本日のレシピは『酸柑茶│客家伝統陳皮茶』という、台湾客家伝統のお茶の作り方です。
申し訳ないので最初に断っておきますが、この料理というかお茶はおそらく日本どころか台湾ですら専門の業者さんでなければ作れません。非常に手間がかかるのもそうですが、レシピと製法が独自で完全な再現が不可能なためです。
文末に紹介している非常に簡易版のレシピですが、あくまで似て非なるものです。
というわけで今日はレシピよりも記事のほうがメインです。
酸柑茶というのは台湾の桃園、苗栗、新竹などの客家の人々が製造する特殊なお茶で、簡単に言えば蜜柑の中にお茶を入れて蒸したもの。形態に関しては下の写真を参考にしてください。
その昔「陳皮」という生薬を作っていた客家の一族が、実の部分を捨ててしまうのはもったいないと考え、手近にあった安い茶葉とまぜあわせて余ったミカンの皮に詰めて蒸して保存しておいたのが最初期(100年以上前)の「酸柑茶」だといわれています。
それが質素倹約を旨とする客家の人々の心を打ち、台湾客家の人々の祭壇の脇に飾られるようになりました。さらに台湾で茶業を営む客家の人々が製法を改良し、現在の形になったと伝わっています。 福建省あたりだと台湾からの輸入品がごく少量出回っているようですが、台湾以外ではほとんど流通していない特殊なお茶です。
現在は「虎頭柑」という種類のミカンをつかい、プーアル茶の茶葉を使って作ります。果肉をくりぬいて果汁と茶葉、紫蘇、青草、薄荷と混ぜ合わせ、皮に戻して圧縮、蒸してまた圧縮、乾燥するという工程を6-9度も繰り返して作り、ものすごく手間と時間がかかります。出来上がってからも天気のいい日は天日干しに、雨が降れば火の側で乾かすのを数ヶ月続けるのです。
一昔前は作るのに半年以上もかかったそうで、今でも製造には3ヶ月以上もの期間がかかります。しかも全て手作業、その労力は大変なものがあります。簡単に再現できない理由がお分かりいただけたでしょうか? というか、日本で作るのは無理ですねこれ。
その昔台湾の苗栗地区には数多くの『酸柑茶』の工場があったそうですが、今ではわずかに8工場が残るのみといいます。これからに伝えて欲しい古きよき台湾文化の一つです。
「酸柑茶」は台湾各地の老街や土産物屋で買うことができますが、台北市内で探すのは難しいかもしれません。旧正月前はスーパーでも売られていることがあるので、見かけたら購入して見ましょう。まさに台湾特産と言ってもいい非常に珍しいお茶で、客家文化を象徴するようなものですので、珍しい海外の製品に興味がある方には最適なお土産になることでしょう。
ちなみに乾燥した場所においておけば10年でも20年でも保管ができ、しかも中身はプーアル茶。時間が発てば経つほど価値が上がります。苗栗には80年以上前の「酸柑茶」が現存しており、値段がつけられないほどの価値があるそうです。
味は非常にさわやかで、鼻に抜けるような酸味と香りが特徴。鼻づまりやのぼせ、暑気あたりなどに効果があるそうです。どこか薬臭いので、若い人には好まれないかもしれませんが、歴史と製法を知れば一度は試したいと思う人もいるのではないでしょうか。
以下のレシピは何とか簡単に再現しようと四苦八苦して考案したものですが、本物とは味の深みも製法もまるっきり異なります。ぜひ台湾を訪れた時に本物を手にとってその歴史と共に、実物を味わっていただきたいと思います。
たしか一個300-500元くらいだったはずです。興味がある方はメッセージいただければ、買ってきて送ります。
難易度:
☆☆
調理時間:
数日
材料:
陳皮(干したミカンの皮) ……… 20g
プーアル葉 ……… 30g
紫蘇の葉 ……… 3g
薄荷葉(ペパーミント) ……… 3g
作り方:
1.陳皮、プーアル茶葉、紫蘇の葉、薄荷葉をボウルなどで良くほぐしながら混ぜ合わせ、茶碗などに入れて60-70度ほどの低温で1時間蒸す。
2.クッキーやカップケーキの型などに茶葉を押し込み、上から重石を載せて圧縮する。十分固まったら、型からはずし天気がいいなら天日に晒して乾燥させる。天気が悪ければ日陰で乾燥させる。
3.十分乾燥したら適当な大きさに切り分け、湯飲みにいれお湯を注いで完成。
Point:
作り方1と2の蒸して圧縮、乾燥させる工程を数回繰り返せばどんどん熟成が進みますが、そこまでするくらいなら、台湾を訪れて購入した方が安上がりです。
超簡易版として、プーアル茶に同量の陳皮と一つまみずつペパーミントと紫蘇の葉をくわえてお茶を飲めば雰囲気だけは味わえます。
お茶にする時はプーアル茶の淹れ方に準じてください。
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