難易度:☆☆☆ 調理時間:半日
本日は四川料理を楽しむためには欠かせない『川味紅滷水│四川風辛味スープベース』の作り方を紹介します。台湾で言う『滷味』の四川版で、様々な食材、特に肉類を煮込んで味を付けるのに使われます。
☆本来のレシピは大型の鍋を使って10倍の量で作ります。レシピの分量通りで作るとたぶんスープが煮詰まってしまうので、適宜水を足しながら作りましょう。可能なら2-3倍量、出来たら5倍量以上の分量で作るとレシピ通りに作れます。
四川料理の歴史は秦の時代から続いているとされます。「麻辣」を味の特徴とする四川省ですが、明代にトウガラシが伝わるまではまったく辛くない料理が主体でした。現在の「麻辣」を特徴とする料理は清代に完成されたもので、他の地域の料理と比べて料理の特徴自体はそれほど歴史が長いわけではないのです。辛い四川料理が登場してから数百年、それでもこれだけ世界中で愛されているのですから四川料理の持つ魅力がそれだけ優れているということでしょう。
さて、四川料理は大別して蓉派(上河帮)、渝派(下河帮)、塩帮派(小河帮)の三つに大別されます。
我々に最もなじみがあるのは蓉派の料理でしょう。これは成都を中心とした地域の四川料理で、日本人の大好きな『麻婆豆腐』や『回鍋肉』など、パッと名前の思いつく四川料理は大体こちらに分類されます。古くは三国志蜀の宮廷料理、王朝統一時代も中央から派遣された高級官吏らの接待料理などがベースとなっており、「川菜の王」とも呼ばれます。複雑精緻、高級感溢れる飾り付けも特徴です。また庶民ら作った伝統的な家庭料理の多くもこちらに属します。
続いて渝派、こちらは重慶を中心とした地域の四川料理で、荒々しく豪快に、食材をそのまま調理したような野趣溢れる料理が特徴とされます。今回のレシピ『川味紅滷水』や『麻辣火鍋』はこの重慶が発祥です。トウガラシがそのままの形でたくさん入っているような料理は大体この渝派の四川料理の流れを汲みます。また中華民国時代に浙江、江蘇、上海(浙江デルタ地域)から多くの移民を受け入れたため、淮揚、上海料理の特徴も一部受け継いでいます。また魚を使った四川料理が出てくれば大体この渝派の料理です。
最後に塩帮派、長江の支流である沲江流域の自貢周辺の料理で、名前のとおり塩を使った味付けが特徴です。この地域は古代中国において塩の取引で莫大な利益を上げたことで知られ、貴重品(当時通貨の代わり)だった塩がふんだんに使われています。古代の大金持ち商人らが競うようにして新しい形、味を追い求めた結果、複雑怪異、豪華絢爛な料理ばかりになってしまいました。兔などの肉を塩漬けにしたあと調理した冷性料理や、空心菜の茎の空洞に注射器でひき肉を詰め込んで炒めた料理など、独自の工夫を凝らした料理が多くあります。
というわけで四川料理の分類をざっと眺めてみましたが、楽しんでいただけましたでしょうか?さすがに有名な料理体系だけあってレシピも文献も豊富に揃っています。勉強のしやすい料理体系といえるでしょう。それぞれの地域の特徴ある料理を二、三しっかり作ってみれば料理体系の特徴や歴史が見えてきます。 食材や調理法を通じて地理・歴史・世界史・農業を学べるのも料理の一つの楽しみ方というものです。
本日は重慶風…というか、本格的な四川の「紅滷水」の作り方です。大きな鍋を用意してぜひ挑戦してみましょう。材料はメールいただければどれだけでも準備しますよ!
[材料]
ショウガ ……… 5g
ネギ ……… 25g
干しトウガラシ ……… 10g
花椒 ……… 5g
塩 ……… 50g
味の素 ……… 2g
砂糖 ……… 75g
鶏肉 ……… 125g
鴨肉 ……… 150g
豚肋骨 ……… 150g
豚蹄 ……… 150g
(なければ豚肋骨で代用する)
豚大腿骨 ……… 200g
(なければ豚肋骨で代用する)
鶏油 ……… 150g
中華スープ ……… 2000cc
サラダ油 ……… 10g
[調味料]
八角 ……… 5g
山奈 ……… 15g
桂皮 ……… 20g
月桂葉 ……… 7.5g
小茴香 ……… 5g
胡荽 ……… 2.5g
草果 ……… 2g
香茅 ……… 2g
白豆蔲 ……… 25g
[作り方]
1.鶏肉、鴨肉、豚骨、豚蹄、豚大腿骨を沸騰したお湯で数分茹でて血を抜き、流水で雑物をきれいに洗い流して、調理用の鍋に入れておく。
2.調味料をまとめて沸騰したお湯をかけるなどして殺菌消毒洗浄し、手で触れる温度になったら麻の袋などにつめておく。
3.熱した調理用の鍋にサラダ油を入れて砂糖を加えて中火で加熱しながらカラメルを作る(→Point参照)。カラメルが出来たら中華スープを加え、沸騰させる。
4.作り方2の調味料をつめた袋と鶏油を中華スープに加え、蓋をして弱火で6時間じっくり煮込む。
5.煮込み終えたら薄切りにしたショウガ、ぶつ切りにしたネギ、干しトウガラシ、花椒を加え弱火で20分更に煮込む。
6.塩と味の素で味を整えたら更に30分煮込む。中の具を全て取り出しスープを漉したら完成。
Point!
☆本来のレシピは大型の鍋を使って10倍の量で作ります。レシピの分量通りで作るとたぶんスープが煮詰まってしまうので、適宜水を足しながら作りましょう。可能なら2-3倍量、出来たら5倍量以上の分量で作るとレシピ通りに作れます。
カラメルは絶対に焦がさないように。いい飴色になったらすぐに中華スープを注ぎましょう。
川味紅滷水│四川風辛味スープベース
●
2014年8月20日水曜日
登録:
コメントの投稿
(
Atom
)
Search this blog
シリーズ
レシピ電子書籍紹介
About this blog
人気の投稿
-
2016年8月31日 クジの引き方と解説のお願いについて追記 台湾旅行時の楽しみの一つといえば現地の有名な寺廟をめぐってのおみくじ引き。台北市の 龍山寺 や行天宮は人気の観光スポットの一つです。いろいろな神様にお参りして、願いを届けた後はその願いに対する神様からのお告げ、お...
-
本日はソースから作る『三杯醬、三杯雞│三杯ソース、三杯鶏』のレシピを紹介します。数ある「三杯」料理の基本となる三杯ソースを作り置きしていれば、いつでも、どんな材料でも、「三杯○○」料理が作れてしまいます。 レシピ前半では『三杯醬│三杯ソース』を、後半ではそのソースを使った『三...
-
本日のレシピは『大腸包小腸』です。ついにこの料理を紹介するときがやってきました(笑)。 漢字の意味をそのまま受け取ると非常にグロテスクな料理のようですね。見たことも食べたこともない人はどんな料理を想像しましたか?あえてその形を形容するなら、中華風ホットドックといえば分かりやす...
-
難易度:☆ 調理時間:30分以内 台湾伝統のゼリー状の食材『粉粿│キャッサバゼリー』のレシピを紹介します。『豆花』や各種ドリンクなど様々なデザートに配合される「Q感」が特徴の料理です。 台湾旅行に慣れてくると道端の店で適当に注文して食べるデザートが恋しくなってくるもの。今回...
-
観世音霊籤百首 第六十六首 路險馬行人去遠 失群羊困虎相當 危灘船過風翻浪 春暮花殘天降霜 意訳: 路險馬行人去遠 馬とも遠く離れ危険な道を行く。 失群羊困虎相當 群れから逸れた羊が狼に出会うかのようだ。 危灘船過風翻浪 船が嵐の中を進むよう...
-
観世音霊籤百首 第八十一首 中中 庭前葉落暮秋時 行客奔程勢若飛 謝得天公輕着力 順風相送寶船歸 意訳: 庭前葉落暮秋時 晩秋落葉の時。 行客奔程勢若飛 旅人はきびすを返して故郷に戻る。 謝得天公輕着力 天に感謝すれば体が軽くなる。 ...
-
観世音霊籤百首 第七十一首 上上 誰知愛寵遇強徒 女子當年嫁二夫 自是一弓施兩箭 騎龍跨馬上安居 意訳: 誰知愛寵遇強徒 自分のものが他人に奪われてしまう。 女子當年嫁二夫 この場合両方に同じように接するのがよい。 自是一弓施兩箭 一度に...
-
観世音霊籤百首 第三十六首 上上 目前病訟不須憂 實地資財儘可求 恰好繫猿今脫鎖 得歸仙洞去來遊 意訳: 目前病訟不須憂 目の前の病気、訴訟は心配することはない。 實地資財儘可求 今できることだけをやるだけでいい。 恰好繫猿今脫鎖 手足の鎖をは...
-
観世音霊籤百首 第一首 上上 天開地闢結良緣 日吉時良萬事全 若得此籤非小可 人行中正帝王宣 意訳: 天開地闢結良緣 これは天を開き地を闢くよい時期である。 日吉時良萬事全 吉祥の時分であり、各種の条件は全て整っている。 若得此籤非小可 この籤を...
-
観世音霊籤百首 第五十六首 中平 澗小石粗流水響 力勞撐駕恐損傷 路須指出前江去 風靜潮平儘不妨 意訳: 澗小石粗流水響 状況は時につまづき、些事が流れを止める。 力勞撐駕恐損傷 強引に押し通ろうとしても傷つくだけだ。 路須指出前江去 その道に...
材料で探す
調理方法で探す
Powered by Blogger.
0 コメント :
コメントを投稿