樹子荔梨燉金雞│樹子とライチの鶏肉スープ

難易度: 調理時間:2時間
2010年「客家筵席料理比賽」で見事優勝に輝いた『樹子荔梨燉金雞│樹子とライチの鶏肉スープ』のレシピを紹介します。

台湾で始めて本格的に開催された2010年の客家料理大会、初回のテーマは「宴席料理」でした。宴席料理、つまりコース料理がテーマということで参加のハードルは極めて高かったと思います。プロ部門の優勝作品は『紅糟穀糧布袋雞』、『金桔烈火芋封鴨』、『福菜蔭脯網金尊』、『石磨豆腐思鄉情』、『福氣脆筍汶封肉』、『樹子荔梨燉金雞』、『白菜鮮藏豇豆湯』、『桔餅鹹欖膨風茶』、『香煎彩虹客肉粄』、『農家黃金客水粄』、『食客新風六小福』と11品を提出した「新天地餐飲集團」でした。プロ部門があるということは、もちろんアマチュア部門の作品もあります。いきなり第一回大会か恐ろしくハイレベルな作品が目白押しです。ちょっと写真でも見てみてみましょう。

台湾客家料理の裾野って…、思った以上に広いようです。

いきなりコース料理のすべてを紹介するのも不可能なので、今回はその中の一品『樹子荔梨燉金鶏』のレシピを紹介したいと思います。

台湾の中華コース料理では必ず「鶏肉のスープ」が出されますが、これは「気力を補ってパーティーを盛り上げていこうぜ」の意味が込められています。たくさん食べて体力を回復させてください。

さて前回に続いて今回も客家料理を分析した文章を掲載します。前回の文章も高雄餐旅大學 臺灣飲食文化產業研究所 潘江東教授の台湾客家委員会への寄稿を元にしています(一部筆者が追記・改変しています)。ソースはこちら

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一.客家料理の特色

(一) インディカ米、 サツマイモなどの雑糧を主食とする。台湾では日本統治時代に日本人の持ち込んだジャポニカ米を主に使うようになった。また豚、羊、鶏、鴨、魚肉を蛋白源とし、その他の海鮮類はほとんど食べない。味付けは塩、肥、油、香を四大特色とする。
(二) 天日干し、塩漬け、塩水浸けなどの加工食品が多く、一般的に用いられ、これらの風味が客家料理の重要な特色となる。例えば閩西八大乾と呼ばれる『武平豬膽乾』、『連城地瓜乾』、『永定菜乾』、『上杭蘿蔔乾』、『長汀豆腐乾』、『清流筍乾』、『寧化老鼠乾』、『明溪肉脯乾』、台灣客家の『梅乾菜』、『鹹菜』、『高麗菜乾』、に『醃冬瓜』、『醃破布子』、『醃菜頭』、『醃結頭菜』、『鳳梨豆醬』、『豆腐乳』などを特色とする。
(三) 調理法では蒸す、煮る、及び揚げる、焼く、油通しするなどの技法を多く用いる。脂っこい味付けは過酷な労働の熱量源とするためであり、食糧不足時代の簡素な食材の喉越しを滑らかにするという役割もあった。また包丁技法は荒く、菜色も朴実無華を特色とする。
 (四) 風味では、福建客家料理は香りを重視し、素材の持ち味を生かすことに注力する。しかし各地でその味付けには大きな違いがある。台湾客家料理は塩気を利かせる。これは労働による発汗で失われた塩分を補充するためであり、容易に満腹感を得るためでもある。
(五) 食材を乾燥させる技法に長けており、乾燥食材を使った料理は非常に多彩である。例えば『梅乾菜扣肉』、『酸菜肚片湯』、『冬瓜封』、『苦瓜封』、『高麗菜封』、『客家小炒』、『薑絲炒大腸』、『菜乾燉排骨』、『四季豆乾肉絲湯』などがある。。
(六) 油を多用し、また食肉は脂身部分をよく使う。

二. 客家料理形成の原因
(一) 自然地理条件が主要な食材を決定するが、客家の居住する山間部では生産できる米の量に限りがあるので、主食は雑糧を主とする。例えばサツマイモ、タロイモ、ワラビ根、ヤマイモ、ヤムイモなどを主とし、紫芋、カボチャ、タロイモ、ダイズなどの甘味のある食材はデザートにも用いる。またダイズを加工した豆腐も用いる。
(二) 客家の各居住地の生活条件は比較的過酷で、これらも客家料理を特徴づける要因となった。例えば多くの客家が山間部に居住し毎日山を越えて移動しなければならず、過酷な労働条件と、不便な交通条件は乾燥食材、漬物、干し肉などの加工料理の発達を促した。
(三) 福建・広東・湖南、また各地の土着民族の飲食文化の影響を受けた。例えば食犬、鼠、蛇など古代百越属の風習も取り入れられ、また広東料理の特色である子豚の丸焼きなども取り入れられている。

三.客家飲食文化の基本的特徴

(一) 礼節時の礼儀規範を極めて重視する
 1.「酒席三請」 の習慣があり、席順は極めて慎重に考慮される。
 2.宴席では敬酒、倒酒、行酒など、それぞれ専門のスタッフを配置して行う。

(二) 吉凶の縁起を極めて重視する
 1.火の神(窯の神)を重要視し、香、蝋燭、三牲(雞肉、豬肉、魚)を女性の年長者が拝む習慣がある。
 2.年越しの蒸しパンは歩歩高昇、年賀にミカンを食べるのは吉祥の表れなど様々な願掛けがある。また新年にセリ、ニンニクを最初に食べるのは一年の景気づけ、また『肉圓(有緣)』、『柚子(有子)』など客家語の言葉遊びも多用する。
 3.飲食にまつわる禁忌、願掛けが多い。箸をご飯に突き立てる-齋飯と呼ばれ、不吉の象徴とされる。油瓶を割る、脚を窯に向けて食事をする、妊婦がスッポンを食べるなどの行為は禁忌とされる。また出産時の日付が旧暦の3、13、23日にあたる場合は、母親が卵及びサトイモ(の一種)を知人に送らなければならないとされる。これは客家語で「三」と「生」の発音が似ているためとされる。

(三) 集団での食事、宴会を好む
家族だけでなく、隣同士、友人同士での食事の機会が多い。また酒、粽、茶などを共同で大量に購入することもたびたび行われる。

(四) 調理の原則を重視する
 食材の持ち味を生かすことと食材の組み合わせを重視し、いわゆる薬性(温熱涼寒)の組み合わせなども考慮する。例えば福建客家料理の『鴨子燉蓮子』は食材のすべてが涼性を持つ。夏至には犬肉、当時には羊肉を食べる。酷暑には『仙草凍』、『擂茶』で体を冷やし、産婦には『糖薑雞』、『糖薑酒』を食べせるなどである。これらの例外から外れることを非常に嫌がる傾向がある。

(五) 倹約と階級意識
平時には倹約に努め、祭時は大いに浪費する。各地で倹約に励む客家の人々も、祭時はうって変わってとても賑やかである。また平民と金持ちの間には階級意識が存在し、食生活には無意識の差別化が働く傾向がある。

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ハイレベルな客家創作料理を存分に味わってください。日本で作れるかどうかはあまり気にせず紹介していますが、この料理なら“比較的”容易にアレンジと再現が可能かと思います。まずは手に入る材料だけで挑戦してみましょう。



[材料]

ナシ ……… 350g
乾燥ライチ ……… 50g
鶏肉 ……… 450g
山藥 ……… 250g
樹子 ……… 50g
ショウガ ……… 35g
チキンスープ ……… 1000cc

[調味料]
塩 ……… 25g
シイタケエキス ……… 35g

[作り方]
1.ナシ、 ヤマイモを食べやすい大きさに切る。ショウガはうす切りにする。

2.鶏肉を食べやすい大きさに切り、沸騰したお湯にくぐらせてアクを抜く。

3.鍋にナシ、ヤマイモ、乾燥ライチ、鶏肉、樹子、ショウガ、チキンスープを入れ、蓋をして鍋ごと蒸し器で2時間強火で加熱する。

4.火が通ったら塩、シイタケエキスを加えて味を整えて完成。

Point!
乾燥ライチと樹子の入手が一番の難関でしょう。乾燥ライチが手に入らないときは竜眼肉などで代用して下さい。竜眼肉は漢方薬局などで手に入ります。樹子は台湾訪問時に購入しておきましょう。甘口男でも販売しています。メールにてご相談ください。

乾燥ライチと樹子さえ手に入れてしまえば後は簡単に作れます。蒸し器に鍋が入らない場合は、直火でかまいませんが、ごく弱火でじっくり加熱しましょう。


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