麒麟象肚│長汀風豚モツ香肉詰め

難易度: 調理時間:3時間
福建・台湾地方の珍しい料理を続けます。普通の中国人はまず食べられない福建地方の伝統名物料理『麒麟象肚│長汀風豚モツ香肉詰め』のレシピです。

今回は『麒麟象肚│長汀風豚モツ香肉詰め』というちょっとグロテスクな見た目の料理で、『麒麟鑽象肚』とも呼ばれます。長汀は現在の福建省龍岩市長汀県のことで、唐代にまでさかのぼる歴史ある都市です。台北市の淡水河に沿って走る汀洲路の「汀洲」もこの地区にあります。住民のほとんどが客家で、「客家料理の故郷」の異名を取る地域でもあります。この料理もその意味では客家料理の一つに数えても良いでしょう。

この料理では普段は使わないある肉を使って作るので、日本で完全再現したいと思う人は希でしょう。まぁ、こういう料理もあるんだよということで紹介することにしました。日本でも手には入ると思いますが、この料理で使う肉は普通には売っていません。また調理がすこし忙しいので難易度は☆三つです。腕に自身がある人は羊肉を使って挑戦してみてください。レストランで食べると一品1万円を超えるような高級料理です。羊肉を使えば材料費2000円ほどで作れると思います。

料理名にある「麒麟」は龍や鳳凰にならぶ中国伝説の聖獣で、ご存知の方も多いことでしょう。ビール会社の商標としてもおなじみですね。あらゆる鳥の王とされる鳳凰に対して麒麟はあらゆる獣の王とされます。非常に穏やかな性質の聖獣とされ、あらゆる殺生を好まず、能力のあるものが仁政を敷くときに現れるとされる瑞獣の一種とされます。

孔子と非常につながりの深い生き物とされ、孔子誕生のときに現れては人々を驚かせたと言います。このことから儒教の象徴ともされ、また傑出した子供を麒麟児、または麟児と呼ぶようになりました。明、清代には諸侯や上位武官の「补服(制服のようなもの)」の正式な図案として採用されていました。

麒麟は現在も中華のあらゆる文化階層で広く崇拝を集めています。台湾の街中にも意外なところに麒麟の図案が隠れていたりして面白いですよ!

それではレシピです。


[材料]
イヌ肉 ……… 1500g(1匹分)
豚ガツ ……… 1個まるごと
キャベツ ……… 100g
ショウガ ……… 50g
八角 ……… 5g
豚骨スープ ……… 250cc
ネギ ……… 15g
ラード ……… 50g

[調味料]
砂糖 ……… 大さじ1/2
味の素 ……… 小さじ1/2
紹興酒 ……… 大さじ2
醤油 ……… 大さじ2


[作り方]
1.イヌ肉は毛や内臓を下処理し、可食部を0.3cmのミンチにしてから一度湯通ししてアクを抜いたら水気を切っておく。熱した鍋に適量のサラダ油(分量外)をひき、アクを抜いたイヌ肉を水分が抜けて白くなるまで弱火で炒める。(→Point参照)

2.ネギをみじん切りにする。ショウガをうす切りにする。

3.鍋にラードを熱し、作り方2のネギを揚げるようにして炒めてきつね色のチップを作り取り出しておく。同じ鍋に少量のラードを残し、砂糖を加熱して琥珀色のカラメルを作ったら、すぐに醤油と作り方1のイヌ肉を加えて全体が均一の色になるまで混ぜ合わせる。全体にカラメルが馴染んだら続けて、八角、作り方2のショウガ、先ほど揚げたネギチップ。豚骨スープを加え、よくかき混ぜながら加熱する。

4.作り方3の鍋を沸騰させてスープが半量ほどに減ったら、紹興酒と味の素を加えて混ぜ合わせる。鍋の中身を取り出し八角、ショウガを除き肉とスープを分けて冷ましておく。スープは漉して雑物を取り除いておく。

5.豚ガツをきれいに洗浄し、噴門、幽門の両口をたこ糸で縛るなどして閉じる。片側に包丁で切れ目を入れ、作り方4のイヌ肉を詰めて切り口はタケ串などで止める。これを耐熱の容器に乗せ、上から作り方4で分けていたスープをかけ、ラップをして蒸し器に入れる。容器ごと中火で2時間加熱して完全に火を通す。

6.器に千切りにしたキャベツを敷き詰め、上に象の形に見えるよう豚ガツを乗せる。一緒に加熱したスープをかけて完成。

Point!
イヌ肉は独特の臭みがあるため、一度カラッカラに乾くように水分を抜いて臭みを抜きます。但し焦がさないように注意しましょう。

豚骨スープには塩気が効いているので調理に塩は使いません。スープを作るときに塩の量を調整してください。

いわゆる「造形料理」といわれるもので、出来上がりの形象が料理の善し悪しを決めます。豚ガツに入れる切り口は可能な限り小さく、蒸すときも中火でじっくり、取り出すときも細心の注意を払い、器の盛り付けも美しく仕上げてください。

厳密には使うイヌ肉は子犬を使うという決まりがあります。手に入るものなら使ってください。

ラム肉で代用するのが最も現実的です。出来上がりの味はそれほど変わらないと思うので、挑戦する方はラム肉(またはマトン肉)で調理してみましょう。

レシピの原典には肉の処理の仕方も詳しく書かれていますが、あまり現実的ではないのでレシピでは割愛しました。処理済の肉を使ってください。

キャベツの代わりに季節の野菜を使ってもかまいません。キュウリやニンジンは飾り包丁で美しく仕上げるのをお忘れなく。


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