難易度:☆☆☆ 調理時間:2時間
夜市や屋台でおなじみ『藥燉排骨│豚バラの生薬煮込み』のレシピを紹介します。食べる前から体に良さそうな香りが立ち込めます。これをおいしそうと感じるか、薬臭いと感じるかは人それぞれです(笑)。
以前も同名の料理を紹介しています。以前のレシピはこちら。本日のコラムには非常に専門的な話題が含まれるので、難しい!と思った方は深く考えずに一気にレシピまで飛んでください。
さて、本日のレシピは少々解説が必要でしょう。日本でもそうですが、台湾や中国では名前をそのまま伝えただけでは買えない生薬がいくつかあります。いったいどういうことでしょうか?
まず材料1にある「牛膝」という生薬を見てみましょう。もちろんこの名前のまま生薬辞典などには載っていると思いますが、その基原植物を見るとヒユ科の懷牛膝 Achyranthes bidentata Bl. と川牛
今回のレシピでは懷牛膝 Achyranthes bidentata Bl. を使ってください。日本でなら普通に「ゴシツください」といえば買えます。
そしてもう一つ「芍薬」です。こちらもこの名前のまま生薬辞典などには記載されていますが、芍薬は植物ではなくその加工方法によって名前が変わります。ご存知「立てば芍薬、座れば牡丹」のあのシャクヤクの根を乾燥させたものですが、外皮をつけたものを「赤芍」、外皮を除いたものを「白芍」と呼び分けます。赤芍は栽培品も野生品も含まれますが、白芍は栽培品のみという特徴もあります。赤芍は清熱涼血の効能が強く、白芍は補血、止血の効能が強いとされています。日本の薬局方では元になる植物は Paeonia lactiflora Pallas だけ指定されていますが、台湾や中国では他のボタン属の植物のものも結構出回っています。薬剤師や薬学生の方は牡丹皮との違いも復習しておきましょう(笑)。
今回のレシピでは赤芍、白芍どちらを使ってもかまいません。
鬚人参や炙黄蓍の説明もしたいところですが…、またの機会にしておきましょう。
問題は実際に生薬を目にしたときに…どうやって見分けるの?ということですが…。もちろん普通の人はまず無理でしょう。しかし世の中には自分を含めて好きモノが多数いまして、自分の研究している分野の生薬なら見ただけで植物の種類…だけでなく、生育年数(!)、産地(!)、そしてちょっと口に入れれば成分の含有量までほぼ正確に当てることができるようになるのです。筆者の大学時代の研究室にはそういう人間ばかりが揃っていました(笑)。生薬のソムリエみたいなものですね。といわけで、生薬や香辛料の購入は専門家に任せてしまうのが一番です。そういう人は質問すると喜んで答えてくれますので、わからないことはどんどん訪ねてみましょう。筆者もそういう人間の一人なので、分からないことがあればいつでもメールください(笑)。
というわけで、本日は冬場の台湾で絶対に食べたい軽食の一つ『藥燉排骨』の本格レシピです。正直ここまで本格的な生薬を配合して作る『藥燉排骨』は台湾でも少ないと思いますが…。生薬の勉強をしながらぜひ日本でも作ってみてください。
[材料1]
牛膝 ……… 4g
白豆蔲 ……… 4g
芍薬 …… 7g
炙黄蓍 ……… 7g
鬚人参 ……… 7g
桂皮 ……… 3g
当帰 ……… 7g
熟地黄 ……… 7g
川芎 ……… 7g
枸杞 ……… 7g
甘草 ……… 3g
花椒 ……… 7g
小茴香 ……… 12g
八角 ……… 2個
[材料2]
豚バラ肉 ……… 1200g
(骨付きでもよい)
ネギ ……… 1本
ショウガ ……… 20g
ニンニク ……… 5個
水 ……… 1500c
(一部を酒で置き換えてもよい)
[調味料]
塩 ……… 少々
[作り方]
1.全ての材料1をティーパックなどに入れ、水に30分ほど浸けておく。ネギはぶつ切りにする。ショウガは千切りにする。ニンニクはみじん切りにする。
2.豚バラ肉を食べやすい大きさに切り、 ネギ、ショウガを入れて沸騰させたお湯で茹でてアクを抜く。アクを抜いたら取り出して冷水に浸け、水気を切っておく。
3.熱した鍋に大さじ1のサラダ油(分量外)をひき、ニンニクを炒めて香りを出す。続いて作り方2の豚バラ肉を入れて表面を軽く炒め、作り方1の薬材パックと浸けておいた水、塩を入れて沸騰させる。沸騰したら火を弱火にし、1時間ほど煮込んで完成。
Point!
豆板醤にマーマレードジャムを少量加えたもので食べるのが定番です。もちろん醤油など好みの調味料をつけて食べてもよいでしょう。
スープも残さず食べるのが吉!冷え性が治ります。
材料1の薬材はどれも日本で手に入ります。漢方薬局などで相談してみましょう。
炙黄蓍の代わりに蜜炙黄蓍、普通の黄蓍を使ってもOKです。
鬚人参の代わりに普通の人参を使ってもOKです。
手に入らない生薬があっても1、2種類ならそれほど味は変わりません。あまり細かいことはきにせず、まずは作って見ましょう。
生薬の読み方は
牛膝│ごしつ
白豆蔲│びゃくずく
芍薬│しゃくやく
炙黄蓍│しゃおうぎ
鬚人参│ひげにんじん
桂皮│けいひ
当帰│とうき
熟地黄│じゅくじおう
川芎│せんきゅう
枸杞│くこ
甘草│かんぞう
花椒│かしょう
小茴香│しょうういきょう
八角│はっかく
です。
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