観世音霊籤第六首 - 第十首

観世音霊籤百首

第六首 中平

投身巖下飼於菟
須是還他大丈夫
捨己也應難再得
通行天下此人無

意訳:
投身巖下飼於菟
自分を犠牲にし、他人のために尽くすこと。

須是還他大丈夫
必要なのはその他人であり、自分ではないのだ。

捨己也應難再得
このように自分を捨てる機会というのはたびたびあることではない。

通行天下此人無
それができる人は天下に多くはいないのだ。

説明:
己を捨てることができる人こそ、天下の英雄であると言っています。
全てを捨てた時にこそ物事の本質が見え、
またそのようなときに味方になってくれる人こそ真の友であるという風に解釈されます。
逆にそのような友や滅私できる人がいかに少ないかを嘆いている籤ともいえます。
まずは利他のみを考え、自分を犠牲にして他人に尽くしてみましょう。

故事:
藺相如完璧歸趙
仁貴遇主 


第七首  

奔波役役重重險
帶水拖泥又渡山
更慮他方求別用
千山萬水未能還

意訳:
奔波役役重重險
幾多の苦労、数々の危険、

帶水拖泥又渡山
これから先も、また水を担いで山を登らなければならない。

更慮他方求別用
今の場所を離れて、別のところに行こうと思っても、

千山萬水未能還
その場所は更に遠くにあるのである。

説明:
今まで大変な苦労してきたけども、
これから先は更なる困難に見舞われること示す籤です。
しかも今の場所から逃げ出そうと思っても、
そこに行くには大変な困難が伴うともいっています。
まさに万事休すの籤です。


故事:
廉將軍思用趙人
秋娘走難


第八首 上上

歲寒松柏古栽培
雨雪風霜總不摧
異日必當成大用
功名作個棟樑材

意訳:
歲寒松柏古栽培
松も柏も長い間手をかけてやっといい形になるのである。

雨雪風霜總不摧
数々の雨、雪、嵐、霜など天候不順も全て耐え切った。

異日必當成大用
いままでの苦難は全てこれからの大事をなすための栄養である。

功名作個棟樑材
これをもって大事業に乗り出す時期が来たのだ。

説明:
今までつんできた善行や努力が、
これからやっと実を結ぶ時が来たというあたり籤です。
今までの辛いことは全て笑い飛ばして、
それらを糧としてステップアップする時です。
大事に苦労して育てた木材が良質な建材として大きな建物になるという前途洋々の籤です。


故事:
范文正公斷虀畫粥
裴度還帶



第九首 上上

勞苦問我心中事
此意偏宜說向公
一片靈臺明似鏡
恰如明月正當空

意訳:
勞苦問我心中事
数々の些事があなたの心中を煩わせている。

此意偏宜說向公
いまここで、改めて客観的に事を再考してみることである。

一片靈臺明似鏡
行ってきたことに間違いはなかったか。これから成す事は正しいのか。鏡を見るように自分で自分に訪ねるのだ。

恰如明月正當空
今こそ自分のなすことがはっきりと分かるはずだ。

説明:
非常に奥の深いあたり籤です。
今までの行いに間違いがなければ何も迷うことがありません。
自分のして来たことと置かれている状況を考えて、
何か引っかかることがあればそれを解決しなければならないという籤です。
このくじが出たら、冷静に、客観的に、徹底的に内省して自分を見つめなおしましょう。
そうすればやらなければならないことが自然と明らかになるのです。

故事:
趙韓王半部論語定天下
孔明點將 
三顧草廬



第十首 

櫝藏無價寶和珍
只管他鄉外處尋
好似將燈來覔火
不如安靜莫勞心

意訳:
櫝藏無價寶和珍
あなたが本当に必要なものは内側にある。

只管他鄉外處尋
外側に答えを求めるべきではない。

好似將燈來覔火
提灯を持って火を探しに行くようなものだ。

不如安靜莫勞心
もしそのようにしなければ、全てが徒労に終わるだろう。

説明:
ハズレ籤にしてはとても柔らかい書き出しです。
しかし最後には言いつけを守らないと全てが無駄になるとすこし怖い文章が書いてあります。
まずは目の前のものを全て片付けてから、ほかの事に注意を向けるべきです。
日本語の諺にある「取らぬ狸の皮算用」は、今はするべきではありません。

故事:
秦昭王連城求趙璧
龐涓觀陣

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