台湾の家庭料理『烤烏魚子│焼からすみ』のレシピを紹介します。台湾みやげの代名詞でもあるからすみの調理方法を紹介します。お酒を振りかけてからオーブンやトースターで焼くだけですが、調理の手順を知らない人も多いのですは?作り方を覚えておけば台湾土産でもらった時だけではなく、自分で買って食べるときにも便利です。
からすみは漢字で「唐墨」とかき、中国の墨に形が似ていることから名づけられました。古代の墨は菜種油やごま油の煤を水で延ばし膠で固めたもので、古代から現代にいたるまで黒い染料として用いられてきました。炭が原料なので炭素が色素の正体です。唐墨というだけあって古代中国で発明され、世界中に広まっり、「チャイニーズインク」の名で呼ばれました。墨以外にも世界には古代より黒い染料が存在していました。
代表的なものは「セピア」、「ビストル」、「没食子インク」でしょう。それぞれ簡単に紹介します。
セピアは日本人でもご存知の方も多いでしょう。淡い茶色に退色した写真の表現技法として知られていますが、もともとはセピアとはイカの墨(さらにはその大元であるコウイカそのもの)のことです。生物由来の黒いたんぱく質が色素の正体です。今でもギリシャやイタリアではコウイカのことをセピアと呼ぶそうです。昔はこの色素を使って白黒写真を現像していましたが、時間が経つとわれわれのよく知るセピア色に退色します。古い絵画もセピアを用いて書かれたものが多く、描画当初の色を再現するためにはセピアの分析が欠かせません。
ビストルはブナの木の根を燃やし、水で蒸留して得られる色素です。タールなどを主成分とし、こちらも古代より黒い色素として用いられてきました。淡い茶色がかった特徴のある黒色が得られます。こちらも多くの巨匠により絵画に用いられました。
「没食子インク」は非常に古くから用いられた色素で、世界最古の聖書もこのインクを用いて書かれています。色の正体は酸化鉄(II)で、使用前に適当なpHの溶液と混ぜ合わせて自前でインクを調合する必要がありました。しかし適当に調合された没食子インクは時間と共に色が濃ゆくなり、現代の油性インキのように水で落ちないという性質があり、記録媒体として非常に重宝されました。
しかし上記の黒色素では深い黒を表現することができず、いわゆる「黒」 を表現するためには超高級黒色素として現代でも使われる象牙を焼成した「アイボリーブラック」や、紫の染料を濃厚に使うという手法が取られていました。
日本でも古代より高貴な色(つまり希少品)として知られている「紫(シコンやムラサキガイの色素)」をこれでもかと濃密に使って表した「黒」は古代では超超貴重品だったことでしょう。あんがい日本で最も高貴であるとされた色は「紫」ではなく、それを使って表現しようとした「深黒」だったのかもしれません。
現代では数多くの黒を表現する色素や物質が発見されており、 身の回りには様々な「黒」があふれています。数年前には可視光の99.9%以上を吸収する「ベンタブラック」という物質も発明され、実用化されています。手に入らないからこそ高貴な色とされた黒。その黒を称える古代の人が、もし現代によみがえったとしたら。身の回りにあふれる黒を見て「やっぱり未来ってスゲー」と思うのでしょうか(笑)。
それではレシピです。
[材料]
からすみ ……… 1枚
[調味料]
酒 ……… 適量
(臭み抜き、香りづけなので、好みの種類の酒を使うとよい)
[作り方]
1.からすみを自然解凍し、片面に酒を振りかけて3分放置する。ひっくり返して再び酒をふりかけ、再び3分放置する。酒に5分ほど浸けておいてもおいてもよい。
2.オーブンで作るなら200度に予熱しておき、3分焼く。トースターで焼くなら強火で同じく3分ほど過熱する。
3.取り出したからすみを薄切りにし、器に盛り付けて完成。
Point!
通常はからすみと同様に薄切りにしたダイコン、ナシなどを添えて食べます。筆者の考えでは、ある程度さっくりとした食感があればどんな食材とも合うと思うので、機会があれば季節の野菜や果物と合わせて食べてみて下さい。カキ、リンゴ、モモなどの果物やノリ、胡麻煎餅、クラッカーなども合うと思います。細かく刻んでサラダに振りかけても良さそうです。
炙るにしろ焼くにしろ、火を通すのは表面だけです。
酒はアルコール度数の高いものの方が臭みが抜けやすく、香りも残ります。紹興酒や老酒、ウォッカ、ブランデー、焼酎などを使いましょう。もちろん日本酒でもよい香りがつきますが、アルコール分が少ないので一度焼いた後に表面に刷毛で薄く塗ったりすると効果的です。
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