2014年6月17日火曜日

冬笋麂絲│タケノコとキオン炒め

難易度: 調理時間:30分以内
本日は高難易度の特殊な材料を使った料理『冬笋麂丝│タケノコとキオン炒め』を紹介します。ほとんどの日本人が知らないであろう「キオン」という動物の肉を使います。果たして「キオン」とは?!

台湾には三種類のシカ科の動物がいます。「台湾水鹿」、「梅花鹿」、そしてもう一種がこの料理で使う「山羌(キオン)」です。それぞれ簡単に説明します。

台湾水鹿、学名は Cervus unicolor swinhoei。台湾固有の水鹿亜種で、別名を四目鹿といい、両側の目の舌に眼下腺を持つことから名付けられています。南部の飼育場に行けば割と簡単に見かけることが出来ますが、野生種を見つけるのは至難の業だそうです。台湾最大の草食動物でもあります。

梅花鹿、学名は Cervus nippon taiouanus。台湾固有の亜種で、野生個体群は1969年に絶滅してしまいました。現在は自然公園の中で飼育されています。戦国時代日本の武将たちが武具用の皮革としてこぞって求めた記録があり台湾史、日本史とも関係の深い動物です。

最後に山羌、学名は Muntiacus reevesi 。和名がキオンです。台湾語で「羌」は「Kiong」と発音し、和名の由来になっています。台湾では保護されている動物なのですが、日本では動物園で飼育していたものが逃げだして野生化し、各地で獣害を引き起こしています。日本では狩猟対象になっているので、コネがあれば肉が手に入るかもしれません。普通はただの鹿と区別しないと思うので、野生の鹿肉を食べたことがある方はそれがキオンの肉だったかもしれません。台湾固有の鹿のうち、最も個体数が多く、市場では肉も出回ります。南部の一部レストランで食べることができます。料理名にある「麂jǐ)」はキオンの別名です。皮が非常に柔らかく美しいことから、高級靴や鞄に使用されることもあります。同じ名前の植物があるのが紛らわしいですね。

麂肉は中国で古くから食用にされていたようで、いくつかの本草書に記載があります。《証類本草》では“味甘、平、无毒。主五痔病。炸出以姜、醋進之、大有效。又云:多食能動人痼疾。臣禹錫等謹按日華子云:麂、凉、有毒。能堕胎及発瘡癤疥。”などと書かれています。痔に効果があるそうですが、怖いので妊婦さんは食べるのを控えておきましょう。

さて、この料理はもともと安徽省の伝統料理で、湖南省でも食べられます。さすがにキオン肉で作るのは難しいので普通の鹿肉を使ってレシピを書いています。まぁ、大きな違いはないでしょう。 この属の動物にしか使われない漢字ですので、覚える必要はありません。鹿肉が手に入ったら、ぜひ挑戦してみてください。


[材料]
鹿肉 ……… 250g
タケノコ ……… 150g
卵白 ……… 1個
ショウガ ……… 10g
ネギ ……… 10g
ラード ……… 大さじ4
チキンスープ ……… 200cc
水溶き片栗粉 ……… 大さじ1

[調味料]
塩 ……… 小さじ1/3
醤油 ……… 大さじ1
砂糖 ……… 小さじ1/4
酒 ……… 大さじ1

[作り方]
1.鹿肉を繊維に沿って長さ4cm、幅0.5cmほどの極細切りにする。ショウガはみじん切りにする。ネギはみじん切りにする。

2.卵白を溶き、作り方1の鹿肉、ショウガ、酒、少量の塩(分量外)を加えてよく混ぜ合わせ、10分ほど漬けておく。

3.タケノコはアク抜きをしておく。鹿肉と同じくらいの細さに千切りにし、沸騰したお湯にくぐらせて火を通しておく。

4.熱した鍋にラードを溶かして140度ほどに熱したら、作り方2で浸けておいた鹿肉を鍋の縁から滑らせるように入れて強火で炒める。鍋を揺らしながら強火で鹿肉に火を通したら、すぐに取り出して油を切っておく。

5.作り方4の鍋にタケノコを入れ、醤油、塩、砂糖を加えて、かき混ぜながらざっと炒める。チキンスープを加えて沸騰させたら作り方4の鹿肉を加え、すぐに水溶き片栗粉でとろみをつける。他の具と混ざるように簡単にかき混ぜたら器に盛り付け、みじん切りにしたネギを散らして完成。

Point!
鹿肉をキオン肉で置き換えればオリジナルそのままの料理になります。

肉さえ手に入れば難易度は☆二つくらいのものです。


チキンスープの濃さにより調味料を調節してください。

台湾でも南部に行けば湖南料理の店などで食べられます。



1 件のコメント:

  1. 色々な珍しい料理とレシピやエピソードを、
    御紹介頂き有り難うございます。
    時節柄、ご自愛くださいませ。
    キオンが日本で野生化してる事や、
    場合に因れば鹿と混ざって流通している可能性が有る事を初めて知りました。
    ひょっとしたら、今まで食べた鹿刺身や鹿鍋の一部はキオンだったかもですね(苦笑)

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