楚鄉雞│楚郷鶏

難易度: 調理時間:3時間
歴史有る湖北省の伝統料理『楚鄉雞│楚郷鶏』のレシピを紹介します。鶏肉だけを様々に加工して作る宴席料理で、漬け、煮込み、揚げ、蒸らし、最後に油かけとなんと5種類の技巧を用いて調理します。

料理名にある「楚」とは現代の湖南、湖北省周辺の地名を指す言葉で、古代よりこの地域に伝わる鶏料理であることを示しています。この料理の歴史はとても古く唐代以前に遡るといいます。唐末の有名な詩人孟浩然が残した《過故人莊》という詩がとても有名ですのでちょっと見てみましょう。

故人具雞黍 邀我至田家
綠樹村邊合 青山郭外斜
開軒面場圃 把酒話桑麻
待到重陽日 還來就菊花

意味は「
友人が宴会料理を準備して、私を田舎の家に招いて食べさせてくれた。
村は緑の木々が生い茂り、城外は青い山に包まれている。
窓を開ければ作業中の畑が見え、酒を持って桑や麻について話し合う。
重陽節(九月九日)になったら、またここを訪ねて今度は菊の花を観賞しよう。」
のような感じです。

非常に平易で分かりやすく素朴な詩なのですが、農村のすがすがしい空気やのどかな風景を良くあらわしています。高度な詩の技巧を駆使しているというわけでもなく、誰も見たことのない景色や事物を美しくあらわした内容でもなく、誰もが知る田舎の景色をそのまま言葉にしただけ、いわば料理で言う「原味」のような詩です。この詩は孟浩然の代表作とも言われるほど有名な詩で、多くの教材にも取り上げられています。なぜにこれほどまでに簡単な詩が名作とされるのか?ある学者は一切の装飾を取り払った「真」の景色を体感できるからだと言います。またある学者は友人宅の門を叩いてから次の面会を決めるまで、美しい田舎の風景に魅了されていく作者の素直な心情が読み取れるからだといいます。

この詩に登場する「雞黍(鶏きび飯)」の鶏肉料理が、今回紹介する「楚鄉雞│楚郷鶏」であるといわれています。太古からこの地域に伝わる宴席料理で、来客をもてなす時には必ず作られたと言います。もちろん現代のレシピとは違うでしょうが、皆さんもお客さんをもてなす時に作ってみてはいかがでしょうか?その人が芸術家だったら、あなたのもてなしを作品にして後世に残してくれるかもしれません。


[材料]
鶏肉 ……… 1500g
ネギ ……… 50g
ショウガ ……… 50g

[調味料]
酒 ……… 10g
塩 ……… 3g
胡椒 ……… 少々
砂糖 ……… 少々
味の素 ……… 2g
滷汁 ……… 400g
ごま油 ……… 25g
ピーナッツ油 ……… 200g

[作り方]
1.鶏肉を大きく八つに切り分け、酒、塩を全身にすり込み、薄切りにしたネギ、うす切りにしたショウガを全面に貼り付けて冷蔵庫で3時間寝かせて置く。

2.滷汁を沸騰させ、作り方1の鶏肉とネギ、ショウガと共に鍋に入れる。小火で加熱しながら滷汁が半分ほどになるまで煮込む。

3.熱したフライパンにピーナッツ油を入れ140度に熱した後、作り方2の鶏肉を入れて中火で10分ほど揚げる。火が通ったら油を切り、作り方2の滷汁の中に戻す。

4.ごま油、胡椒、砂糖を鶏肉を戻した作り方2の滷汁に加えて弱火で10分ほど蓋をして煮込む。

5.鶏肉を取り出し水気を切ったら包丁で食べやすい大きさに切り分けた後、器に盛りつける。

6.作り方3のピーナッツ油を200度まで熱し、おたま一すくい分くらいの量を作り方5で盛りつけた鶏肉の上からかけたら完成。

Point!
好みで最後に千切りにしたネギや、すりおろしたニンニクやショウガをそえましょう。

最後に油をかける調理は食卓の上で行うとお客さんが喜びますが、くれぐれもやけどに注意して下さい。

料理で使う『滷汁』は様々な種類があります。過去記事を参考にしてみてください。


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