酸酸雞│酸酸鶏

難易度: 調理時間:2時間
昨日紹介した四川料理の一派である塩帮派(たぶん…)の料理をひとつ紹介しましょう。その名も『酸酸雞│酸酸鶏』です。名前はシンプルですがかなり精緻な作り方をします。四川料理の技を堪能できる一品です。

古代の四川省は秦の始皇帝により統一されるまでは、成都に蜀、重慶に巴という別々の国がありました。それぞれ3000年ほど前の遺跡が発掘されており、かなり古い歴史を持つ土地だったことが分かっています。その後項羽が劉邦に漢中と巴蜀を与え劉邦の支配地域になりますが、漢王朝成立後はその険しい自然環境から流刑地として使われます。三国時代に劉備が蜀を打ち立て以降、蜀の名を冠した様々な国がこの地域を支配し独自の王朝を打ち立てます。統一時代以外の四川省にはほぼ一国一王朝があり、これらの時代の宮廷料理が四川料理のベースになっているのです。

北宋の時代以後の四川省は中央に支配されるようになり、このころ成都府、梓州、夔州、利州(古くは漢中、現在は陝西省)の四地域を合わせて「四川」と呼ばれるようになりました。特に成都は商業都市として一大発展を遂げます。

以前も紹介しましたが、明清の時代に「張献忠」による大規模な反乱があり、この反乱軍によって四川省の住民の9割(!)が虐殺されてしまいます。その後100年をかけて周辺地域から移民を集めて復興しますが、古代からの文化や伝統が大部分失われてしまいました。 失われてしまった美食のレシピも相当な数に上るでしょう。中国の歴史はこんな事件ばっかりですが、やっぱり残念ですね。

そして近代。南京に政府を置いていた国民党政府は日中戦争で南京を追われ、重慶に政府を移転していたことがあります。その後南京に政府は戻りますが、今度は共産党に追われ政府は再び重慶に、そして成都を経由して台湾に落ち延びることになります。歴史的には台湾とも関係の深い四川省なのです。


そんな四川省は自貢で古代塩の取引のよって巨財を成した商人たち、彼らが見栄を競って作ったとされる塩帮派の料理の一種『酸酸雞』のレシピです(たぶん…)。材料はシンプルで見た目も普通の料理に見えますが、かなり細かく丁寧な作り方をします。日本で再現してお客さんを驚かせてやりましょう!


[材料1]
山椒 ……… 20g
タマネギ ……… 50g
トウガラシ ……… 60g
青トウガラシ ……… 55g
ネギ ……… 50g
水 ……… 1000cc

[材料2]
鶏肉 ……… 1匹分
水 ……… 3500cc
ネギ ……… 50g
ショウガ ……… 30g
干しトウガラシ ……… 20g
花椒 ……… 3g

[材料3]
タマネギ ……… 50g
トウガラシ ……… 15g
ネギ ……… 3g

[調味料1]
塩 ……… 5g
味の素 ……… 3g
砂糖 ……… 3g
黒酢 ……… 50cc
タバスコ ……… 10g
マギーソース ……… 10g
 (なければ醤油で代用する)

[調味料2]
塩 ……… 3g

[調味料3]
味の素 ……… 2g
ごま油 ……… 10g
ラー油 ……… 25g
辣酸湯 ……… 300g
 (レシピ内で作製する)

[作り方]
1.水以外の全ての材料1と調味料1を鍋に入れ、強火で一瞬沸騰するまで加熱したらすぐに水を加える。更に加熱して沸騰させたら弱火で20分ほど煮込み、材料を漉しとって「辣酸湯」の完成。

2.材料2の鶏肉を鍋に入れ、材料2の水を冷たいまま加える。残りの材料2を全て加えたら強火で加熱して沸騰させ、沸騰したら弱火にして調味料2の塩を加える。20分ほど加熱して鶏肉にあらかた火が通ったら、火を止めて蓋をして鍋を手で触れるくらいの温度になるまで自然に冷ます。

3.材料3のタマネギを千切りにし、器の底に敷き詰めておく。材料2のトウガラシは長さ1cmのぶつ切りにする。ネギはみじん切りにする。

4.作り方2の鶏肉の足を切り離し、骨を抜いて厚さ1.5cmほどの薄さに切り分ける(→Point参照)。これを作り方3のタマネギの上にきれいに配置しておく。

5.作り方1で作った辣酸湯300ccに調味料3の味の素、ごま油、作り方3のトウガラシを混ぜ合わせ、作り方4の鶏肉の上にかける。更に上からラー油を振りかけ、みじん切りにしたネギを散らして完成。

Point!
レシピでは鶏のもも肉しか使っていません。残りの部位は別の料理に使うか、同じように骨を抜いて適当な大きさに切り、同じソースで食べましょう。

辣酸湯は他の四川料理にも多用されます。また数日冷蔵庫で寝かせておくと味が馴染んで更においしくなります。蓋のできる瓶などで保管しましょう。

鶏肉を煮込むときは香辛料と共に冷水から加熱するときれいに臭みが抜けます。また水が沸騰し始めのときに塩を加えて下味をつけると肉の中まで味が染みます。

ソースに少量のゼラチンを溶かし、冷めるとゼリー状に固めるようにして作る方法もあります。

鶏肉以外の肉類、例えば牛肉や鴨肉などを同じように調理しても美味です。

鶏肉やソースは通常火を通したものを冷やしてから調理します。冷性の料理です。


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