難易度:☆ 調理時間:1時間以内
豚肉とハトムギ(薏仁)を使った一風変わった料理、『玉潔清心│豚ハツとハトムギの中華風煮込み』のレシピを紹介します。塩水で材料を煮込んで作るだけの簡単料理ですが、その分アレンジの幅が非常に広く、スープで生薬を煎じることで多くの薬膳に派生が可能な優れたレシピであります。
料理名に「清」の字が入っているので、これを機会に中国最後の王朝である「清朝」についてまとめてみます。
清王朝は正式な国号を大清といいます。後期には大清帝国などとも称しますが、実は「清」と名乗ることになった正確な由来は明らかになっていません。いろんな説がありますが、いまだ論争に決着が付いていないのです。もともと女真と呼ばれていた満州族が立てた国であり、異民族が漢族を支配した征服王朝の一つです。その昔女真族は中国北部を支配する「金(1115~1234)」という王朝を建てたことがあるのですが、これが後の清国に繋がります。
女真の王ヌルハチは1616年に明から独立して現在の満州の地で後金という王朝を建てます。明と小競り合いを起こしながらも後金は少しずつ領土を広げていき、ヌルハチの子ホンタイジが1636年に国号を清と変えて大清皇帝を名乗ります。このとき女真を「満州」と呼ぶことも決められました。明朝の住民支配も限界に来ていたのでしょう、1644年に李自成という人物が農民を指揮して明の王宮のあった北京を落とし、明の皇帝は自殺。明はあっけなく滅びてしまいます。(このとき逃げ延びた明王家の一族が台湾に渡り王朝を存続させようとするのですが、それはまた別の話…。)李自成は「順」という王朝を打ち立てるのですが、清は明を救うという大義名分を掲げて北京に入城、順はたった40日で北京を明け渡し、清はそのまま北京に居座って中華の支配を始めました。1644年清王朝の始まりです。
圧倒的多数の漢族に対してごく少数派に留まった満州族の支配はなかなか一筋縄ではいかないのですが、「明皇帝の仇討ち」を大義名分に掲げていた清はそれほど大きな混乱を引き起こすことはありませんでした。基本的に明の制度を踏襲した清は、ホンタイジの子、順治帝の親漢人政策なども相まって割と順調に支配を進めていきました。
そして順治帝から順に3代、康熙帝・雍正帝・乾隆帝の3皇帝の時代に清朝は最盛期を迎えます。中国史に明るくない人でも、この3皇帝の名前くらいは聞いたことがあるかもしれません。それほど有名な皇帝たちです。特に康煕帝は唐の太宋と共に"中国史上"最高の皇帝とも称され、死後に送られた諡号は「聖祖」。歴代中国皇帝のうちたった二人しか持たない「聖」の字と、普通は王朝を開いた人にしか送られない「祖」の字を四代目であるにも関わらず送られたというとてつもない名君です。
康熙帝の時代。政治面では明の残党が残っていた台湾を完全に支配化に入れ福建省に組み込み、ロシアと条約を結び、チベットを支配し、モンゴルを支配し、現在の中国の版図をほぼ確定させました。文化面ではそれはもう語りきれないほどの功績を残しましたが、特に現在ほとんどすべての漢字字典の規範となっている《康煕字典》の編纂は特筆すべきでしょう。皇帝自身が倹約に努めて国家財政の安定を図り、官僚の汚職を厳しく罰するなどの政策もとりました。もちろん後代の研究による批判も数多くあるのですが、何せ文化的に残した功績があまりにも大きすぎるため、ほとんどの中国人は最高の皇帝という評価を崩しません。台北の故宮博物館を訪れることがあれば、彼の時代に残された宝物をそれこそ浴びるほど堪能できます。
その後の雍正帝は軍備を強化、官僚の腐敗を一層厳しく監視して国内の安定を強化し、乾隆帝(歴代史上最長の在位期間を持つ皇帝です)は食料の安定供給、衛生状況の改善、医療の整備などを行って中国各地の人口爆発を引き起こします。
乾隆帝の退位が1799年。乾隆帝の死後、怒涛の19世紀が幕を開けます。清国は鎖国していましたが、各国の支援を受けた軍閥が各地で暗躍し始めます。そして1800年頃から密輸入され始めたアヘン。これにより清の国家財政は悪化の一途を辿り、国力は徐々に低下。…そしてあるときを境に西洋列強の収奪にあうことになってしまうのです。
ここから先は日本の近代史とも密接にかかわってくる部分ですが、詳しくはまた別の機会に。そして1912年清朝滅亡です。
というわけでレシピです。ふー!当ブログでは料理と一緒に歴史も学べます(笑)。
[材料]
豚ハツ ……… 1個
薏苡仁(ハトムギ) ……… 20g
ショウガ ……… 3g
ネギ ……… 適量
[調味料]
酒 ……… 大さじ1
塩 ……… 小さじ1
水 ……… 1000cc
[作り方]
1.豚ハツを半分に切り、沸騰したお湯で1分ほど茹でてアクを抜いておく。ショウガを包丁の腹で叩いて潰しておく。ネギを千切りにする。
2.鍋に作り方1の豚ハツ、ショウガ、薏苡仁(ハトムギ)と、酒、塩、水を加え、中火で加熱して沸騰させる。沸騰したら弱火で30分ほど煮込み、ショウガを除いて更に30分ほど煮込む。
3.豚ハツを取り出して荒熱を取ったら薄切りにし、器に円状に盛り付ける。中央に薏苡仁(ハトムギ)を盛り付け、少量のスープを掛ける。最後に千切りにしたネギを盛り付けて完成。
Point!
豚ハツは必ず半分に切り、中の血をきれいに洗い流してから煮込みましょう。
水の代わりに中華スープを使ってもよいでしょう。また和風ダシと砂糖、醤油、みりんなどで煮込んで作っても美味です。
※ハトムギには子宮収縮作用があります。過剰摂取は流産に繋がる恐れがありますので、妊婦さんは食べないようにしましょう。
他の薬材を使って煮込む場合はハトムギとは別に綿袋などに入れて煮込み、ショウガと一緒に取りだしましょう。まずは単味で、慣れてきたら徐々にいろんな薬材を組み合わせて作ってみましょう。
玉潔清心│豚ハツとハトムギの中華風煮込み
●
2015年4月14日火曜日
登録:
コメントの投稿
(
Atom
)
Search this blog
シリーズ
レシピ電子書籍紹介
About this blog
人気の投稿
-
2016年8月31日 クジの引き方と解説のお願いについて追記 台湾旅行時の楽しみの一つといえば現地の有名な寺廟をめぐってのおみくじ引き。台北市の 龍山寺 や行天宮は人気の観光スポットの一つです。いろいろな神様にお参りして、願いを届けた後はその願いに対する神様からのお告げ、お...
-
本日はソースから作る『三杯醬、三杯雞│三杯ソース、三杯鶏』のレシピを紹介します。数ある「三杯」料理の基本となる三杯ソースを作り置きしていれば、いつでも、どんな材料でも、「三杯○○」料理が作れてしまいます。 レシピ前半では『三杯醬│三杯ソース』を、後半ではそのソースを使った『三...
-
本日のレシピは『大腸包小腸』です。ついにこの料理を紹介するときがやってきました(笑)。 漢字の意味をそのまま受け取ると非常にグロテスクな料理のようですね。見たことも食べたこともない人はどんな料理を想像しましたか?あえてその形を形容するなら、中華風ホットドックといえば分かりやす...
-
難易度:☆ 調理時間:30分以内 台湾伝統のゼリー状の食材『粉粿│キャッサバゼリー』のレシピを紹介します。『豆花』や各種ドリンクなど様々なデザートに配合される「Q感」が特徴の料理です。 台湾旅行に慣れてくると道端の店で適当に注文して食べるデザートが恋しくなってくるもの。今回...
-
観世音霊籤百首 第六十六首 路險馬行人去遠 失群羊困虎相當 危灘船過風翻浪 春暮花殘天降霜 意訳: 路險馬行人去遠 馬とも遠く離れ危険な道を行く。 失群羊困虎相當 群れから逸れた羊が狼に出会うかのようだ。 危灘船過風翻浪 船が嵐の中を進むよう...
-
観世音霊籤百首 第八十一首 中中 庭前葉落暮秋時 行客奔程勢若飛 謝得天公輕着力 順風相送寶船歸 意訳: 庭前葉落暮秋時 晩秋落葉の時。 行客奔程勢若飛 旅人はきびすを返して故郷に戻る。 謝得天公輕着力 天に感謝すれば体が軽くなる。 ...
-
観世音霊籤百首 第一首 上上 天開地闢結良緣 日吉時良萬事全 若得此籤非小可 人行中正帝王宣 意訳: 天開地闢結良緣 これは天を開き地を闢くよい時期である。 日吉時良萬事全 吉祥の時分であり、各種の条件は全て整っている。 若得此籤非小可 この籤を...
-
観世音霊籤百首 第三十六首 上上 目前病訟不須憂 實地資財儘可求 恰好繫猿今脫鎖 得歸仙洞去來遊 意訳: 目前病訟不須憂 目の前の病気、訴訟は心配することはない。 實地資財儘可求 今できることだけをやるだけでいい。 恰好繫猿今脫鎖 手足の鎖をは...
-
観世音霊籤百首 第七十一首 上上 誰知愛寵遇強徒 女子當年嫁二夫 自是一弓施兩箭 騎龍跨馬上安居 意訳: 誰知愛寵遇強徒 自分のものが他人に奪われてしまう。 女子當年嫁二夫 この場合両方に同じように接するのがよい。 自是一弓施兩箭 一度に...
-
観世音霊籤百首 第五十六首 中平 澗小石粗流水響 力勞撐駕恐損傷 路須指出前江去 風靜潮平儘不妨 意訳: 澗小石粗流水響 状況は時につまづき、些事が流れを止める。 力勞撐駕恐損傷 強引に押し通ろうとしても傷つくだけだ。 路須指出前江去 その道に...
材料で探す
調理方法で探す
Powered by Blogger.
0 コメント :
コメントを投稿