本日は台湾の年越しには欠かせない料理『佛跳牆│フォーティァオチャン、ぶっとびスープ』のレシピを紹介します。一度食べたことがある人はご存知でしょうが、至高とも言える濃厚な旨味を持った料理です。
『佛跳牆』はもともと福建料理の名菜で、伝説によると清光緒年間に開発されたとされています。もともと福州の銀局で働いていた公務員が、按察使である周蓮という人をもてなすために作った料理だといわれています。(サラリと書いていますが、いわゆる接待、賄賂ですね…。)
もともとは鶏、鴨、豚肉など10数種類の材料を紹興酒で煮込んだ料理で、一口食べた周蓮はその旨さに言葉を失い、料理名を尋ねました。主催者は「吉祥如意、福寿双全」の意味をこめて『福寿全』という料理であると説明しました。その後周蓮の専属料理人が味を改良し、次の宴会でこの『福寿全』を提供したところ客の全員が絶賛。宴客の中に居た詩人が即興で「壜啓葷香飘四邻、佛聞弃禅跳墙来」という詩を詠み皆を感嘆させます。
中国語福建方言では『福寿全』と『佛跳牆』の発音が似ており、その後『佛跳牆』の表記が定着したのだと言います。ちなみに友人にお願いして福建省の方言と近い台湾語で『福寿全』と『佛跳牆』を読んでもらいましたが…『福寿全(ホッシゥヅァン)』と『佛跳牆(フッティァオチウ)』…微妙に似ているといえば似ているような…。まぁ、福建語は地方差が激しいので台湾語とは異なる系統の福建方言ではもっと似ているのかも知れません。
別の説も伝わっているので紹介しておきます。清朝時代にあるいて全国を旅をしていたある学者は、各地で食べた食材を酒に浸け陶器の器に保管していました。旅の終着地である福州に到着した学者がある寺のそばでこの酒浸けの食材を火にくべて煮込み始めたところ、ある修行中の僧侶がにおいにつられてふらふらと寺から出てきました。もちろん修行中の僧侶はこの料理を食べることはできませんでしたが、学者に同行していた友人の詩人がこれを評して「仏僧も匂いに釣られて出てくる」という意味の詩を読み、この料理に『佛跳牆』という名前がついたそうです。
ちなみに英語では『Buddha Jumps Over the Wall』と呼びます。こうやって見るとすごい名前ですね…。
その後福建からの移民により台湾にも伝わり、名菜として多くの観光客の舌を楽しませているのはご存知の通り。台湾初回訪問時に食べるのは難しいかもしれませんが、何度も訪れるなら一度は口にしておきたい絶品料理です。ちなみに一番手軽に味わうにはスーパーで冷凍のものを買ってきて、ホテルで暖めてもらうといいでしょう(笑)。
前に紹介した『佛跳牆』はかなり本格的なもので、おそらく再現できた人はほとんどいないと思います。今回紹介する『佛跳牆』のレシピは材料をぐっと簡単にして日本でも作りやすいようにアレンジしています。簡易版とはいえ本物に負けない濃厚な旨味を楽しめる料理で、時間と気力がある方はぜひ挑戦していただきたいと思います。簡易版とはいえかなりの根気が必要なので、気合を入れて作ってくださいね!
レシピ通りに作ると一家族分はゆうに作れてしまいます。食べる人の数に合わせて量を調節してください。
[材料]
白菜 ……… 1個
豚モツ ……… 200g
サトイモ ……… 150g
骨付き豚バラ肉 ……… 600g
ウズラの卵 ……… 20個
甘栗 ……… 150g
干しシイタケ ……… 10個
干し魚皮 ……… 200g
(エイヒレやフグヒレなどを用いてもよい)
タケノコ ……… 200g
つくね ……… 200g
ニンジン ……… 50g
アワビの缶詰 ……… 1缶
干し貝柱(大) ……… 5個
豚足 ……… 3本
フカヒレ ……… 50g
(手に入らなければなくてもよい)
[調味料]
チキンスープ ……… 1200cc
(鶏肉を煮込んで自作してもよい)
酒 ……… 大さじ2
[作り方]
1.豚モツは塩で揉んでぬめりを取り、沸騰したお湯で茹でて火を通してから食べやすい大きさに切っておく。骨付き豚バラ肉は一口サイズに切り、片栗粉をまぶして油で揚げて火を通しておく。
2.白菜は芯を抜いて食べやすい大きさに切り、沸騰したお湯にくぐらせて軽く火を通しておく。ニンジンは飾り包丁を入れ、薄切りにしておく。干し魚皮は食べやすい大きさに、タケノコは千切りにし、茹でて火を通しておく。
3.ウズラの卵は茹でて火を通して皮を剥き、甘栗と一緒にきつね色になるまで油で揚げておく。
4.干しシイタケを水で戻し、表面に十字に包丁を入れておく。
5.干し貝柱は蒸し器で蒸し、柔らかくなったら繊維をほぐしておく。
6.蒸し器に入るサイズのティーポット(→Point参照)を準備し、底に白菜を敷く。その上に豚バラ肉、サトイモ、豚足、ウズラの卵、タケノコ、魚皮、シイタケ、甘栗、ニンジン、アワビ、フカヒレ、貝柱をのせ、調味料を混ぜ合わせたスープを一杯になるまで注ぐ。
7.作り方6のティーポットを蒸し器に入れ、中火で2時間ほど蒸して完成。
Point!
本来は佛跳牆盅という専用の器を使います。小型の壷のようなものですが、日本の家庭にはまず置いていないと思うので、大きさの似ているティーポットで代用します。取り出すときには注意してください。
材料の下ごしらえがかなり面倒くさいと思いますが、それぞれ一品料理だと思ってしっかりと調理してください。特に揚げ物は絶対に焦がさないように。
本物の『佛跳牆』のチキンスープは、鶏肉を5-6時間も煮込んで作ります。より本格的に再現したい方は以前の記事を参考にしてください。
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