2013年1月8日火曜日

十全大補湯│十全大補湯スープ

十全大補湯│十全大補湯スープ

なんとも医薬品臭い名前ですが、中華圏ではこれが正式な料理名で台湾でも全国各地で食べることができる薬膳スープです。日本の漢方薬にも同名の処方がありますが、今回紹介するのはあくまで料理としてのレシピです。

『十全大補湯(”じゅうぜんたいほとう”と読みます)』は中華圏南部、特に台湾で薬膳料理として提供されることが多く、ここ台湾では家庭でも作れるようにスーパーや漢方薬局で簡単に材料セットを購入することができます。非常にポピュラーな薬膳料理といえるでしょう。

「十全」というだけあって10種類の生薬・香辛料を混ぜて作るのが本来の姿ですが、値段や味の関係で10が11や12になったり、 時に9になったりして売られています。構成生薬が1つ増えたり減ったりしただけで名前が変わるのが漢方の世界なのですが、今回紹介するのは料理なので余りうるさくは言わないことにしましょう。原典である『和材局方』はなんと1000年も前に書かれていて、その頃から処方はすこしだけ変わっていますが、続けて飲み続けられている由緒ある”料理”なのです。(こうい由緒に弱いのは台湾人も日本人も共通です。)


通常『十全大補湯』といった場合は鶏肉を煮込んだものものを指しますが、豚ばら肉を使えば『十全排骨湯』、羊肉を使えば『十全羊肉湯』という名前に変わり、これらの名前でメニューに書かれていることも多いです。

生薬・香辛料の配合がメーカーや漢方薬局によって変わるのでも驚きですが、調理方法も作り手によって千差万別で、「全部を米酒で作る!」、「いや水で煮込む!」、「いやいやスープは別の鍋で」、「いやいやいや土鍋で全部一緒に」とこの手の料理によくあるこうした方が一番いい!論争もちょくちょく発生します。大体その道のお偉いさんが言うことが正しいということで決着がつきます。

まぁ、その手の論争はさておき、あくまで料理なのであまり細かいことは気にせず、おいしく作りましょう。香辛料の調理にはいくつか注意はあるのですが、そのまま作れば材料と調理途中の香りからは想像もできないような濃厚でコクのあるおいしいスープが出来上がります。

もともと冷え性とは無縁の筆者なのですが、ここ数日足先が冷え、どうも体調が悪いと感じたので本日急遽このスープを作って食べました、というわけで明日は実践編をやります。
 
*本記事はあくまで料理レシピであり、各生薬・香辛料の効能効果は一般的な情報に基づいて提供しています。感じ方は人それぞれですし、ここで紹介した内容が全員に同じく当てはまるとは考えません。効能・効果について質問されても、当ブログ上では返答しませんのでご了承ください。

料理名が医薬品と同名なので、念のため上記のようなことを書いておいたり…。また当ブログでは基本的に植物性の材料を漢字かカタカナで紹介していますが、生薬名をカタカナで書くと医薬品を示すことになるので、生薬・香辛料の読みはひらがなで紹介しております。

なお紹介している生薬の配合は一般的なものですが、実際に調理するときは生薬の品質を見ながら、適宜増減させます。筆者が実際に作ったときはスーパーで手に入れた桂皮の品質が余りにも悪く(ほとんど香りがない)15gも使いまいました。台湾で市販されている料理用の生薬や香辛料を使う方は注意しましょう。

また、ここでは一般的な十全大補湯のレシピを紹介しますが、明日紹介する実践編では少々レシピが異なります。お楽しみに。

(写真は明日のレシピをお楽しみに。)


難易度:
☆☆

調理時間:
2時間

材料1:
朝鮮人参 ……… 3g
当帰 ……… 3g
川芎 ……… 3g
芍薬 ……… 3g
熟地黄 ……… 3g
白朮 ……… 3g
 (→Point参照)
茯苓 ……… 3g
甘草 ……… 1.5g
桂皮 ……… 3g
黄耆 ……… 3g

材料2:
鶏肉 ……… 半匹 
酒 ……… 1200cc
水 ……… 300cc

材料3:(お好み)
白菜、豆腐、キノコ類など ……… 適量

調味料:
塩 ……… 少々


作り方:
1.熟地黄以外の生薬をティーパックに入れる。鶏肉は食べやすい大きさに切り、一度熱湯にくぐらせた後、氷水につけておく。

2.材料を鍋に入れ、作り方1の生薬パック、熟地黄、鶏肉を入れ、酒を加えてアルコール分が飛ぶまで弱火で煮込む。

3.アルコール分が飛んだ後も弱火で煮込み続け、煮詰まってきたら適宜水を加えながら1時間半ほど煮込む。野菜やキノコを加え、出来上がりに塩で味を整えて完成。


Point:
消化に何の問題もないという方は白朮の代わりに蒼朮(そうじゅつ)という生薬をつかって作ったほうがよいかもしれません。まぁ、細かい話ですので余り気にせずに作りましょう。

最後の塩は入れなくてもきちんと味が付いています。鍋に入れるより各自が好みで降りかけられるようにしておけばよいでしょう。塩などくわえなくてもおいしく食べられます。

酒の代わりに水だけで作ってもOK。1.5リットル加えて半量程度まで煮詰めましょう。途中で適宜水を加えるのを忘れずに。

水だけで作る場合でも50ccほど料理酒を加えましょう。当帰、川芎などの一部生薬の味は酒によって抽出されるので、風味がよくなります。

あとは普通の鍋と同じです。好みで野菜、キノコ類、豆腐などを加えて作ってください。

熟地黄は煮込むとホロホロに崩れて黒いアクのような小さな塊になり、材料にくっつきます。そのまま食べてください。

〆は雑炊にするよりもうどんの方がいいでしょう。

材料の読み方はそれぞれ
 ヒゲ人参│ひげにんじん
 当帰│とうき
 川芎│せんきゅう
 芍薬│しゃくやく
 熟地黄│じゅくじおう
 白朮│びゃくじゅつ
 茯苓│ぶくりょう
 甘草│かんぞう 
 桂皮│けいひ 
 黄耆│おうぎ 
です。

作り手によっては棗やクコの実などが加わります。




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