難易度:☆ 調理時間:30分以内
客家料理シリーズでいくつかメッセージをいただいたので、お答えする形で『擂茶│客家擂茶』のレシピを紹介します。作るのは非常に簡単です。
『擂茶』は別名を『三生湯』、『五味茶』、『鹹茶』ともいい、中国大陸東南部いったいに分布する特殊なお茶を指します。伝統的には茶葉、ゴマ、ピーナッツなどの原料をすり鉢ですり、水を加えて飲みます。「擂」とはは「擂り下ろす」の意味です。台湾だと客家の伝統茶というイメージが強いですが、別に客家にだけ伝わるものというわけではなく、各地に様々な『擂茶』が存在します。
そのなかでも大きく分けて『客家擂茶』と『湖南擂茶』のに大グループがあり、台湾で飲まれるのは圧倒的に『客家擂茶』の割合が多いです。
由来にはいくつか説があるのですが、まとめて紹介しましょう。
ひとつは三国志の時代の話。蜀の将軍張飛が軍を率いて武陵の攻撃に向った時に疫病で進軍が不可能になりました。同行していた軍医が先祖代々伝わる秘方―即ち生茶、生姜、米を摩り下ろして糊状にし、お湯で溶いて服用する―を伝えたところ、軍は疫病を克服し再び進軍を始めた、という故事に由来するといいます。この秘方の名前を『三生湯』といい、各地に広まった後、客家にも伝わるというものです。この生姜と米を使った擂茶の作り方は湖南擂茶の作法に近いです。
二つ目は東漢の建国時の話。五渓で起きた反乱を鎮圧するため、兵を派遣しましたが熱い天気のため、兵も指揮官も病に倒れてしまいました。この時に軍を救ったのが、その土地の農民に伝わる『五味湯』という擂茶の処方。これにより息を吹き返した軍は反乱を鎮め、この時の治療薬が『擂茶』として各地に伝わったとされるもの。(中医の処方に五味子を使った同名の「五味湯」というものがありますが、こちらとは関係ありません。)
最後はもう少し現実的に、北宋の時代。現在の河南省一帯に起原を発するという説。南宋の時代の詩に「漸近中原語音好、見客擂蔴旋點茶」などの句がいくつか登場することから推察されています。
客家擂茶は客家文化の重要な要素の一つとされます。実は台湾の客家の若者らはほとんど『擂茶』を飲まない、もしくはまったく飲んだことがないそうですが、ご先祖様はさぞかし嘆いておられることでしょう(笑)。客家擂茶の伝統が残る地域は江西省贛縣、石城、興國、於都、瑞金など、福建省將樂、泰寧、寧化など、廣東省揭西、陸河、清遠、英德、海豐、汕尾、惠來、五華など、廣西省賀州黃姚、公會、八步などで、普通はこれに台湾を加えます。各地のレシピとその差異、民族の移動や家系図などを比べることで何処からいつごろ伝わったのかが分かるというのは面白い話です。各地でどのようなときに『擂茶』を飲むのかも少しずつ異なっており、擂茶研究は客家文化の研究の中心として、現在でも様々な方面から研究が進められています。台湾では交通大学の客家文化研究が有名です。
すり鉢を使わず、ミキサーで一気に粉砕してしまえば一瞬で作れてしまいます。本来『擂茶』は季節、目的、一緒に飲む相手、そして地域によって作り方がまったく異なります。決まった作り方というものはありません。皆さんもオリジナルの『擂茶』作りにチャレンジしてみてください。
[材料]
乾燥玄米 ……… 適量
乾燥ダイズ ……… 適量
ゴマ ……… 適量
ピーナッツ ……… 適量
紫蘇 ……… 適量
茶葉 ……… 適量
コリアンダー ……… 適量
バジル ……… 適量
熱水 ……… 適量
[調味料]
塩 ……… 適量
砂糖 ……… 適量
[作り方]
1.茶葉とゴマは事前にミキサーなどで細かく摩り下ろしておく。
2.ピーナッツを炒めて火を通す。
3.すり鉢に乾燥ダイズ、ピーナッツ、紫蘇、コリアンダー、バジルを入れ、細かく擂りおろす。擂りおろしたら茶葉とゴマを加える。
4.沸騰したお湯をすり鉢に直接加えて、よく混ぜ合わせる。乾燥玄米を浮かべて砂糖と塩で味を調えたら完成。
Point!
すべての材料をミキサーで粉砕して作るのが最も手っ取り早いです。粉をコップに入れてお湯を注いで飲めば数秒で作れます。
材料の量に決まりはありません。好みの組み合わせで作りましょう。
他にもカボチャの種、カシューナッツ、クルミなどの堅果類、季節の薬草、肉桂、胡椒などの香辛料を加えることもあります。健康目的で生の薬草を配合する場合は、きちんと洗ってきれいにしたものを使ってください。
茶葉はお湯の量にあわせて、通常使う分量の茶葉を加えるといいでしょう。濃さは各人で調節してください。出来上がった粉の倍量ほどの水を加えるとちょうどいいと思います。
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