久しぶりに本気の薬膳料理を紹介します。その名も『何首烏雞湯│何首烏薬膳スープ』、かなり珍しい生薬もふんだんに使って本気で補血します!以前にも同名の料理を紹介していますが、レシピが異なります。以前のレシピはこちら。今回のレシピの方が前回のものより旨みが強いです。
今回紹介したいのは生薬「骨砕補(こつさいほ)」、これ以外の生薬も普通の人にはそれなりになじみがないものでしょうが、薬剤師であれば大学や職場で一度は耳にしたことのあるものばかり。他の薬膳料理にもかなりの頻度で登場します。しかしこの「骨砕補」、普通の薬剤師だけでなく、漢方薬を専門に学んだ人ですら「そんなのあったっけ?」と首を傾げてしまうような超マイナー生薬で、ここで紹介しておかないと二度と機会がないと思うので今回はあえてこの生薬を取り上げたいと思います。
「骨砕補」は生薬では珍しいシダ植物、始載は《薬性論》でウラボシ科ハカマウラボシ Drynaria foutunei J. Sm. の根茎を乾燥させ、軽く炙って細毛を取り除いたものです。名前から分かるように特に筋骨の疾患に用いられる生薬で、名前の由来は「補骨脂」や、「接骨木」などとも似ています。この何首烏スープは、もともと血色が悪く、体力低下や貧血気味の人向けの薬膳料理なのですが、レシピにある「何首烏」、「熟地黄」、「当帰」や、部分的な脱毛に効果があるといわれる「骨砕補」を組み合わせることで髪の毛への作用も期待できそうです。
骨砕補以外の生薬もそれぞれ甘味や旨味の強いものばかりなので、薬膳料理とはいえ薬膳料理独特の香りを別にすれば非常においしいスープが取れます。日本では材料の入手が難しいとは思いますが、機会があればぜひ一度味わっていただきたい絶品薬膳料理です。
台湾ではいろんなレストランでこの『何首烏雞湯│何首烏薬膳スープ』が食べられます。中の生薬の配合は店ごとに違い、ここで紹介するレシピ以外にも「山薬」、「人参」、「枸杞」、「党参」、「蓮肉」、「薏苡仁」などを加えて作ることがあります。慣れてくるとスープをすこし飲んだだけで使っている生薬がだいたい分かったりもします。漢方薬が好きな人はためしてみてください(笑)。
生薬の深い世界が垣間見えるそんな絶品薬膳料理です。
[材料1]
鶏肉 ……… 600g
(烏骨鶏ならなおよい)
水 ……… 1000cc
[材料2]
何首烏 ……… 20g
当帰 ……… 5g
川芎 ……… 5g
大棗 ……… 5g
黄蓍 ……… 10g
骨砕補 ……… 10g
熟地黄 ……… 8g
炙甘草 ……… 2g
[調味料]
酒 ……… 250cc
塩 ……… 適量
[作り方]
1.材料2の生薬を軽く水で洗い雑物を取り除いておく。鶏肉は食べやすい大きさにぶつ切りにし、沸騰したお湯で3分ほど茹でてアクを抜いておく。
2.鶏肉と水、材料2のすべての生薬を鍋に入れ、酒を加えて加熱し沸騰させる。弱火で40分ほど煮込んで完成。
Point!
「芍薬」を加えると「四物湯」という処方がレシピ内部で完成します。香りの好みが分かれると思うので、普通の料理としては加えない方が無難ですが、血色が悪い人は試して見ましょう。
作り方はいたって簡単ですが、煮込むのも面倒だという人は、下処理した材料を炊飯器に入れてスイッチオンでも作れます。
レシピの具は鶏肉(烏骨鶏)のみですが、ゴーヤやヤマイモなどを足してもよいでしょう。鍋のようにあまりごちゃごちゃさせないのがコツです。
生薬はパックに入れずそのまま鍋に投入します。パックに入れてもいいのですが、この方が薬膳料理の風情が出るのです。箸でよけて食べましょう。
注:ネギやニンニクと「何首烏」は組み合わせて調理してはいけないことになっています。スープに入れるのはやめましょう。同属のユリ科植物のタマネギも避けましょう。中医学でいう禁忌配合といわれるものです。理由がよく分からないためはっきりしたことはいえないのですが、伝統的にそういうことになっています。
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