冬虫夏草(とうちゅうかそう、Dōnɡ Chónɡ Xià Cǎo)
英名
Chinese Caterpillar Fungus
説明
薬物としての最初の記載は清代の《本草從新》。「補肺腎。 甘平保肺。益腎止血。化痰已勞嗽。四川嘉定府所產者最佳。雲南貴州所出者次之。冬在土中。身活如老蠶。有毛能動。至夏則毛出土上。連身俱化為草。若不取。至冬則複化為蟲。」と記載されている。ただし中国の歴史に登場するのは更に遡り、7世紀唐代にチベットに渡って仏典を持ち帰った文成公主がチベット語で出版した《月王薬診》、《藏本草》には既に記載がある。
非常に高価な生薬の一つであり、人工栽培の研究が進められているが未だ成功していない。大部分が標高4000メートル以上の水はけの良い高地で採取される。清王朝の特に初期の皇帝たちは冬虫夏草を常用していたといわれ、歴代王朝の皇帝たちと比べて長命なものが多いのは冬虫夏草の効果だとも言われる。
起源
始載は《本草從新》。バッカクキン科 Cordiceps sinensis (Berk.) Sacc. がコウモリガ科昆虫の幼虫に寄生し発芽したものを子実体を寄生幼虫と共に乾燥させたもの。
別名
虫草、冬虫草、夏草冬虫など
性味
甘、温
《本草從新》:“甘、平”
《本草綱目拾遺・巻五》引《薬性論》:“味甘、性温。”
《青海薬材》:“味甘酸、性平、気香。”
帰経
帰腎、肺経。
《本草再新》:“入肺、腎二経。”
中医における効能
益腎補肺、止血化痰など
配合応用
- 冬虫夏草は、腎虚陽衰、精髄不足が腰膝痠痛、軟弱無力、夢遺滑精、陽痿早泄、耳鳴健忘及び神思恍惚に至ったものを治す。
- 冬虫夏草は補腎助陽の作用がある。
- 単品で酒に浸して用いる。
- 補精血、壮陽気、強筋健骨などの効能を持つ杜仲、川断、鹿角膠、亀板膠などと配合し薬効を増強して用いる。
- 冬虫夏草は、肺腎両虚で虚喘久咳或いは労嗽痰血のものを治す。
- 冬虫夏草は益腎補肺、止血化痰の作用がある。
- 単独で用いる。
- 薬性が平和であるので肺腎両虚で陰虚、気虚のものに均しく用いることができる。肺腎両虚で労嗽痰血のものには、養陰清肺、止血化痰の作用を持つ、例えば蛤蚧、麦門冬、阿膠、百合、川貝などを配合して用いる。
- 冬虫夏草は、正気在内、邪不可干、腠理固密、自汗必止の作用がある。
- 冬虫夏草は補腎固本、補肺実衛の作用がある。
- 病後の体力回復或いは自汗畏寒などの症状に、鶏肉、鴨肉、牛肉、羊肉などと共に食用する。
- 燉老鴨法
用夏草冬蟲三五枚、老雄鴨一隻、去肚雜、將鴨頭劈開、納藥於中、仍以線紮好 醬油酒如常蒸爛食之。其藥氣能從頭中直貫鴨全身、無不透浹。《本草綱目拾遺・巻五》
成分
タンパク質25%、脂肪8%。
Cordycepic acid, D-mannitol, nicotinic amide, ergosterol, uracil, adenine, adenine nucleoside, ergosterolperoxide, cholesteryl palmitateなど。
水溶性多糖類。
元素類:P, Na, Ge, Ca, Mg, Al, Mn, Fe, Cu, Zn, B, Niなど。
抗がん作用
冬虫夏草に含まれる cordycepic acid, ergosterol, ergosterolperoxide には抗がん作用が見つかっている。
冬虫夏草により作った“至霊カプセル”を一日3回、一回1.5gを2ヶ月服用し、悪性腫瘍の補助療法として30例に用いたたところ、93%の患者の臨床症状が改善した。これは免疫機能の改善に関連していると考えられている。
ラット白血病L5187細胞の核酸合成を阻害する。
免疫機能を強化する。
などの抗がん作用がある。
臨床では肺気不足、肺腎両虚、正気衰弱のものの肺がん、咽喉がんなどに用いる。
- 肺がん
冬虫夏草10g、麦門冬15g、石斛15g、生地黄15gを茶にして飲む。《中薬新用》
冬虫夏草、旱蓬草、麦門冬、党参各15g、百合、玉竹、瓜蔞、夏枯草各20g、北沙参、玄参、半枝蓮、薏苡仁、蒲公英、白花蛇舌草、魚腥草、藕節、猫爪草、黄蓍、茅根、鼈甲、生牡蛎各30g、川貝10gを煎じて服用する。《抗癌植物薬及其験方》
人参100g、冬虫夏草60gを粉末にして毎回10gを服用する。《河西中医薬、1998、(4)》 - 咽喉がん
太子参、生地黄、女貞子各15g、沙参、丹皮、旱蓬草、白芍各10g、甘草、冬虫夏草、川貝各5g、木蝴蝶3g、青果適量(佐料)を朝夕各1剤、2時間ごとに少量ずつ服用する。《抗癌良方》
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