山東の伝統料理、古い歴史を持つ『糝│山東粥』のレシピを紹介します。レシピでは鶏肉で作っていますが、牛、豚、羊、はたまた鹿、イノシシ、キジ、馬など何の動物の肉でも作れる肉粥料理です。
料理を表す漢字「糝」は数通りの読みがあり、それぞれ意味が異なります。料理とも深く関係があるので、まずはこちらを簡単にまとめます。
一つ目は糝(糁)[Sa2]、これは山東方言での発音で今回の料理は正しくはこの読み方で読みます。元々は煮込んで火を通した穀物の意味ですが、非常に古くから料理名として書物に登場します。古代中国の礼法を記録した《禮記・內則》にも"糝:取牛羊豕之肉、三如一小切之、與稻米;稻米二肉一、合以為餌煎之。"という風に記載があります。同時代の他の古書にも登場するのですが、どれも作り方は現在とほとんど同じです。これが今回紹介する『糝│山東粥』のレシピの元となっています。
二つ目は糝[Shen1]、こちらは普通話の発音で、穀物を粉にしたものの意味です。玉米糝(トウモロコシの粉)のように使います。
三つ目は「San3」、普通話で米粒の意味です。実はこの料理、歴史的にも山東省辺りが発祥とされ、正式な名称は一つ目の[Sa2]の音が正しく、現地でもこの料理を[Sa2]と呼ぶびます。ですが[Sa2]の音は山東省の方言音とされており、普通話の辞書にも[Sa2]の音が載っていません。というわけで山東省以外の地域ではこの料理を「San3」の発音で『糝湯』と呼びます。普通話の範疇ではこちらも間違いではないのですが、本場山東省ではまず通じないのでご注意ください。台湾語で発音しないと通じない『蚵仔煎』見たいなものですね。ただ…山東省以外で食べられる『糝湯』は山東省の『糝』とは少しだけ作り方が違うのでご注意ください。
ちなみにこの料理、中国では2500年ほど前から食べられていたことが分かっていますが、更に歴史を遡ると古代アラブ地方からもたらされたことが分かっています。非常に古い歴史がありながら現在のものとほとんど形が変わらないという珍しい中華料理の一つです。 まさに生きた化石!(の中華料理版)。シルクロードに思いを馳せながらお楽しみください。
[材料]
鶏肉 ……… 半匹分(約400g)
麦または米 ……… 80g
ネギ ……… 30g
ショウガ ……… 750g
小麦粉 ……… 適量
水 ……… 3000cc
[調味料]
五香粉 ……… 大さじ1
塩 ……… 大さじ1g
醤油 ……… 大さじ3
胡椒 ……… 小さじ1/2
ごま油 ……… 適量
酢 ……… 適量
[作り方]
1.鶏肉をよく洗い、麦または米とともに鍋に入れる。水を加えて蓋をし、中火で3時間煮込む。
2.ショウガを包丁の腹で叩いて潰し、ネギ、五香粉、塩、醤油、胡椒とともに作り方1の鍋に入れる。鶏肉が骨から外れるようによくかき混ぜたら骨と取り除き、スープを耐熱の小皿に入れる。小皿にラップをして容器ごと蒸し器に入れ、中火で1時間ほど蒸す。
3.作り方2で小皿に分けたスープに、適量の水(分量外)で溶いた小麦粉を溶かしてとろみをつける。これを再び蒸し器に入れ、食べる直前まで10分以上蒸す。食べる前にスープを取り出し、もともとのスープを煮込んだ鍋から鶏肉を適量取り分けてスープに入れる。最後にごま油、酢などを振りかけて好みに味付けして完成。
Point!
最後の水溶き小麦粉は入れなくてもOK。逆に小麦粉団子を作って入れ、『団子汁』のようにして食べてもいいでしょう。
現代の専門店ではスープに砂仁、丁香、陳皮、肉桂、黒豆、八角、小茴香、肉豆蔻、百芷、良姜、花椒などを入れて、非常に香り高い薬膳風の料理にすることがあります。薬膳の知識に自身がある方はオリジナルの『糝』作製に挑戦してみましょう。
鶏肉以外の肉を使う場合も、骨付きのものを使ってしっかりダシをとり、そのスープを使って少量の麦か米を煮込んで作ります。何の肉を使っても良いですが、伝統的に魚介類と野菜は使いません。
食前に卵を溶いて入れる食べ方もあります。好みでどうぞ。
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