(濃い目)に代えたりすれば、和風の夫婦肺片が作れると思います。
0 コメント :
コメントを投稿