何首烏雞湯│鶏肉と何首烏のスープ
本日は薬膳スープの一つである『何首烏雞湯│鶏肉と何首烏のスープ』を紹介します。台湾では某有名魯肉飯チェーンのお店などで食べられる、割とメジャーなスープ料理です。
薬草研究や山歩きが趣味の人は知っているかもしれませんが、普通は『何首烏?何それ?鳥?てかなんて読むの?鳥じゃない?烏?』という日本人が大部分でしょう。(台湾人も料理名を知っているだけで実際に何首烏が何なのか知らない人ばかりなのでご心配なく。)最後の文字は鳥(とり)ではなく、烏(からす)なのでご注意を。
何首烏は”かしゅう”と読み、ツルドクダミという植物の塊根を乾燥させた生薬です。江戸時代に持ち込まれて以降、北海道以外の日本中に自生するようになりました。これは不老長寿との効能を聞いた八大将軍吉宗が中国から取り寄せて全国の大名に栽培させたことに由来します。ところが大名たちはこれを服用してもてんで効果を実感できず、放置された栽培畑はいつしか忘れ去られ、野生化したといわれています。ソバやアイと同じ属の植物なので、生命力はそれは抜群でしょう。
大正時代にも何首烏ブームがあったそうですが、やはり効果はなくすぐに下火に…。なんとも効果があるのかないのか分からない植物です。
調べてみると生の何首烏には血行促進、補腎などの効果はなく、(タデ科なので当然ですが)整腸通便が主な効果で、加熱処理をして始めて補腎の効果が出ると書かれている書物が見つかりました(参照:獣医常用中草薬)。もしかして将軍様や大名たちは、加熱処理をせずに何首烏を摂って下痢しちゃったのかもしれませんね。
ともあれ、東京では下手すると市街地のフェンスに絡み付いていたりするらしいので、興味がある人は植物図鑑などで調べて根を掘り起こしてみましょう。サツマイモのような巨大な塊根が見つかれば、それが生薬何首烏です。
この生薬の奇妙な名前は「何(か)というヨボヨボで白髪の老人がこの生薬を食べたら、首(あたま)が烏のように黒くなった」という故事に由来します。この伝説の通り、血の流れを改善し、元気を増して、特に頭髪に効果を発揮するといわれています。台湾では別名を地精ともいい、地面の気を集めた塊の意味で、割と珍重されます。何首烏の調理に関してはひとつ注意があるのでPointを参照してください。 (参照:東醫寶鑑)
日本でもアポ○カという発毛促進剤に、竹節人参とともにエキスが配合されています。CM覚えていますか?血行を促進して頭髪に効果があるのは間違いないようです。
というわけで、食べると生えてくる(なにが?)かもしれない鶏肉と何首烏のスープを紹介します。日本では漢方薬局でないと手に入らないと思いますが、興味ある方は右メニューのコメント・メールフォームからお問い合わせ下さい。
難易度:
☆☆☆(材料入手による)
調理時間:
1時間以内
材料1:
鶏肉 ……… 900g
水 ……… 1000cc
酒 ……… 600cc
材料2:
当帰 ……… 10g
何首烏 ……… 25g
黄蓍 ……… 15g
大棗 ……… 8個
枸杞 ……… 5g
調味料:
塩 ……… 少々
作り方:
1.鶏肉はぶつ切りにし、沸騰したお湯で3分ほど茹でてあくを抜いておく。
2.材料2の薬材はよく洗い水気を切っておく。
3.鍋に水、酒、鶏肉、すべての材料2を入れ、過熱して沸騰させる。沸騰したら弱火にし、1時間ほど煮込む。出来上がりに塩で味を整えて完成。
Point:
鍋料理なのでネギやニンニクを加えたいところですが、何首烏はこれら二つと組み合わせて調理してはいけないとされています。同属のユリ科の植物なのでタマネギもやめておきましょう。中医学でいう禁忌といわれるものです。理由はよく分かりませんが、韓国の医学書である東医宝鑑に記載があります。長年の経験から何らかの問題があるのでしょう。
また何首烏に豊富に含まれるタンニンが鉄と結びついて吸収を阻害するので、鉄鍋を使った調理、また動物の血などと一緒に調理することも避けることとされています。これについては鉄分が吸収できなくなる形に変化するだけなので、健康上の問題は大きくはなさそうですが、おとなしくステンレスや銅の鍋で作ってください。 ちなみに野菜に含まれる鉄分は構造が違うのでタンニンとは反応しません。白菜やほうれん草など加えてもOKということです。
上記のようになんだか小難しく、使いづらい食材のようですが、台湾では探せば結構な数のお店が何首烏を使った料理を提供しています。何首烏はほんのりとした甘みがある生薬なので、大棗や黄蓍などと共に非常に使いやすい薬膳材料です。
鶏肉の代わりに烏骨鶏を使った、具もスープも真っ黒い料理もあります。
もしツルドクダミを見つけても、自分で根を掘り起こしてみるのはいいですが、実際に使うのはやめておきましょう。普通の家庭では何首烏の加工はまず無理です。
欲しい方は近所の漢方薬局か、当方にメールください。
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