青黛(せいたい、Qīnɡ Dài)
英名
Natural indigo
説明
最初の記載は唐代の《藥性論》で「君、味甘、平。能解小兒疳熱、消瘦、殺蟲。」とある。そのほか多くの本草書にも解毒、殺虫の作用をもつ薬として記載されており、時代が下がるにつれて涼血、清肺などの効能が追記されてきた。古くから福建省のものが最高級品とされ「建青黛」と呼ばれる。
もともと中国医学で白血病の薬として頻繁に用いられていた「当帰龍薈丸」 の生薬をスクリーニングする過程で青黛の抗がん作用が見つかり、さらに有効成分を分離する過程で Indirubin という抗がん作用を持つ成分が発見された。(当帰龍薈丸は後代の処方名、原典では當歸龍膽丸と記載されている。)
起源
青黛の始載は《薬性論》。アブラナ科ホソバタイセイ Isatis tinctoria L. (菘藍)、タイセイ Isatis indigotica Fort. (I. tinctoriaのシノニムか?) (草大青)、キツネゴマ科リュウキュウアイ Strobilanthes cusia (Nees) Kuntze (馬藍)、タデ科アイ Persicaria tinctoria (Aiton) Spach (蓼藍)、マメ科ナンバンアイ Indigofera tinctoria L. (木藍)の葉などを加工し抽出した色素を乾燥させたもの。
別名
靛花、靛沫花
性味
鹹、寒
《薬性本草》:“味甘、平。”
《本草再新》:“味苦、性寒、無毒。”
帰経
《雷公炮製薬性解》:“入肝、脾二経。”
《本草便読》:“入肝、又能入肺、胃。”
中医における効能
清熱解毒、涼血散腫
配合応用
- 青黛は肝火を瀉し、肺熱を清め熱毒を解く。
- 肝熱小児驚風抽搐を治す。
- 牛黄、釣藤などを配して、例えば涼驚丸《小児薬証直訣・巻下》。
- 涼驚丸
治驚疳。
草龍膽 防風 青黛(各三錢) 鉤藤(二錢) 黃連(五錢) 牛黃 麝香 龍腦(各一字)面糊丸粟米大、每服三五丸、金銀花湯下。 - 龍胆草、蘆薈、黄連などを配し瀉肝胆実火を瀉す力を増強させた当帰龍薈丸《宣明論方》。
- 當歸龍膽丸
治腎水陰虛、風熱蘊積、時發驚悸、筋惕搐搦、神志不寧、營衛壅滯、頭目昏眩、肌肉螈、胸膈痞塞、咽嗌不利、腸胃燥澀、小便溺、筋脈拘奇、(奇猶急也、重也。)肢體痿弱、喑風癇病、小兒急慢驚風。常服宣通血氣、調順陰陽、病無再作。
當歸(焙) 龍膽草 大梔子 黃連 黃柏 黃芩(各一兩) 大黃 蘆薈 青黛(各半兩) 木香(一分) 麝香(半錢、另研)
上為末、煉蜜和丸、如小豆大、小兒如麻子大、生薑湯下、每服二十丸。忌發熱諸物。兼服防風通聖散。 《宣明論方》
- 肺熱咳嗽気急痰稠を治す。
- 肝火灼肺の証には、海蛤殻を配合した青蛤丸《衞生鴻門・巻一》、散剤としては黛蛤散。
- 青蛤散
蛤粉(一兩) 青黛(三錢) 石膏(八錢) 輕粉(五錢) 黃柏(五錢)為末,香油合塊,涼水調敷。治一切黃水瘡、又治鼻爛。《諸方第一》。 - 瓜蔞仁、貝母、浮海石を配合した青黛海石丸《症因脈治・巻二》。
- 青黛海石丸
治肺经咳嗽有热痰者
青黛、海石、瓜蔞仁、川貝母。
- 湿疹及び口瘡を治す。多くは外用される。
- 水で溶いて単独で用いる。
- 黄柏などと配合し、水で溶いて凍らせたり、油で溶いて患部に塗って用いる。
- 肝熱小児驚風抽搐を治す。
- 涼血散腫及び清熱解毒の力を利用する。
- 熱毒発斑及び熱迫血溢の吐血、喀血、衂血を治す。
- 発斑には石膏、生地黄、升麻などを配合した青黛石膏湯《重訂通俗傷寒論》。
- 青黛石膏湯
妊娠傷寒、熱郁陽明、熱極而發紫黑斑、脈洪數者。
青黛4.5g 鮮生地60g(搗汁) 生石膏24g 升麻2g 黃芩6g 焦栀子9g 蔥頭3枚。
水煎、溫服。 - 熱証出血には柏葉、白茅などの涼血止血薬を配合する。
- 散腫及び解毒作用を以って痄腮腫及び熱毒瘡癰を治す。外用及び内服される。
- 単独で用いる。
- 玄参、銀花、連翹などを配合して用いる。
- 熱毒発斑及び熱迫血溢の吐血、喀血、衂血を治す。
成分
Indirubin, indigo, isoindigo, N-phenyl-2-naphthylamine, β-sitosterol, laccerol, indican, isatan B, tryptan thrine, qingdainone, isatin, n-nonacosaneなど
抗がん作用
有効成分は indirubin であり、化学的修飾をされた様々な化合物が中-強等度の抗がん作用を示す。Indirubin はがん細胞の核酸代謝を抑制することで抗がん作用を発揮する。
またIndirubin 誘導体はグリコーゲンシンセターゼキナーゼ 3β、サイクリン依存性キナーゼCdk1 および Cdk5などを強力に阻害する。
Indirubin 及びその誘導体は慢性粒細胞性白血病に対して顕著な有効率を示す。
青黛はT細胞を増加させる。
臨床では血熱毒盛の白血病、肝臓がん、胃がん、食道がんなどに常用される。
- 慢性骨髄性白血病
青黛粉、一日3回、毎回0.9-2.5g、或いは青黛錠一日3回、毎回2-4gを服用する。《抗癌良方》
Indirubin製剤、一日3-4回、毎回4-6錠(成分量不明)を服用する。《中薬新用》 - 急性白血病
青黛40g、天花粉30g、蘆薈20g、牛黄10gを合わせて粉末にする。一日2回、一回1.5gを服用する。《黒竜江中医学院付属医院方》 - 肝臓がん
青黛、牛黄各12g、紫金錠6g、野菊花60gを合わせて粉末にする。一日3回、毎回3gを服用する。《癌症患者就医康復指南》 - 食道がん
青黛4.5g、蛤粉30g、柿霜15g、硇沙6g、硼砂9g、白糖60gを合わせて粉末にする。一日3回、毎回0.9-1.5g服用する。《抗癌本草》 - 胃がんなど
青黛3g、硼砂5g、沈香6gをあわせて粉末にする。白馬尿500g、白蘿蔔500gの汁、生姜250gの汁とあわせて鍋で煮込み軟膏を作る。一日3回、毎回軟膏小さじ3と粉末0.21gを白湯で服用する。《抗癌中草薬大辞典》
このほかにも抗菌作用、肝保護作用、抗潰瘍作用、消炎鎮痛作用などが報告されている。
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