2015年10月1日木曜日

精武鴨頸│武漢風カモ頸煮込み

難易度: 調理時間:半日
湖北省武漢の名物料理『精武鴨頸│武漢風カモ頸煮込み』のレシピを紹介します。カモの頸を各種香辛料で煮込んだ料理で、かなり手間をかけて作ります。また排草(排香草)という特殊な香辛料と色付けに紅曲米という特殊な材料を使います。日本では手に入れにくいので代用して挑戦しましょう。

この料理以外にはまず使わないと思われる食材「排草」について記します。

排草は生薬・香料として使われる植物で、基原となる植物が数種類あります。通常生薬として用いる排草は学名を Lysimachia capillipes というサクラソウ科の植物が指定されています。お寺のお香の原料として使うこともあるので、台湾でもは少量が流通しているのですが、台湾市場で流通している排草はどう見ても土藿香と同じものです。台湾で香料として流通しているものは習慣的にこちらを使っているのでしょう。

生薬の問屋でも本物はまず手に入らない、というか長年流通に関わっている仕入れの専門家ですら知らないほどの珍しい生薬で、本物を手に入れるなら産地に行って自分で採ってきた方が簡単かもしれません。それほどレアです(笑)。

調べてみたところ土藿香 Agastache rugosa の別名に「排草香」というのがあり、こちらと混同されているようです。まぁ、この土藿香もかなりレアな香料ですけど…。料理に使う場合は手に入りやすく香りの似ている藿香などで代用するとよいでしょう。

今まで生薬学者が注目してこなかったのも基原が曖昧になっている理由の一つでしょう。こういったマイナー生薬を現地に赴いて調べるのも、伝統医学や生薬学の重要な研究分野です。今後の研究が待たれます。ちなみに筆者の専門の一つです。興味ある方の連絡お待ちしております(笑)!

もう一つ、この料理で使う「紅麹米(簡:紅曲米)」について説明します。

紅麹米とは紅麹の原料となる麹菌を繁殖させた米のことで、これを原料に紅麹や紅麹酒を作ります。日本酒の麹の育成と同じように、製作には過酷な肉体労働と職人技が必要な材料で、現在でも大量生産ができていない比較的高価な食材です。中国と日本が共同で大量生産の研究を行っているようですが、まだまだ経済規模での機械生産には成功していないようです。

排草も紅麹米も日本では手に入れにくいので他の材料で代用して作りましょう。鶏の頸肉でも同じように作れますが、カモの方が大型で肉が多いので食べやすいです。


[材料1]
カモ頸肉 ……… 1000g
乾燥トウガラシ ……… 80g
ショウガ ……… 20g
ネギ ……… 25g

 [材料2]
八角 ……… 4g
山奈 ……… 2g
桂皮 ……… 1.5g
小茴香 ……… 2g
草果 ……… 2g
花椒 ……… 2g
丁香 ……… 5g
沙仁 ……… 1.5g
肉豆蔻 ……… 1g
排草 ……… 1g
 (手に入らない場合は藿香か好みのハーブ・香辛料で代用する。)
月桂葉 ……… 0.5g

[調味料]
塩 ……… 40g
味の素 ……… 3g
紅麴米 ……… 10g
 (手に入らない場合は紅麹で代用する。)
水 ……… 200cc
酒 ……… 20g
中華スープ ……… 1000cc
サラダ油 ……… 400cc

[作り方]
1.カモ頸肉をよく洗っておく。ショウガをうす切りにし、包丁の腹で叩いて繊維を潰す。ネギをぶつ切りにし、包丁の腹で叩いて繊維を潰す。

2.ボウルにカモ頸肉とショウガ、ネギ、半量の塩、酒を入れてよくかき混ぜ、ラップをして冷蔵庫に入れる。そのまま12時間以上漬けておき、味を馴染ませる。ショウガとネギは取り出して別に保管しておく。

3.作り方2のカモ頸肉を沸騰したお湯にくぐらせて表面に火を通し、取り出して水気を切っておく。

4.乾燥トウガラシをぶつ切りにして種を除く。紅曲米を200ccの水で研ぎ、色が出たら水だけを漉して取っておく。

5.鍋にサラダ油を入れ、乾燥トウガラシ、すべての材料2、作り方2でカモ頸肉を漬けておいたショウガとネギを入れて、弱火でよくかき混ぜながら炒める。香辛料の香りが出たら作り方4の紅曲米の研ぎ汁と中華スープ、残り半量の塩、味の素を加えて沸騰させ、弱火で2時間煮込む。スープの完成。

6.作り方5のスープにカモ頸肉を入れ、蓋をして中火で10分ほど煮込んだ後火を止めて蒸らす。カモ頸肉を取り出して常温に冷ましたら完成。

Point!
冷凍されたカモ頸肉を使う場合ば、完全に解凍してから調理しましょう。通常は皮を除いたものを使いますが、皮つきのままでも作れます。

小ぶりの乾燥トウガラシを使う場合はぶつ切りにせずそのまま用いてかまいません。

香辛料は好みのものを用いましょう。

カモ頸肉すぐに食べない場合はスープに浸けたまま保存します。

お店で作る場合甘草、羅漢果、肉桂、党参、乾姜、五味子、天麻、杜仲、大棗、呉茱萸、芍薬、葛根、檸檬草、菟絲子などの各種薬材、香辛料を数十種類煮込んだスープを使います。腕に自信のある方はいろいろとオリジナルの組み合わせを試してみましょう。もちろんレシピ通りでも十分美味しい料理になります。


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