本日は久しぶりの薬膳料理『木耳燒豆腐│キクラゲと豆腐炒め』を紹介します。
当ブログをずっと追いかけてくださっている方にはご存知かもしれませんが、古来中国では多くの食材を薬としても用いてきました。おなじみの《本草綱目》には数多くの野菜や果物、肉類が収載されており、まさに「薬食同源」といえます。
毎日の食事に使われるような食材の一つ一つの薬効は強いものではありませんが、数年、数十年にわたって偏った食事を取り続けると、その積み重ねの効果はバカにできません。毎日バランスよく食事を取っていればあまり気にすることはないのですが、そんな現代人はほとんどいません。
通常の食事から一歩踏み込んで各人の偏ったバランスや体調に、食事の方面からより積極的に働きかけようというのが薬膳の基本概念です。
さて、今回の料理で使うキクラゲは中国薬膳においては「ベジタリアンの肉」という別名で呼ばれ、「畑の肉」とよばれる大豆から作った豆腐と似たような別名を持ちます。この二つを組み合わせた本料理はまさに「菜食主義者のステーキ」と呼んでもいいほどの高蛋白低カロリー、すばらしい栄養バランスを誇ります。
《本草綱目》からキクラゲの記載を抜き出してみると
木耳
(《本經》中品)
【校正】 自桑根白皮條分出。
【釋名】 木 (而、軟二音)。木菌(窘、卷二音)。木 (音縱)。樹雞(韓文)、木蛾。
時珍曰︰木耳生於朽木之上,無枝葉,乃濕熱余氣所生。曰耳曰蛾,象形也。曰 ,以軟濕者佳也。曰雞曰 ,因味似也。南楚人謂雞為 。曰菌,猶 也,亦象形也。 乃貝子之名。
或曰︰地生為菌,木生為蛾。北人曰蛾,南人曰蕈。
【集解】 《別錄》曰︰五木耳生犍為山谷。六月多雨時采,即曝乾。
弘景曰︰此云五木耳,而不顯言是何木。惟老桑樹生桑耳,有青、黃、赤、白者。軟濕者人采以作菹,無複藥用。
恭曰︰桑、槐、楮、榆、柳,此為五木耳。軟者並堪啖。楮耳人常食,槐耳療痔。煮漿粥安諸木上,以草覆之,即生蕈爾。
時珍曰︰木耳各木皆生,其良毒亦必隨木性,不可不審。然今貨者,亦多雜木,惟桑、柳、楮、榆之耳為多云。
【氣味】 甘、平、有小毒。
權曰︰蕈耳,古槐、桑樹上者良,柘木者次之。其餘樹上,多動風氣,發痼疾,令人肋下急,損經絡背膊,悶人。
藏器曰︰木耳,惡蛇、蟲從下過者,有毒。楓木上生者,令人笑不止。采歸色變者有毒,夜視有光者、欲爛不生蟲者並有毒,並生搗冬瓜蔓汁解之。
時珍曰︰按︰張仲景云︰木耳赤色及仰生者,並不可食。
【主治】 益氣不飢、輕身強志(《本經》)。斷谷治痔(時珍)。
【發明】 穎曰:一人患痔、諸藥不效、用木耳煮羹食之而愈、極驗。
時珍曰:按:《生生編》云:柳蛾補胃、木耳衰精。言老柳之蛾能補胃理氣。木耳乃朽木所生、得一陰之氣、故有衰精冷腎之害也。
【附方】 新六。
眼流冷淚:木耳一兩(燒存性)、木賊一兩、為末。每服二錢、以清米泔煎服。(《惠濟方》)。
血注腳瘡:桑耳、楮耳、牛屎菰各五錢、胎髮灰(男用女、女用男)三錢、研末、油和塗之、或乾塗之。(《奇效良方》)。
崩中漏下:木耳半斤、炒見煙、為末、每服二錢一分、頭髮灰三分、共二錢四分、以應二十四氣。好酒調服、出汗。(孫氏《集效方》)
新久泄痢:乾木耳一兩(炒)、鹿角膠二錢半(炒)、為末。每服三錢、溫酒調下、日二。(《御藥院方》)。
血痢下血:木耳(炒研)五錢、酒服即可。亦用井花水服。或以水煮鹽、醋食之、以汁送下。(《普濟方》)。
一切牙痛:木耳、荊芥等分、煎湯頻漱。(《普濟方》)
となっています。
なかなか興味深いことに、古くは痔の治療薬としても使われていたことがわかります。キクラゲのあんかけスープが非常によく効くと書かれていますので、お悩みの方は試してみてもいいかもしれません。
また朽ちた木から生えることから陰気の塊と考えられ、腎臓を冷やして精力を減退させると考えられていたことが分かります。そのせいでしょうか「有小毒」の記載も気になりますが、《本草綱目》の同じ巻に載っている「冬瓜(トウガン)」の項には「搗汁服,解木耳毒。」との記載もあります。キクラゲの毒性が気になる方はトウガンの絞り汁と一緒に調理すればいいでしょう。まぁ、あまり気にすることはありません。
キクラゲは100gあたり25kcalと低カロリー。さらに腎臓を冷やして精力を減退させるどころか、必須微量元素であるセレンや亜鉛も豊富に含むので、精力回復の効果も期待できます。「どうも肉を食べる気力がない」という方におすすめの料理です。
[材料]
黒キクラゲ ……… 30g
花椒 ……… 少々
(なくてもよい)
豆腐 ……… 100g
トウガラシ ……… 3g
ニンニク ……… 2個
ネギ ……… 1本
[調味料]
塩 ……… 適量
味の素 ……… 適量
[作り方]
1.豆腐はさいの目に切って水気をよく切っておく。ネギとニンニクはみじん切りにする。
2.熱した鍋に大さじ5のサラダ油(分量外)をいれ150度に熱する。ネギとニンニクを炒めて香りを出し、豆腐を加えて表面の色が変わるまで数分炒める。豆腐の色が変わったらキクラゲを加え、最後にトウガラシ、花椒、塩、味の素で味を調えて完成。
Point!
豆腐にある豆類独特の臭みとキクラゲは実は余り相性がよくありません。豆腐はしっかりと水気を切って、炒めるときも表面の水分をしっかり飛ばしてしまいましょう。
中華スープを加えてあんかけ風にしてもよいでしょう。古典に記載のあるとおり痔に効果があるかもしれません。
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