2015年7月12日日曜日

詩禮銀杏│孔府風ギンナンの砂糖煮込み

難易度:☆ 調理時間:1時間以内
前回作った『桂花醤』で香りをつける山東の高級料理『詩禮銀杏│孔府風ギンナンの砂糖煮込み』のレシピを紹介します。たった5種類の材料と調味料だけで作るシンプルな料理ですが、繊細な技法が生かされた高級料理です。日本ではなかなか食べられないので、ぜひ再現に挑戦してみてください。

山東地方は儒教の始祖である孔子の出身地として有名です。孔子は中国の影響を受けたほとんどすべての地域で知らない人はいないほどの著名人です。

もともと山東省には「孔府」と呼ばれる孔子の一族が住む家屋と土地が連綿と受け継がれています。孔子の一族が古代から伝えている料理は山東料理の中でも特に孔府菜と呼ばれ、数ある中華料理の中でも古代から世襲で伝わる理として異彩を放っています。ほとんどの料理に孔子や儒教にまつわる物語が添えられているのも特徴です。

現在も山東省に残る「孔府」は1994年に家屋が世界遺産に登録されているので、ご存知の方も多いかもしれません。孔子の一族は古く は始皇帝の時代に孔子の第9代嫡孫が魯國文通君に封じられて以降、王朝が変わっても色々な爵位を与えられてきました。もちろん世襲です。古くは爵位の名前 も色々でしたが、宋代に「衍聖公」という爵位を得てからは、近代までずっと、例え王朝が変わってもこの爵位は受け継がれてきました。儒教が国教とされてから孔府は王朝の手厚い保護を受け、時代を問わず常に中国最大の農地を持つ最大の貴族領として栄えました。

この料理は《孔府案》という書物に記載されている孔子の言葉、孔子がその弟子孔鯉に詩と礼を教えている時の言葉、"不學詩、无以言。不學禮、无以立"に由来します。この言葉を元に孔子の子孫は「詩礼世家」を自称することにもなります。孔子から数えて53代目の子孫孔治が先祖に敬意を示し、孔府に「詩禮堂」という建物を建てることになり、その門前には一対の巨大なギンナンの木が植えられました。このギンナンは毎年多くの実を付け、その実は毎年の孔府の宴に用いられたそうです。今回のレシピはそのギンナンを使った孔府の名菜から。

さて、孔子の直系が受け継いできた「衍聖公」の爵位は、中華民国が成立したつい近代まで存在していました。2008年に逝去した77代孔徳成が最後の「衍聖公」を持つその人です。

孔子の直系は第77代孔徳成から台湾に移住し、現在も台湾に在住しています。ご存知でしたか?中華民国では古代から世襲されてきた「衍聖公」の爵位が廃止されてしまいましたが、中華民国は"唯一の"世襲官職である「大成至聖先師奉祀官」という職位を新たに作り、孔子の子孫に受け継がせています。初代孔徳成は台湾大学の名誉教授であり、考試院の院長などを歴任、二代目孔垂長氏(第79代)は総督府の国策顧問を務め、台北孔子廟の祭祀を取り仕切るなど、孔子の血脈は今でも台湾の国家運営に少なからず影響を与えています。

現在最年少の孔子直系は2006年に生まれた直系第80代の孔裕仁氏。ギネスにも認められた「世界で最も長い血統図」の中央最下部に位置する正真正銘の孔子の嫡孫です。現在は新北市の小学校に通う普通の小学生。高貴な血筋とはいえ台湾で普通に暮らしているので、運がよければ孔子廟の祭祀でばったりなんてこともあるかも知れません。


[材料]
ギンナン ……… 750g
ラード ……… 50g
水 ……… 100cc

[調味料]
砂糖 ……… 250g
桂花醤 ……… 小さじ1/2
蜂蜜 ……… 大さじ3

[作り方]
1.ギンナンの皮をきれいに取り除き、沸騰したお湯で3分ほど茹でて苦味を抜く。お湯を変えて再びギンナンを入れ、柔らかくなるまで10分ほど煮込む。

2.熱したフライパンに半量のラードを入れて溶かし、砂糖を入れて弱火で加熱してカラメルを作る。砂糖が溶けたら水を加えてカラメルを溶かし、更に蜂蜜、桂花醤を加えて溶かす。最後にギンナンを加え、ソースに少しとろみが付くまで煮込む。最後に残り半量のラードを上に乗せ、器に盛り付けたら完成。

Point! 砂糖もギンナンも決して焦がしてはいけません。苦味が出ると料理がいっぺんに台無しになってしまいます。とにかくカラメルを焦がさないように、ソースにとろみが付くまで煮込むときも焦がさないよう注意しましょう。

咳止め痰切りの薬膳としても食べられます。

高級レストランではもちろんギンナンをそのまま器に並べるだけではありません。超絶技巧を凝らした野菜と一緒に盛り付け、正に芸術品といった趣で提供されることがあります。自身の技とセンスの限界に挑戦してみましょう。





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