難易度:☆ 調理時間:30分以内
薬膳料理『山藥酥│ヤマイモの唐揚げ』のレシピを紹介します。一度くらいは食べたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
私が薬学生だった頃は生薬学の先生に“まさに山に生える薬だから山薬と呼ぶのだ”と教わった記憶があるのですが、調べてみると台湾・中国では別の伝説が…。
言い伝えによるとはるか昔、ある二つの国が戦争をしていたときの話。 小国は大国に攻められ続け、領土の大半を失い、ある一座の山に逃げ込みました。山は「守るに易し、攻めるに難し」の定石のような地形であり、圧倒的有利の大国側は山全体を包囲して小国の兵糧が尽きるのを待ちます。
小国側はひたすら耐えていましたが、さすがに一ヶ月もすると兵糧がなくなり、動ける兵士も少なくなり始めます。その様子を静観していた大国側の兵士はもうしばらくで投降してくるだろうと、考え始めました。
そして二ヶ月、三ヶ月、大国側は包囲したまま敵が更に弱るのを待ちます。軍馬が食べつくされ、周辺の食用になるものも全て食べつくすまで包囲の手を緩めません。 しかし小国はまだ投降してくる気配がありません。
大国は結局八ヶ月待ちました。どう考えても飢餓と装備不足で軍の大半が機能しなくなっているはずです。投降する力もうせたのだろうと、大国の兵らはもう簡単に殲滅できると高をくくり、包囲の手が緩み始めました。油断です。
そうしたある夜、小国の兵士らは沈黙を破り大国の大本営を急襲しました。大国の指揮官は為すすべなく敗れ、その後も小国の兵らは少数ながら連戦連勝を重ねて領土の大部分を回復します。
小国の兵らが山にこもって約一年、もちろん兵糧は早々に尽きたのですが、実際に餓死者は一人も出ませんでした。小国の兵らが篭った山にはもともと天然のヤマイモが豊富に産出する場所で、兵らはこれを食べて勝機をうかがっていたのです。兵たちはもちろん、植えていた軍馬もこれを食べて元気を充填し、強力な力を蓄えていました。
兵らはこの植物に感謝し、「山遇」と名前を与えました。「食料が枯渇した山中で偶然出会ったもの」の意味です。後に医療用として優れた健脾胃、補肺腎の効能があることがわかり、「山偶」は「山薬」と名前を変えて呼ばれるようになりました。
中国ではこちらの伝説の方が「山薬」の名前の由来として広く知られています。「山薬」が初めて本草書に登場するのは《本草綱目》で、名称は「薯蕷」ですが、当時から一部の地域では山芋と呼ばれていたようです。
さて、古代中国では諱または廟諱という、皇帝の名前と同じ文字、死後の皇帝に送られた名前と同じ文字、同じ部首、同じ音の文字は「使えない」という奇妙な制度がありました。もちろん過去に書かれた文献も全て書き換えられます。ただし使用を禁止すると弊害が大きすぎる字(数字や色など)は例外とされ、そのたびに王朝から許可が出されました。
この制度により、まず唐代に「薯蕷」の「蕷」の字は代宗の名である「預」とかぶってしまい、山薯などと名前が変えられます。更に宋代、英宋の名である「暑」と薯がかぶってしまい、全面的に名前が変えられることになってしまいます。実際には「山薬」の名はこうして生まれたのでしょう。他にも「玉延」、「児草」、「淮山」、「土諸」など多くの別名があります。生薬に多くの別名があるのはこういった理由もありそうです。
ヤマイモには益気養陰、補脾肺腎の効能があり、薬膳では夏ばてや体力低下に常用されます。生薬としてはもちろん乾燥させたものを使いますが、薬膳料理では生も使います。
薬用効果もさることながら食材としてもおいしいヤマイモ、今回は唐揚げにしておいしくいただきます。疲れや体力の低下を感じる方はぜひお試しください。
[材料]
ヤマイモ(生) ……… 500g
から揚げ粉(小麦粉など) ……… 100g(適量)
[調味料]
塩 ……… 適量
[作り方]
1.ヤマイモをよく洗い、皮をつけたまま耐熱容器に乗せて蒸し器に入れる。15分ほど芯に火が通るまで蒸したら、取り出して皮をむき、食べやすい大きさに切る。
2.作り方1のヤマイモにから揚げ粉をまぶし、揚げ物油で表面がきつね色になるまで揚げる。
3.塩を添えて完成。
Point!
日本で売られている新鮮なヤマイモなら蒸して加熱する必要はありません。そのまま衣をつけてあげてください。
てんぷらのように水で溶いた粉で作ってもよいでしょう。衣に特に決まりはありません。
山藥酥│ヤマイモの唐揚げ
●
2014年7月9日水曜日
登録:
コメントの投稿
(
Atom
)
Search this blog
シリーズ
レシピ電子書籍紹介
About this blog
人気の投稿
-
2016年8月31日 クジの引き方と解説のお願いについて追記 台湾旅行時の楽しみの一つといえば現地の有名な寺廟をめぐってのおみくじ引き。台北市の 龍山寺 や行天宮は人気の観光スポットの一つです。いろいろな神様にお参りして、願いを届けた後はその願いに対する神様からのお告げ、お...
-
観世音霊籤百首 第一首 上上 天開地闢結良緣 日吉時良萬事全 若得此籤非小可 人行中正帝王宣 意訳: 天開地闢結良緣 これは天を開き地を闢くよい時期である。 日吉時良萬事全 吉祥の時分であり、各種の条件は全て整っている。 若得此籤非小可 この籤を...
-
観世音霊籤百首 第四十六首 上平 勸君耐守舊生涯 把定身心莫聽邪 直待有人輕著力 滿園枯木再開花 意訳: 勸君耐守舊生涯 今以上の発展を望むなら今までのやり方を変えてはいけない。 把定身心莫聽邪 心身を定めてこそ邪な意見が聞こえてこなくなるのだ。 ...
-
観世音霊籤百首 第四十一首 無限好事君須記 恰如認賊作為子 莫貪眼下有些甜 可慮他時還受苦 意訳: 無限好事君須記 物事に絶対はない。 恰如認賊作為子 盗人を自分の子供として育てるようなものだ。 莫貪眼下有些甜 目の前のうまい話に飛びついたり...
-
観世音霊籤百首 第三十六首 上上 目前病訟不須憂 實地資財儘可求 恰好繫猿今脫鎖 得歸仙洞去來遊 意訳: 目前病訟不須憂 目の前の病気、訴訟は心配することはない。 實地資財儘可求 今できることだけをやるだけでいい。 恰好繫猿今脫鎖 手足の鎖をは...
-
観世音霊籤百首 第十六首 中上 攢眉思慮暫時開 咫尺雲開見日來 宛如汙泥中片玉 良工一舉出塵埃 意訳: 攢眉思慮暫時開 混迷の時はしばらくおちつくだろう。 咫尺雲開見日來 曇り空からも光が差す。 宛如汙泥中片玉 泥の中から宝の原石を見つけ出し...
-
観世音霊籤百首 第三十一首 清閑無事靜處坐 飢時吃飯困時臥 放下身心不用忙 必定不遭殃與禍 意訳: 清閑無事靜處坐 静かに座って安穏の時を過ごすがよい。 飢時吃飯困時臥 腹が減ったら飯を食べ、困ったときは横になるのだ。 放下身心不用忙 心身を...
-
観世音霊籤百首 第五十一首 上平 夏日初臨日正長 人皆愁惱熱非常 天公也解諸人意 故遣薰風特送涼 意訳: 夏日初臨日正長 夏の日は一年でもっとも長い。 人皆愁惱熱非常 人は皆暑さに苦労するものだ。 天公也解諸人意 そんな時天は人々の意を汲み、 ...
-
観世音霊籤百首 第二十六首 平 上下傳來事總虛 天邊接得一封書 書中許我功名事 直待終時亦是無 意訳: 上下傳來事總虛 上から下から伝わってくる情報は全て中身がないものばかりである。 天邊接得一封書 天に一通の手紙が届くだろう。 書中許我功名事 ...
-
観世音霊籤百首 第九十六首 上上 巍巍寶塔不尋常 八面玲瓏盡放光 勸汝志心勤頂禮 天龍擁護降千祥 意訳: 巍巍寶塔不尋常 今のあなたは普通ではない。 八面玲瓏盡放光 あらゆる方面に光を放つ。 勸汝志心勤頂禮 後は天に祈りを捧げよ。 ...
材料で探す
調理方法で探す
Powered by Blogger.
0 コメント :
コメントを投稿