山西料理を代表する名菜『過油肉│晋風回鍋肉』のレシピを紹介します。焼肉とはいえ結構な手間隙がかかるので、しっかりと手順を追いながら調理してください。山西料理の代名詞とも言える名物料理です。
この料理の属する山西料理は山東料理の派生菜系といわれ、晋菜とも呼ばれます。現在の山西省は「中国文明」発祥の地とされ、その歴史は5000年以上遡れます。この地域に残る料理には数千年の歴史を持つものが少なくなく、それらはその他の地域に伝わって各地域の料理に大きな影響を与えました。その後この地域の料理は晋商と呼ばれた塩商人らによって牽引、発展してきました。晋商は安徽省を中心とした徽商(茶葉の交易)と広東省の潮商(在外華僑の中心)とあわせて「三大商幫」と呼ばれ、古代から近代まで中国全土で絶大な権力を誇りました。国共内戦時にどれも見る影もなく落ちぶれてしまいましたが…。
今回紹介する『過油肉』は晋菜といえば真っ先にこの料理が挙がるほど著名な料理で、まさに晋菜の代名詞。もともとは山西地域の豪族らに食べられていた料理が本になっているそうですが、この地域に集った商人らに愛され、彼らにより様々な地域に伝えられました。レシピが伝わる過程で調理方法に多くの改善が加えられ、様々な派生料理を生み出した料理でもあります。鶏むね肉を使った『紅白過油肉』や、ナマコを使った『海參過油肉』、豚の腎臓を加えた『過油肉加腰花』などが有名で、山西省周辺ではその他様々な派生料理が食べられます。遠くは上海、新彊辺りまで類似の料理が伝わっており、それらの地域では『走油肉』などとも呼ばれます。
現地ではお酒のおつまみの定番とされ、とくに黄酒との相性が良いといわれています。日本で言うなら米焼酎でしょうか?この料理の再現に挑戦される方は、おいしいお酒を準備してから調理してみましょう。
[材料]
豚ロース肉 ……… 200g
タケノコ ……… 20g
黒木耳 ……… 15g
ネギ ……… 5g
ショウガ ……… 2.5g
ニンニク ……… 5g
花椒 ……… 1g
卵 ……… 2個
チキンスープ ……… 50cc
ラード ……… 500g
[調味料1]
味噌 ……… 小さじ1/2
醤油 ……… 小さじ1/2
塩 ……… 少々
[調味料2]
紹興酒 ……… 小さじ1/2
味の素 ……… 小さじ1/4
醤油 ……… 大さじ1
ごま油 ……… 大さじ1
酢 ……… 小さじ1/3
水溶き片栗粉 ……… 大さじ6
[作り方]
1.豚ロース肉を0.3-0.4cmの厚さにうす切りにする。これを更に7cm×4cmの大きさの平行四辺形の形に切り分けておく。花椒をすりつぶして粉にしておく。
2.作り方1の豚ロース肉をボウルに入れ、花椒とすべての調味料1とよく混ぜ合わせる。ラップをして冷蔵庫で8時間以上浸けておく。
3.タケノコを下処理し、作り方1の豚ロース肉と同じ大きさに切り分けておく。黒木耳を水で戻し、同じく作り方1の豚ロース肉と同じくらいの大きさに切り分けておく。 ネギを6-7cmの長さに切り分ける。ショウガをみじん切りにする。ニンニクをうす切りにする。
4.タケノコを沸騰したお湯にくぐらせ、取り出して水気を切ってからボウルに入れる。これに黒木耳、チキンスープ、紹興酒、味の素、醤油、水溶き片栗粉を混ぜ合わせあんかけの素を作る。
5.熱したフライパンにラードを入れてすべて溶かし、165度前後まで熱する。作り方2で浸けておいた豚ロース肉を入れ、塊にならないようかき混ぜながら数秒揚げて火を通す。豚肉に火が通ったら一度豚ロース肉を取り出して油を切っておく。
6.作り方5のフライパンに残ったラードを少量残して捨て、ネギ、ショウガ、ニンニクを加えて炒めて香りを出す。香りが出たら豚ロース肉を鍋に戻し、作り方4のあんかけの素を加えてとろみが付くまで加熱し、最後に火を止めてからごま油と酢を振りかけて完成。
Point!
最後に好みで鍋から取り出しておいたラードを少量振りかけてもよいでしょう。
この料理最大のポイントはラードに豚肉を通すときの火加減です。165度から温度が10度高くても低くても失敗とみなされます。何度も練習して火加減を見極めましょう。
作り方5から6までは実際は一連の動作で行います。取り出した豚肉が冷えないうちに鍋に戻して調理して下さい。
更に細かいことを言えば、この料理、本来は使うラードの部位まで指定されています。手に入る方は中国語で「豬板油」と呼ばれる豚の腹部の皮の下にある一枚油を溶かして使ってください。
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