港式煎釀豆腐│香港風豆腐と魚すり身ボール焼き

難易度:☆ 調理時間:30分以内
香港風のおしゃれな料理『港式煎釀豆腐│香港風豆腐と魚すり身ボール焼き』のレシピを紹介します。魚と豆腐のすり身を混ぜ合わせてフライパンで焼いて作り、仕上げにあんかけをかけたりすることも。


香港といえばジャッキーチェン、特に1980年代の彼の映画には多くの水上生活者の姿が映し出され有名になりました。香港近郊に住むこの水上生活者らを「蛋民(蜑民、疍民)」といい、今でこそ数は激減していますが、香港近郊の特殊生活者として非常に有名です(…でした?)。他にも福建、広東、海南省の沿岸に少数が今でも同様の海上集落を作って生活しています。中国全土を見渡しても非常に特殊な生活をしている人々であり、数を減らしている現在にわかに注目が集まっています。

「蛋民」らはもともと漢族で少数民族ではありません。彼らが海上生活を送るようになったのは、5世紀頃この地域の人々らが王朝に対して反乱を起こして失敗、鎮圧され海上に逃げ延びたのが始まりといわれます。統治者は「上陸して居住しない」、「勉強して字を覚えない」、「陸上の人と結婚しない」という三つの禁令を出し、海上生活者らはこれを遵守、この習慣が1000年以上続いた結果、「蛋民」とよばれる特殊な海上生活者が生まれたということです。1000年間陸上とほぼ隔絶され、しかも文字を持たない生活を送っていたため、彼らは広東語とはちょっと異なる「蛋民語」と呼ばれる特殊な方言を話します。英語で「香港」を「Hong kong」と綴るのはこの「蛋民語」によるヒョンコンのような発音が由来となっています。

遺跡研究によるとこの地域に越族(現在のベトナム人)らが居住して国を建てる以前から多くの水上生活者らがいたことが分かっており、三つの禁令も陸上生活者らが海上生活に変えられたというより、もともと海上生活を行っていた人らが陸上生活者らとの交流を禁じられたという見方が正しいようです。1940年代初頭には人口164万人の香港で15万人を超える蛋民がいたと推定されているそうで、近隣のマカオでも総人口の10%以上が蛋民であったという統計があります。現地において昔はほとんど生活の一部として存在していたようです。

近代に入るまで1970年代に入って陸上生活者らとの通婚が認められるまでは被差別民として虐げられていましたが、海運、漁業、交易などに長けた「幫」を結成し、裏社会と繋がることでしぶとく生き残ってきたようです。現在は生活環境の変化や意識の変化によりほとんどの「蛋民」が陸上生活に移行しており、海上だけで生活する「蛋民」はほとんどいないと考えられています。実際の蛋民の姿を見たい人はジャッキー映画の中を探してみましょう。消えていくもののあはれを感じますね。

それと…実はこの蛋民、日本にも渡来して同じように海上生活を行っていたこともわかっています。海女文化や漁法を伝えたそうで、日本でも近世は海女を蛋女(蜑女)などと表記していたこともあるそうです。また近代に入って海上交易や漁業が盛んだった地域では生活の必要性から船に住居を構える人々が少なからずおり、各地の風物詩となっていた時代もありました。海上輸送がコンテナ主体となってからは一気に数を減らしたそうですが、現在でも極少数の海上生活者が各地に存在するようです。国勢調査では海上生活者も対象となるそうですが、住所はどのように表記されるんでしょうね…。昭和15年の新聞ですがこんなニュースも→(リンク)。

往時の香港に思いを馳せながら、おいしく作りましょう。

[材料]
豆腐 ……… 2丁
魚すり身 ……… 300g
ネギ ……… 20g

[調味料]
塩 ……… 小さじ1/2
砂糖 ……… 小さじ1/2
胡椒 ……… 少々
片栗粉 ……… 小さじ1
ごま油 ……… 少々

[作り方]
1.豆腐の水気を切ってすり潰し、魚のすり身とすべての調味料を加えてよく混ぜ合わせておく。(→Point参照)

2.作り方1の豆腐と魚すり身を混ぜ合わせたものをゴルフボール大の大きさの球状に成形し、表面に薄く片栗粉(分量外)を振っておく。

3.熱したフライパンに大さじ2のサラダ油(分量外)をひき、作り方2の豆腐すり身ボールの全面を焼く。中まで火が通ったら完成。

Point!
ぽろぽろと崩れてしまう場合は魚のすり身を足したり、つなぎを多めに加えたりしましょう。豆腐はすり潰さずに細かくさいの目に切って混ぜ合わせてもOKです。

できたものに中華スープをベースに作ったあんかけをかけても美味です。

球形が焼きにくい人は少し平たく潰してもOKです。

別に『港式煎釀豆腐卜』といって油揚げの中に同じように肉を詰めて焼く料理があるのですが、この料理はその派生料理といえます。


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