2013年12月25日水曜日

【抗がん漢方】莪朮 がじゅつ Ezhu

莪朮 (がじゅつ、É Zhú)



英名
Zedoary, white turmeric

説明
最初の記載は《薬性本草》で蓬莪茂の名で「治女子血氣心痛、破痃癖冷氣、以酒醋摩服、效」と記載されている。日本の薬局方にも記載されている薬物で、古くより血液の流れが悪いことで引き起こされる数々の病に用いられてきた。特に婦人科方面で常用される。

中国医学以外でもインド、タイなど広範囲の伝統医学で常用される生薬で各国で研究が進められている。

中国では莪朮の注射剤を使った多くの抗がん臨床試験が行われており、数多くのがんに効果があることが分かっている。成分に含まれるセキステルペン類や免疫増強作用などが複合して抗がん作用を発揮すると考えられている。

起源
莪朮の始載は《薬性本草》。ショウガ科ガジュツ Curcuma zedaria (Berg.) Rosc. の根茎を乾燥させたもの。他にもショウガ科Curcuma aromatica Salisb. (ハルウコン)、 Curcuma kwangsiensis S. Lee et C. F. Liang (広西莪朮)の根茎を乾燥させたものもこう呼ぶことがある。

別名
蓬莪朮、蓬莪荗、文朮、醋莪朮など

性味
辛、苦、温
《開宝本草》:“味苦、辛、温、無毒。”
《医学啓源・巻之下・用薬備旨》:“味苦、平。”

帰経
帰肝、脾経。
《雷公炮製薬性解》:“入肺、脾二経。”
《本草彙言》:“入足厥陰肝経。”

中医における効能
破血去瘀、行気止痛

配合応用
  1. 莪朮には強力な破血去瘀作用があり、その効能は三稜に似ている。
    1. 気滞血瘀が長引き重症化したものに用いる。
      • 瘀血内阻が衝脈不通し経閉腹痛があるものには、三稜、川芎、牛膝などと配合して用いる。
      • 瘀阻が長引き、癥積したものには削堅消癥の効果がある、例えば鼈甲、丹参、三稜などと配合して用いる。
    1. 莪朮には滞気を導き食積を消し、また止痛作用がある。
      1. 脾運失健、宿食不化があって、脾胃気を失調し、気滞が脘腹張痛に至るものを治す。
        • 莪朮の行気消積の力は強力で、食積気滞脘腹張痛を治す。例えば三稜、木香、枳実などと配合して用いる。
        • 脾虚不運、脘腹張痛の証には、健脾補気の、例えば丹参、白朮などと配合して用いる。

    成分
    莪朮の揮発油類:curzerenone, borneol, α-pinene, β-pinene, camphene, limonene, 1, 8-cineole, terpinene, isoborneol, caryophyllene, curcumene, caryophyllene epoxide, turmerone, arturmerone, curdione, curcurmenol, isocurcumenolm difurocumenone, aerugi-diol, isofuranodiene, furanodienone, dehydrocurdione, curcumenone, 13-hydroxygermacroneなど。

    抗がん作用
    抗がん作用の本体は精油成分に含まれるセキステルペン類、特に curdione, curcurmenol, aerugi-diol などであるといわれている。
    マウスの白血病L615、及び腹水型肝がん細胞ECAなどの成長を抑制し、破壊する。
    マウスの肉腫S37、子宮頸がんU14、ECAなどを高度に抑制する。
    がん細胞の代謝を抑制する。
    精油は直接腫瘍細胞を殺す。
    免疫力を高める。
    がん細胞の放射線感受性を高める。
    がん細胞の成長を遅延させる。
    など、多数の抗がん作用がある。

    臨床では膀胱がん、子宮頸がん、肝がん、胃がんなどで血瘀気滞の者に用いる。
    1. 膀胱がん
      莪朮、三稜各9g、青皮、橘皮、藿香、香附子、甘草各6g、生姜3片、大棗2枚を毎日1剤、煎じて服用する。。《抗腫瘤中薬的治癌効験》
    2. 子宮頸がん
      莪朮15g、当帰、赤芍、檳榔、昆布、桃仁、鼈甲、大黄各9g、桂心2.4g、琥珀1.2g(研)、枳殻4.5g、木香6g を毎日1剤、煎じて服用する。《抗腫瘤中薬的治癌効験》
    3. 肝がん
      莪朮、三稜各12g、柴胡、姜黄、当帰各10g、党参、北沙参、白花蛇舌草、半枝蓮、赤芍、白芍各20g、黄蓍、炒谷芽、炒麦芽各30g、全蠍6g、蜈蚣4条、斑蝥1g、茯苓30gを一日1剤、水で煎じて服用する。《抗腫瘤中薬的治癌効験》
    4. 胃がん
      莪朮、三稜、甘草各15g、黄薬子、阿魏、乳香、没薬各24g、硇砂、木鼈子各12g、蟾酥9g、延胡索、天仙藤各30g、露蜂房、生玳琩各18g、鶏内金45gを粉にし、蜂蜜で練って梧桐大の丸剤を作り、一日2-3回、一回5丸を服用する。《抗腫瘤中薬的治癌効験》
    このほかにも抗早産作用、抗菌作用、肝保護作用、抗血小板凝集作用、抗血栓作用、抗炎症作用、抗心筋梗塞作用、抗慢性閉塞性肺疾患作用、抗神経性皮膚炎作用、抗精神作用などが報告されている。

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