醉排骨│豚サーロインの甘酢ケチャップソースかけ

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難易度:☆ 調理時間:30分以内
今回は福建省は福州の名物料理『醉排骨│豚サーロインの甘酢ケチャップソースかけ』のレシピを紹介します。今月は福建料理が続いてますが…、なぜだかお分かりでしょうか?

…そうです、筆者がおいしい福建料理の店を見つけたからです(笑)。まぁ、お店自体はかなり前から時々通わせていただいてるのですが、久しぶりに訪れてみるとやっぱり美味い、福建料理って台湾料理の元祖だよなぁ、調べてみるかぁ…の流れで福建料理を紹介したくなってしまいました。

福建料理を知れば知るほど、街に出て「福州」の字を見かけると胸が高鳴り、とりあえず立ち寄っては味見してみるという変な病気が出てしまいました。美味しい店少ないんです。

というわけで筆者も時々かようとても有名な福建料理のお店も文末で紹介しちゃいます。台湾通の方は「なんだあそこか」とにやりとしてください(笑)。ガイドブック巡りやツアーでは絶対に行かない場所なので、個人旅行で時間があれば訪れてみてください。どれもハズレ無しの美味しい料理ばかりです。

3月からは台湾熱炒メニューを網羅してみたいと思っています。お楽しみに!

この料理は清朝没落のドサクサで長らくレシピが失われていたものを、1920年にある老人の口伝により復活させたという貴重なもの。その後様々な改良が加えられて現在のレシピに成っていると言います。




粉糖酥肉│中華甘トンカツ

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難易度:☆ 調理時間:30分以内
さて今回は『粉糖酥肉│中華甘トンカツ』のレシピを紹介です。一枚肉を使わない以外はどこからどう見ても日本のトンカツにしか見えませんが、砂糖をかけて食べるという不思議な料理。福建の閩西料理の一つです。台湾でも食べられます。というか作るのはとても簡単です。

さてここ最近福建料理を多く紹介しているので、改めて福建料理についてまとめておきましょう。今回は福建料理概論です(笑)。

福建省は台湾の西部、中国大陸沿岸部にある省で宋代に福州、建州、泉州、漳州、汀州、などがおかれ八閩とも呼ばれました。現在は廈門市などが有名です。以前も紹介しましたが、台北市には福州街、泉州路、汀州路という道が、台湾とのつながりの深さが伺えます。

福建料理は広義には大きく下の五つに大別できます。
・福州料理(閩北料理)
・閩南料理
・閩西料理
・台湾料理
・海南料理

このうちの台湾料理は当ブログのメインなので説明を省きます。今回は上の三つ、狭義の福建料理を簡単に説明したいと思います。

福州料理(閩北料理)
さらに細かく閩北、閩中、閩東料理に分けることももあります。いわゆる福建料理といえばこれをさします。「紅麹」を使った料理が多いのも特徴的です。海岸線があるくせに生の魚介類をそのままではほとんど使わず、乾物にして濃厚なスープを取るのが不思議なポイントの地域です。

最近紹介した料理では『佛跳牆』、『肉燕』、『太平燕』、『荔枝肉』などがこの地域の料理ですね。

閩南料理
閩南というだけあって台湾料理との共通項が多くある料理です。トウガラシやニンニクを使って味に幅を持たせているのが特徴です。この地域にはとても有名なお寺があり、台湾素食にも通じる精進料理も有名です。というかほとんど台湾料理ですね。

封肉』、『肉粽』、『牛肉麺』など、台湾でもそのままの名前で通用する料理が多いのが特徴です。

閩西料理
いわゆる福建の客家料理で米を加工した料理が特徴です。醤油や塩で辛めに味付けした料理が多く、山菜や漬物を多用します。台湾客家料理とも同じ系統なのですが、台湾では食べられない独自の料理が多くあります。


菜干扣肉』、『仙人粄(仙草ゼリー)』などは台湾のものとほとんど変わりません。

台湾料理を愛して止まない当ブログ読者の皆様にとっては、「台湾料理と福建料理?どこがちがうの?」と似たポイントばかりの料理のように見えますが、広い中華料理の世界を見渡すと台湾と福建省以外で福建料理の流れを汲む料理が普及している地域はほとんどありません。これだけ多様な台湾料理が中国料理のごく一部であるということを痛感させられますね。

上記の特に福州料理が日本の中華料理に与えた影響は計り知れないものがあります。日本人の我々にも馴染み深い料理や、好みの味付けの料理が多いので、これからもちょくちょく紹介していきたいと思います。

しかもなぜか「筷子」ではなく「箸」の漢字を共通して使うという特徴のある福建省。これはファンにならずにはいられません。


熗槽五花肉│豚カルビの香麹ソース和え福建風

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難易度:☆☆ 調理時間:2時間
本日はうっすらと赤い色の付いた美しい『熗槽五花肉│豚カルビの香麹ソース和え福建風』という料理を紹介します。紅麹を更に加工して作る「香麹」という独特の調味料を使います。簡単に出来るのでこの「香麹」から再現してみましょう。

台湾では『紅槽肉│豚肉の紅麹揚げ』や『紅糟排骨│豚ばら肉の紅麹煮込み』など紅麹を使った赤い料理を楽しめ、そのルーツは福建省にあります。福建省の「香槽(香麹)」は紅麹の酸味と酒の香りを消し去り旨味をぎゅっと凝縮した調味料で、特に中国南部でよく使われます。以前紹介した福建料理『福建荔枝肉│豚肉のライチ風ケチャップ和え』などに、この香麹を使うと、普通の家庭で作れる料理の水準を大きく超えたすばらしい味を出せます。ぜひ挑戦してみてください。

料理名にある「熗槽」はこの香麹を使った料理の調理法の一つで、あらかじめ火を通した材料に香麹の香りと味を絡めて作る料理の総称です。他にも『熗槽雞絲』や『熗槽青椒』など様々な派生料理があります。どれも日本でも作れますので、アレンジを効かせて調理してみてください。



姜汁撞奶│広東風ショウガプリン

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難易度:☆ 調理時間:一瞬
本日は『姜汁撞奶│広東風ショウガプリン』のレシピです。たまにはこんな中国の伝統デザートで体を温めまてみるのはいかがでしょうか。以前紹介した『薑汁雙皮燉鮮奶│ショウガ汁のミルク茶碗蒸し』とよく似た広東省の伝統デザートです。

ショウガの字を「薑」に変えたり、『薑埋奶』などと言ったりもします。ゼラチンを使わずに作るプリンで日本でも再現可能です。固まらせる条件がちょっとシビアなので、失敗したら条件を変えて何度か試してみましょう。

ショウガに含まれるショウガプロテアーゼという酵素で牛乳のタンパク質を分解し、再度ゲル化することで固めるプリンです。広東省の伝統デザートで、現地で食べたことのある旅行者も多いことでしょう。台湾でも最近流行り始めました。

この『姜汁撞奶』はもともと水牛の畜産が盛んな広東省沙湾の名物料理で、牛乳ではなく水牛乳を使って作るのがオリジナル。現在でも有名店はわざわざ水牛乳を取り寄せて作っていると言います。伝説によると風邪を引いた老婆がショウガ汁を飲むとき、味を嫌って砂糖と牛乳を加えたら固まってしまったのが始まりといわれています。

普通のプリンのように冷やさず、温かいまま固まる不思議な中華デザート。日本でもぜひお楽しみください。


刴椒魚頭│魚カマのピリ辛蒸し

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難易度:☆ 調理時間:30分以内
前回紹介した『湖南刴椒』を使った湖南料理『刴椒魚頭│魚カマのピリ辛蒸し』のレシピです。とても有名な料理で簡体字で『剁椒鱼头』と表記した方がわかりやすいかもしれません。

見た目が派手で美しいので湖南省では宴会料理として使われます。作ったばかりのまだ発酵させてない『湖南刴椒』でも作れるので、一から作ってもほとんど時間がかかりません。『湖南刴椒』を作るついでに、この料理を作ってしまいましょう。

魚の頭で作るのが基本ですが、白身魚肉なら何を使っても美味しく作れます。家庭でぜひ再現して欲しい、筆者おすすめの中華料理の一つです。

ちなみに漢字「刴」の音読みは「た」、中国語では「Duo4」です。「刴椒」は「たしょう」と読みましょう。



湖南刴椒│湖南トウガラシ調味料

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難易度:☆ 調理時間:数日
今回はちょっと珍しい湖南省の調味料『湖南刴椒』を作ってみましょう。明日はこの調味料を使った魚料理を紹介します。

現地では簡体字で『剁椒』と呼ばれる発酵調味料の一つです。名前の漢字は「ぶつ切りにしたトウガラシ」の意味です。というわけでトウガラシは粗めにみじん切りにしましょう。

韓国のキムチから白菜を抜いたものを想像して下さい(笑)。

トウガラシの旨味を十二分に味わえる調味料です。冷奴にすこし乗せても美味しいですし、肉料理に添えても絶品です。湖南料理を作る上で避けては通れない調味料です。中華料理好きなら常備しておきましょう。


老醋花生│中華風ピーナッツの小菜

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難易度:☆ 調理時間:半日
本日は台湾のレストランでも見かけるる小菜『老醋花生│中華風ピーナッツの小菜』のレシピを紹介します。地域によって微妙に味や名前が異なりますが、日本でも簡単に再現できる中華小菜の一つです。今回のは中国南部風です。

世界のピーナッツのおよそ4割を生産する中国。ほとんどは搾油されて使われますが、もちろんそのまま食用になるピーナッツも相当な量です。ちなみにここ数年世界中で取引される「ピーナッツの原価」、じっくり眺めるといろいろと考えさせられます。参考に貼り付けておきます。

 ピーナッツ取引価格の年平均推移:(単位ドル/トン)

2000年までは結構安定して推移しているのですが、その後の上昇が著しいですね。2009年には相当な数の貿易会社が倒産したんでしょうね…。同時期に大豆や小麦粉も軒並み2-3倍に上昇しているのも空恐ろしい限りです。中国のピーナッツ栽培面積はたしかすこし減っているくらいで、世界の生産量もほとんど変わっていないはずなので、投機のお金が相当流れ込んでいるようです。

いやぁ、バブルですねぇ。

ということで、ここ10年で価格が4倍になった落花生を使った中華料理です。食べるときは難しいことを考えず、ビールなどと一緒に賑やかにお楽しみください(笑)。


広東涼茶│広東薬膳茶

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難易度:☆☆ 調理時間:3時間
本日は広東省の薬膳茶『広東涼茶│広東薬膳茶』を紹介します。当地では暑気あたりや喉の渇きを止めるために飲まれます。

ちょっと珍しい「莫大(胖大海)」という生薬を使っているのが特徴です。莫大はピンポンノキ属ハクジュという植物の実を乾燥させたもので、乾燥させた状態ではアーモンドのような外観をしていますが、水を吸うと3-4倍に膨らみます。その膨らみ方が面白いので日本でも健康茶として出回っているようです。もともと広東省ではお茶に入れて膨らませた果実をデザートに食べる習慣があり、台湾でも少量が出回っています。現在ではインドやマレーシアで採取されているようです。

清熱の効果を持つ生薬がざっと揃っており、氷砂糖で甘味を付けているので漢方薬が苦手な人も飲みやすいと思います。本場広東省ではティーパックに入れられたものや、缶入りの『広東涼茶』が売っているのでとても手軽に飲むことができます。実は台湾でも大型スーパーで売っていたり、潮州粥のお店で飲めたりするので、興味があれば探して見ましょう。

日本で作るの広東出身の華僑の人くらいだと思いますが、薬膳茶に興味がある方は再現してみましょう。興味があればメールいただければ材料送ります。


蟛蜞酱│福建風カニの醤油漬け、福建ケジャン

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難易度:☆☆ 調理時間:一瞬
さて、日本ではまずお目にかかることの出来ない特殊な調味料を作ってみましょう。福建省や台湾にいる「蟛蜞 Peng2 qi2」というカニを使った調味料『蟛蜞酱│福建風カニ調味料、福建ケジャン』のレシピです。

「蟛蜞」は(おそらく)中国での学術名を相手蟹、属名は Chiromantes で、日本では「アカテガニ」と呼ばれる小型の蟹のことで、福建省や広東省、台湾などで食用にされます。甲羅に鋸歯がないことで類似の「ベンケイガニ(中国語で仿相手蟹)」と区別されます。


日本ではほとんど食用にしませんが、アカテガニは中国南部や台湾では高級な食材。広東省では酒に浸けた『醉蟛蜞』という名物料理が、福建省では今回紹介する『蟛蜞酱』という名物料理があり、台湾でも時々食べられます。特に福建省福州では『蟛蜞酱』は結婚式には欠かせないおつまみの一つで、年中需要があると言います。川から田に入り込んでは稲を切ってしまうことがあるので害獣として駆除されるそうですが、そのときに捕まえた「蟛蜞」は農家の人たちのいい小遣い稼ぎになっているようです。台湾でも河口部などで捕まえられます。

レシピではトウガラシ粉を使っていますが、福建省でも南部にいくと醤油と塩だけで浸けて作るそうで、辛さは必須ではありません。韓国の『게장(ケジャン)』と呼ばれるワタリガニを漬け込んだ料理ほど辛くはないので、辛いのが苦手な人も楽しめます。

「アカテガニ」は中国中世の本草書《本草経集注》に「蟛蜞」として記載があり、フグ毒を解毒するなどの効果が書かれています。また『蟛蜞酱』には強力な消炎解毒作用があるとされ、喉や口の炎症にゆっくりと飲み込むととても効果があるということです。風邪を引いたときは試してみましょう。

福建省を訪れることがあれば、ぜひ買って帰ってください。台湾では金門などでも買えます。

最後に一言、「めちゃくちゃうまいです!」


魚皮花生│閩南風ピーナッツ

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難易度:☆ 調理時間:
本日はどこか懐かしい中華南部地域のお菓子『魚皮花生│閩南風ピーナッツ』のレシピを紹介します。今では福建省廈門の伝統菓子として有名なのですが、なんと発祥は日本のお菓子なのです。

もともと1920年代に日本帰りの台湾籍の料理人が福建省廈門で日本のお菓子を真似て作ってみたというのが始まりのようです。なんだか複雑な歴史を持つお菓子ですね(笑)。三国をつなぐ料理と言えます。

「魚皮」と名前にありますが、このレシピで使うのはピーナッツと小麦粉のみで動物性の材料はまったく使いません。もともと日本では皮に鯵の魚皮を少量練りこんで味を付けていたというのが名前の由来のようで、福建のほうでは今でもこの製法で作っているお店もあるようです。台湾では仏菓として使われることもあるので魚皮はいつの間にか使わなくなったのでしょう。写真を見ていただくと分かるかと思いますが、日本の『ピーナッツボール』に似たお菓子です。

福建省で再現されてから現在までほぼ100年、今では中華南部では非常に一般的なお菓子で、市場で売られている『魚皮花生』を見ると自然と少年時代を思い出すという大人も多いようです。普通は市販のものを買って食べますが、自作しても簡単なのでレシピを紹介します。お茶うけにもぴったりです。

生地にチョコレートを練りこめば…バレンタインデーにも使えるかも知れません。甘口男はいつでも淡い恋の味方です。


響鈴肉│福建風鈴音から揚げ

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難易度:☆ 調理時間:30分以内
福建の名菜『響鈴肉│福建風鈴音から揚げ』のレシピを紹介します。竜田揚げのようなサクサクの食感と、肉に包まれた芯にあるカシューナッツの食感が珍しい料理です。

料理名にある「響鈴(簡体字では响鈴)」とは読んで字の如し「鈴の響き」を表し、これは食べたときに芯にある堅果からする微かな音に由来するもの。風に乗って届く鈴の音をイメージしながら優雅に食べましょう(笑)。

レシピでは芯にカシューナッツを使っていますが、お店によりアーモンドやクルミなど別の堅果で作ることもあります。各人で手に入りやすいものを使ってください。

中華料理には湯葉で作った『干炸響鈴肉』というよく似た名前の料理があり紛らわしいのですが、見た目はまったく異なります。こちらもそのうち紹介したいと思います。

それにしても福建・台湾料理はどうしてこう日本人好みの味付けが多いんでしょうかね?日本の家庭で再現すれば家族に驚かれること確実の名品です。

蕃茄切盤│台南風トマトサラダ

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難易度:☆ 調理時間:一瞬
本日は台南発祥のトマト料理『蕃茄切盤』のレシピを紹介します。ソースの作り方にコツがある台湾の伝統料理です。

特に台湾南部ではとてもポピュラーな料理で、南部出身の人がいる家庭ではおやつ代わりに食べられたりもします。台南の果物店では季節にもよりますがほぼ確実に材料が売られています。北部ではあまり見かけませんが夜市などで売られています。北部ではよほどのことがない限り買って食べるより自分で作った方が手軽なので、自作するのが普通です。

調べてみると戦後すぐの時期から台南では食べられていたようで、少なくとも60年以上の歴史がある料理ということが分かりました。台南ではとても有名な料理なのですが、誰がどうやって始めたのかはっきりしたことは分かりません。謎の多い料理です(笑)。

日本では甘草粉が手に入りにくいかもしれませんが、薬局で取り寄せるなどして何とか入手してください。メーカーにもよりますが甘草末の薬価は10gで30.8円です(笑)。調剤薬局に頼めばたぶん500gから買えます。絶対に余ると思いますが『豚肉のしょうが焼き』などにも使えるので、たくさんあっても困ることはないでしょう。喉が痛いときはそのまま水で服用しても効果があります。

という分けで、久しぶりの純粋な台湾料理です。


一品鯧│一品マナガツオ

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難易度:☆ 調理時間:30分以内
台湾料理の故郷福建省から魚料理『一品鯧│一品マナガツオ』を紹介します。台湾でも家庭料理として食べられるマナガツオを使った料理です。

福建料理で「一品」とは見た目が円形の料理を指します。しばらく前に紹介した『一品(虫戈)抱蛎│シマイシガニとカキの中華オムレツ』も一品の名が付いており、切らずに円形に作るのはレシピの通り。

中国語でマナガツオを「鯧」または「鯧魚」と書き、台湾を含む南部地域沿岸では食材として常用されます。台湾の魚市場でも扁平で愛嬌のある形はとても目立ちます。ウロコ(本当はあるのですが細かすぎて見えません)や小骨がなく、形も美しい魚で、家庭料理の食材としても人気があります。

マナガツオとはまったく関係はないのですが、食人淡水魚ピラニアを中国語で「食人鯧」と呼びます。他にもマナガツオと関係のない魚に「鯧」の字がたくさん使われています。体が平たくて中型の魚であれば「鯧」の字を使うようです。

さて、当ブログではおなじみ明代の本草書《本草綱目》にマナガツオの記載があるので抜き出して見ましょう。

鯧魚
(《拾遺》)
[釋名]
魚(《錄異》)、時珍曰:昌、美也、以味名。或云:魚游於水、群魚隨之、食其涎沫、有閩人訛為魚。廣人連骨煮食、呼為。
[集解」
藏器曰:鯧魚生南海。狀如鯽、身正圓。無硬骨。作炙食至。
時珍曰:閩、浙、廣南海中、四五月出之。《嶺表錄異》云:魚形似魚、而腔上突起、連背而圓、身肉甚濃、白如凝脂、只有一脊骨。治之以蔥、薑、之以粳米、其骨亦軟而可食。


[氣味]
甘、平、無毒。
[主治]
令人肥健、益氣力(藏器)。

腹中子
[氣味]
有毒。令人痢下(藏器)。

「魚の群はこれに随い、その涎沫を食す」と考えられていたようですね。なかなか不思議な魚です。

さて、古くから南海地域、福建省や浙江省で炙って食べるなど食用にされていた様で、広東省では骨まで煮て食べていたようですね。当時は単に「昌」とも表記していたらしいのも面白いところです。身が白く緻密であると書かれていることから現在の「銀」などを指していると思われます。

台湾では他の魚に比べて結構高めの値段です。これは形状の美しさを愛で、祝いの席で使うためだと考えられます。特に旧正月はいつもの数倍まで値段が跳ね上がっておりびっくりしました。卸値が牛肉より高かったですから…(笑)。

日本でも普通に手に入る魚で作る中華料理です。ご家庭でもぜひお楽しみください。


油焗红鱘│台湾ガザミの酒蒸し

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難易度:☆☆ 調理時間:30分以内
本日は台湾のカニを使った絶品料理『油焗红鱘│台湾ガザミの酒蒸し』を紹介します。高級料理ですが日本でも再現可能です。活きたカニを使うので怪我をしないよう注意して調理してください。

料理名にある「鱘」という見慣れない漢字、実は中国語で「鱘魚」と書いて「チョウザメ」を指すことの方が多いのですが、中国南部ではガザミ類を指します。地域によって意味の変わる漢字で、特に台湾でこの字を見かけたときはチョウザメなのかカニなのかよく分からないことがあるので注意しましょう。紅鱘はガザミ、鱘魚はチョウザメを指します。また、中国語では面白いことにガザミを「蝤蛙」とも表記し蛙の字も使います。もう何がなんだかわけが分かりませんね(笑)。

台湾ではタイワンガザミという種類を使って調理し、日本の南地域でもこのタイワンガザミの方が市場に多く出回ります。日本北部でなら普通のガザミ(ワタリガニ)を使って作りましょう。ハサミにあるトゲの数が違うだけで味にほとんど差はありません。ちなみに薬膳ではタウリンの豊富なカニ類は脳卒中を予防する食材として使います。

酒と脂を使って蒸し焼きにする独特の調理方法で、とてもよい香りのする料理です。高梁酒と紹興酒の代わりに焼酎と清酒で作っても美味しいものが作れます。ぜひ挑戦してみてください。


碧螺蝦仁│蘇州風エビの茶葉卵とじ

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難易度:☆ 調理時間:30分以内
前回に引き続き台湾でも食べられる蘇州料理『碧螺蝦仁』を紹介します。貝を使った料理…ではなく、茶葉を使います。

茶葉とエビをあわせた料理は中国各地のお茶の産地では結構ポピュラーな料理で、おそらくもっとも有名なのは「龍井茶」という茶葉を使った『龍井蝦仁』という料理でしょうか。今回は蘇州の「碧螺春」という有名な茶葉を使った『碧螺蝦仁』です。中国十台茶葉に数えられる極めて優れたお茶で、もともと蘇州の方言で”吓煞人香(嚇死人香、びっくりした)”という名前のお茶でした。清の康熙帝が南巡時にこのお茶を飲んでとても気に入り、あまりにも俗っぽい名称を「碧螺春」と改め、以後宮廷で使うお茶に抜擢されたという歴史を持ちます。

他の土地の茶葉と違い非常に決めの細かい白い産毛を持ち、お茶を入れるときのお湯の色や茶葉の見た目の変化も味わえます。が、そこは中国、結構な量の偽物が流通しているので気をつけましょう。台湾でも高いですが本物を買えます。

日本の茶葉を使ってももちろん作れます。使う茶葉の名前を「蝦仁」の前に付ければいいだけなので、日本の茶葉で作るなら「宇治蝦仁」や「八女蝦仁」と呼べばいいでしょう。日本語名も「宇治風エビの茶葉卵とじ」みたいにしてください。日本で作る場合は日本の茶葉で作ればよいでしょう。

前回の『松鼠鱖魚』よりははるかに簡単に作れます。ぜひご家庭で挑戦してみてください。
 

松鼠鱖魚│江蘇風ケツギョ揚げ

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難易度:☆☆☆ 調理時間:1時間以内
本日は非常に有名な江蘇料理『松鼠鱖魚│江蘇風ケツギョ揚げ』のレシピを紹介します。日本ではほとんど見かけませんが、中華全土でよく知られた有名な料理です。日本で作る場合はスズキを使って調理しましょう。ケツギョの説明はこちら(Wikipediaに飛びます)。

数ある江蘇料理の中でおそらくもっとも有名な料理である『松鼠鱖魚』、料理名にある「鱖魚(ケツギョ)」とは中国北東部に住むスズキ科の淡水魚で日本ではほとんど流通していません。朝鮮半島では「쏘가리(ッソガリ)」と呼ばれ、高級食材として食べられます。小骨が少なく蛋白で非常に食べやすい魚です。料理名にある「松鼠」とはリスのことですが、料理の形態を表しているだけでリスの肉を使うわけではありません。大きく持ち上がった魚の頭が尻尾を持ち上げたリスの姿を、ソースをかけたときの音がリスの鳴き声を連想させることからこの名が付いています。

言い伝えによると、清の乾隆帝は江南に下ったとき、現在も残る蘇州の有名レストラン「松鶴楼」で『松鼠鯉魚』を食べてその味を大絶賛。その後蘇州の料理人らはケツギョを使ってこの料理を作り、調理方法も絶え間なく改良してきたといいます。現在でも色、香、味、形、音、器の全てに完全なバランスを持った料理として多くの美食家たちに絶賛されています。

3月、雪解けの季節。 渓流に雪解け水が流れはじめ桃の花が咲き誇るときが、この料理の旬とされます。写真を見ていただければわかるように、非常に美しい料理です。

日本海沿岸部なら川に遡上したスズキを手に入れて、是非この料理に挑戦してみてください。とっておきの皿を使って「色、香、味、形、音、器」の全てを楽しめるよう工夫するのもお忘れなく!意外と簡単に作れます。

しかも!台湾でも江蘇料理の店で食べられますよ!


鐵蛋│鉄卵

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難易度:☆☆ 調理時間:半日~数日
久しぶりに正真正銘の台湾料理を紹介します。淡水名物の『鐵蛋』のレシピです。

淡水発祥のこの『鐵蛋』は近代に入ってから生まれた台湾料理。1980年代に淡水の老街に黃張哖氏が経営する滷味の店がありました。雨が降ると客足が遠のき、店に並べた煮卵を何度も鍋に戻しては店先に並べるというのを繰り返さざるを得ませんでした。あるとき長雨が続き、同じ卵を何度も何度も鍋に戻しては扇風機の風に当たる店先に並べるというのを繰り返していたところ、卵がどんどん小さく、美しい光沢を帯びるのを発見したと言います。食べてみると独特の食感で非常に美味、これを売り出したところ大ヒットしました。

1983年に新聞記者が「阿婆鐵蛋、硬是要得」という見出して新聞記事にしたところ、人々の耳目を集め日本のメディアにまで紹介されることに。海外メディアに特集されたということで人気に拍車がかかり、この『鐵蛋』は淡水の名物となります。現在「阿婆鐵蛋」は8歳のときから初代を手伝っていた二代目黃玲紅氏が引き継ぎ、初代の味を守り続けているそうです。

ここから先はよくある話、商標制度に疎かった元祖「阿婆鐵蛋」の名前は別の人に先に登録されてしまい、元祖のお店は「海邊鐵蛋」という商標しか取ることが出来ませんでした。その後元祖のお店はメディアや集会などを通して「阿婆鐵蛋」の不買運動を働きかけますが、時既に遅し。既に一定の知名度を得ていた「阿婆鐵蛋」の商標を駆逐することは出来ず、元祖の店は涙を飲みました。

もちろん「阿婆鐵蛋」側もそれなりの言い分があり、よくある商標紛争は現在も続いています。あまり気にせず食べましょう(笑)。

ちなみに英語では Iron egg とそのままの名前です。別名を台湾チョコレートと言われるほど、深い茶色に光沢のある美しい見かけが食欲をそそります。ぜひ挑戦してみましょう。



一品(虫戈)抱蛎│シマイシガニとカキの中華オムレツ

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難易度:☆ 調理時間:30分以内
昨日に引き続き「虫戈(シマイシガニ)」を使った福建料理を紹介します。シンプルにとても美味いです!日本で作るなら普通のワタリガニを使いましょう。

福建省に限らず、「虫戈」のような方言字は中華料理でよく見かけることができます。これが中華料理の面白さの一つなので、実は台湾にも数多くの方言字を使った料理があります。『オーッデイ』のように基本的に台湾語で発音する料理はほぼこの方言字を使っていると思っていいでしょう。台湾料理で使う字の多くはUnicodeにも登録されているのでコンピューター上の表記が容易なのが救いです(笑)。

この料理、レシピを見ていただければ分かると思いますが、台湾の『蚵仔煎』に非常によく似ています。カニ肉や豚肉、シイタケ、タケノコなど、『蚵仔煎』よりもたくさんの具が賑やかに入っている中華オムレツです。中華スープにとろみをつけてご飯に乗せた『一品(虫戈)抱蛎』の上からかけると…、福建風天津飯というわけの分からない料理が出来ます(笑)。ちなみに料理名に「一品」とあるように、普通は切らずにそのまま皿に乗せて食べます。

とても美味しいですので、ぜひ再現してみてください。

桂花(虫戈)塊│福建風シマイシガニ炒め

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難易度:☆☆ 調理時間:1時間以内
漢字が出ない!とても難しい漢字を使う料理『桂花●(虫戈)塊│福建風シマイシガニ炒め』という福建料理を紹介します。問題は料理名にある字「●(虫戈)」、中国語では一般的に梭子蟹というカニをあらわす福建方言なのですが、Unicodeに登録がないためこのように標記するしかありません。読み方はたぶん日本なら音読みで「が」、中国語でもたぶん「ge1」なのですが、普通話では使わない漢字なので、福建方言で発音するのだと思います。ついに「方言字」まで登場してしまいました…(笑)。

中国のIMEでも表記できないので、インターネットの世界では『桂花虫戈塊』 と表記したりしますが、「虫戈」で一字なので注意しましょう。ちなみにこの字、古くは「虫+截」とも書き、こちらもUnicode未収録です。

日本ではワタリガニの一種のシマイシガニPortunus trituberculatus という名前で流通しています。日本では高級食材ですが台湾では養殖されているので日本よりもはるかに安く手に入ります。旅行時に見かけたら食べてみましょう。

料理名にある桂花とはキンモクセイの花のことで、カニの足に絡んだ溶き卵が、咲き乱れる桂花に見えることから名付けられました。福建の民間で食べられる宴席料理で台湾にもきちんと伝わっています。機会があれば旅行時に食べてみましょう。


銀球干貝│貝柱とダイコンの中華あんかけ

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難易度:☆ 調理時間:1時間以内
本日は見た目も美しい『銀球干貝│貝柱とダイコンの中華あんかけ』という料理のレシピを紹介します。簡単に作れておいしく、しかもとても美しい料理で、もともと福建省泉州の宴席料理です。

高級中華食材として台湾でもおなじみの干し貝柱、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、実は丸ごと筋肉。二枚貝が貝を閉じるために使う筋肉です。普通二枚貝は殻に何の力も加えないと半開きに口が開きます。彼らは口を完全に開くにも閉じるにも力を使う必要があるのです。そのため加熱によって筋力が失われたり、貝柱が殻から剥げたりすると自然と口を開くようになるのはご存知のとおりです。

この貝柱を乾燥させた干し貝柱は新鮮な貝を結構な手間をかけて処理する必要があり、大きなものはグラム数千円もします。まぁ小型のものは数百円から買え、この料理でも小さなものを使うのでそれほど家計を圧迫することはないでしょう(笑)。乾燥させることによって恐ろしいほどの旨味をその身に蓄えた干し貝柱、ダイコンとの相性がばっちりです。とても美しい料理なので、ぜひ一度再現してみてください。


花卷魷魚│中華イカあんかけ

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難易度:☆ 調理時間:30分以内
本日はオーソドックスな家庭料理『花卷魷魚│中華イカあんかけ』を紹介します。中華全域で食べられる料理で、地域によって名前も様々です。日本でも中華料理屋や、ひょっとすると給食でも食べられるほど普及しています。今回は本場中華風に作ってみましょう。

イカは世界中の海で取れ、もちろん台湾近海でもたくさん水揚げされます。世界中で食べられる食材であるにもかかわらず飼育するのは容易ではなく、ノーベル生理学賞受賞者のローレンツ博士(鳥の雛の刷り込みを見つけた人)からも「人工飼育不可能な世界で唯一の動物」とまでいわれていました。一昔前までは…。

イカ、特にヤリイカからは巨大な神経細胞の塊が取れます。脳の研究や最先端のコンピューターの研究に使うために安定した供給体制が必要だったのですが、飼育が不可能というジレンマに世界中に陥っていました。このヤリイカの人工飼育に初めて成功したのは日本人の松本元博士、脳型コンピューターの研究にイカの神経細胞を使用するため、恐ろしい執念でヤリイカの人工飼育法を完成させます。ドーナツ型の水槽を使ったのがポイントです。ちなみに飼育方法は分かったのですが、商業養殖が出来る技術は未だに開発されていません。というわけで世界の全てのイカは未だに天然産です。
 
それではレシピ行って見ましょう!



扒燒四寶開烏蔘│海参の四宝スープあんかけ

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難易度:☆☆☆ 調理時間:3時間
本日は台湾でも超高級料理店でしか食べられない料理『扒燒四寶開烏蔘│海参の四宝スープあんかけ』のレシピを紹介します。ナマコ(海参)を使った超高級料理で、普通の台湾人はお金持ちの結婚式くらいでしか食べられません。

レシピをざっと見ていただけると分かるかと思いますがても複雑な料理です。しかし一つずつ手順を踏んで作れば完全再現とまでは行かないまでも、失敗なく作れると思います。料理に自信があるなら大きなナマコを手に入れて、ぜひ挑戦してみてください。

ナマコは漢字で「海鼠」又は「海参」と書きます。形が高麗人参に似て海にいることから「海参」と書きます。韓国や中国でも「海参」と表記し、古くは高麗人参のように薬用に使われていました。漢方や中医学の世界には同じく「参(參)」の字を持つ生薬がたくさんあり、人参、沙参、玄参、苦参、丹参などが有名です。それぞれまったく別の植物で見た目も効果も別物です。

海参は参類の中で唯一の動物性生薬で、補腎の作用が強く、近年は高蛋白、低脂肪、低コレステロールの健康食材としても注目を浴びています。薬膳料理ではよく使う食材の一つです。この料理では本来海参の中でも上品とされる「烏参」を使って作ります。普通のナマコより一回り大型で、真っ黒、日本では金子(キンコ)と呼ばれています。実は日本産のものが中国に輸出されているのです。「烏参」の乾燥品はおそろしく高級です。日本で手に入れる機会があれば大切に調理しましょう。ちなみい普通のナマコで作っても十分美味しいものが作れます。

この料理の肝はナマコ自体というよりもスープ、中華では珍しいとんこつスープを使って作ります。しかもただのとんこつスープではありません。豚スジ、豚軟骨、豚バラ肉、鶏肉、貝柱などを煮込んで非常に濃厚な旨味を抽出します。九州出身の筆者としてはこれに固ゆでの細麺を絡めて食べたいところです(笑)。

腕に自身がある方はぜひ挑戦していただきたい料理です。美味いですよ!


写真はオイスターソースベースのスープで作ったもの。
レシピ通りに作れば白いソースになります。

四果甜湯│四種の干しフルーツスープ

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難易度:☆☆ 調理時間:30分以内
台湾内省人の故郷の一つ福建省泉州の伝統料理『四果甜湯』のレシピを紹介します。伝統的な中国のデザートです。

泉州の結婚や誕生日などの慶事で最後に出される定番デザートがこの『四果甜湯』です。本物は「冬瓜糖」というちょっと特殊な材料を使うので日本では完全再現が難しいのですが、そこは適当にアレンジしちゃいます。一つ一つの材料に祝福吉利の寓意が込められており、とてもおめでたい料理です。

台湾では豆花などの店で『四果湯』という似た名前のデザートを食べることができますが、こちらは四種類の材料を使ったデザートというだけで泉州の『四果甜湯』とは別物です。名前から同じルーツの料理だと思うのですが、台湾ではずいぶんと思い切ってアレンジされているようです(笑)。

記事では最も一般的な(オリジナルに近い)レシピを紹介していますが、各自で好きな材料を使ってアレンジしてみてください。


珍珠豆腐│珍珠豆腐

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難易度:☆ 調理時間:30分以内
昨日に引き続きちょっと珍しい福建・台湾料理『珍珠豆腐│珍珠豆腐』を紹介します。アイスクリームスクレイパーで豆腐を丸く切り取って海鮮ベースの出汁で煮込むという簡単な料理です。

その気になって探せばいろんなレストランでメニューに載っていたりするのですが、ガイドブックに載っているのを見たことがないので、旅行で台湾を訪れるような日本人はまず口にすることはないというマイナーな料理です。福建省に行けば台湾でよりも有名な料理なんですけどね。

この料理は1924年に福建省出身の詩人林長民が北京のお寺でインドの詩人をもてなしたときの宴席料理が由来になっていると言います。詩人が詩人をもてなしたときの料理だけあって、非常に詩的な美しい外見が特徴です。その後林長民が故郷の福建省でこの料理を広め、台湾には戦後に伝わりました。

豆腐の大きさもお店によってそれぞれで、鶏肉などのほかの具が入ることもありますが、今回のレシピではシンプルに豆腐と貝柱の出汁のみで作っています。 各人でそれぞれアレンジして作ってみましょう。料理の名前そのまま、見た目も美しくてとても美味しい料理です。ぜひ挑戦してみてください。


閩生果│ピーナッツの香辛料和え

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難易度:☆ 調理時間:1時間以内
今回は『閩生果│ピーナッツの香辛料和え』を紹介します。福建省の名物冷菜として非常に有名で、運がよければ台湾でも食べられます。福建、台湾だけでなく、中華地域南部では結構広く食べられる小料理です。

この料理は『閩式花生米』とも呼ばれ、福建省の料理であることを強くアピールしています。

「閩(ビン)」という字は、日本にいる限りほとんどの人が一生お目にかかることはないでしょうが、台湾と関係を持ったとたん使う機会が増える漢字の一つです。中国古代の夏王朝から戦国時代にかけて、福建省からベトナム一帯に「古閩族」という原始民族が住んでおり、後に中原から逃れてきた人々と混ざり合い「閩越族」と呼ばれるようになりました。その後一部が中華の支配地域に組み込まれたときにこの地域を「閩」と呼ぶようになり、五代十国時代にはこの地域の国の名前となりました。今も昔も、「閩」はほぼ現在の福建省(一帯)を示す語で、歴史的経緯から福建省とつながりの深い台湾と合わせて「閩台」のように呼ぶこともあります。台湾語を閩南語と呼んだりもしますね。

とても簡単に作れてお酒のおつまみにはぴったりなので、ぜひ再現してみてください。


排南│金華ハムの紹興酒煮

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難易度:☆ 調理時間:2時間
本日は浙江の『排南』という料理を紹介します。台湾でも高級レストランではおなじみの金華ハムを使ったシンプルな料理で、豚肉の旨味を余すことなく味わえます。

言い伝えによると800年以上前、南宋で金と戦った名将宋澤が金華ハムの始祖といわれています。彼の軍が遠征からの帰りに捕まえた豚の肉を漬け汁に浸けて宮廷に持ち帰り皇帝に献上したところ、真っ赤に染まったその色を見た皇帝が「金華」と名付けたのが名前の由来だと言います。その後金華ハムは「色、香、味、形」の四絶を供えた名品として中華全土に急速に普及します。

『排南』の名称の由来は料理の形が中国のゲームで使われる「骨牌」と似ており、杭州方言で「牌」 と「排」の発音が同じ事から。

今では日本でもすっかりおなじみの金華ハムは、なんと清朝時代には既に日本に輸入されて消費されていました。1915年のパナマ国際商品博覧会でも中国から出品され特別賞を受賞するほど人気を博しました。これによりアメリカやヨーロッパでも広く普及することになります。

金華ハムの製法は工場ごとに大きく異なり、材料の豚肉も様々な品種、様々な部位が使われます。特にオスの腰肉(ロース)を使った金華ハムは上品とされ、この料理も本来はこの部位を使って作ります。

清代に編纂された本草書《本草綱目捨遺》にも金華ハムの記載があり、これによると益腎、養胃、生津、壮陽、固骨髓、健足力等の効能があるとされます。薬膳の世界では病人を回復させ、老化を防ぎ、産後の女性を助けるなどの目的に使います。

一口食べれば食欲増進、二口食べれば幸せに、三口食べれば健康になるとも言われる金華ハム。金華ハムの旨味を余すことなく味わえる『排南│金華ハムの紹興酒煮』。簡単に作れますので、ぜひ挑戦してみましょう。


蟲草紅棗燉甲魚│冬虫夏草とスッポンのスープ

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難易度:☆☆ 調理時間:3時間
いままで紹介したあらゆる料理の中でもっとも高価であろう料理『蟲草紅棗燉甲魚│冬虫夏草とスッポンのスープ』を紹介します。出来上がるスープは濃厚な旨味と滋味あふれる最高の薬膳スープです。

薬膳スープなので効果も書いておきましょう。この薬膳が主に治療するのは足腰の痺れ、月経不順、遺精、陽痩、早泄、乏力、虚弱体質など、もちろん健康な人が飲んでも体力増強、抗老化、疲労回復などの効果が期待できます。

冬虫夏草は薬膳料理ではおなじみの材料、詳しくはブログの過去記事を参考にしてください。紅棗(大棗)もブログでちょくちょく紹介しているので、ご存知の方も多いでしょう。ということで今日は中国語で「甲魚」と書くスッポンについて紹介します。

スッポンは中国語で甲魚、水魚、泥龜、王八などと書き、柔らかい殻を持つ水性のカメ類の総称です。中国では周の時代以前から宮廷料理として楽しまれていたようで、日本でも縄文時代から既に食材にされていました。アジアではかなり歴史の古い食材です。台湾では高級食材として食べられており、南部には養殖場もあります。台湾でも南部の自然の残っている渓流を探せば野生のスッポンが取れるかもしれません。それにしても台湾人ってあんまり川遊びしないですね…。

スッポンは一部の内臓を除いて捨てる部位がほとんどなく、ほぼ総ての部位を食べられます。もし材料が手に入れば、一度お試しください。

ちなみに冬虫夏草も強烈な旨味成分を含みます。スッポンと冬虫夏草、両者の旨みが合わさるとどれほど美味しいスープになるのか想像も付きません。総ての材料をきちんと揃えると2万円ほど必要で、しかも出来上がるスープは一、二人分…。景気のいい方は挑戦してみてください。


蓮子木耳羹│蓮の実とキクラゲのあんかけスープ

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難易度:☆ 調理時間:1時間以内
日本でも手軽に楽しめる薬膳料理『蓮子木耳羹│蓮の実とキクラゲのあんかけスープ』を紹介します。胃腸が虚弱な人向けの漢方薬膳料理です。簡単な料理なのですが、説明はちょっと難しめかも…(笑)。

蓮の実は生薬名を「蓮肉」、「蓮子」または「蓮子肉」などといい、補脾止瀉、益精固腎、養心安神などの作用があります。料理の注意は「便秘の人は食べないように!」ですね。

蓮の漢字は草冠に「連」。これは今回の料理でも使う蓮の実がバラバラではなく花托の中で連なっていることから名付けられています。日本語の「ハス」はこの花托の部分が蜂の巣のように見えることから「ハチス」→「ハス」と訛ったものです。ちなみにMicrosoftの日本語IMEで「ハチス」と入力するときちんと蓮の字が出てきます。

蓮は英語で Lotus といいたいところなのですが厳密には違います。まぁ、Lotus で通じるんですけど…。正確には Lotus は「スイレン」の意味で、「ハス」は Nelumbo というのが正しいのですが…、英語圏の人も余り区別しないので普通は気にする必要はないでしょう。

釈迦の誕生時に咲いていたことから仏教では非常に重要な意味を持つ植物ですが、仏教が伝来する以前の古代中国でも泥の中から咲く事から「純潔」のシンボルとして各種のモチーフに用いられました。仏教が盛んな国では蓮の葉に集まった朝露を集めて作るという恐ろしく手間をかけて作るお茶があり、非常に高級なものとして珍重されます。

通常売られているものは中心にある「蓮子芯」と呼ばれる芯の部分を残しており、この部分は清心瀉火という別の効果があります。現代風に言えばヒステリー解消といったところでしょうか、普通は残したまま調理します。この部分を取り出してお茶を作ると「蓮子芯茶」というちょっと変わったお茶が作れますので、興味がある方は挑戦してみて下さい。

白キクラゲは蓮子と合わせて気陰両補の効果を表します。春の薬膳としてぜひお楽しみいただきたい料理です。

 
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