さて、樟(くすのき)と台湾には切っても切り離せない深いつながりがあることは台湾通の皆様ならよくご存知でしょう。ご存じない方のために日本統治時代に全世界の大半を算出していた台湾の樟脳についてざっと概説したいと思います。
樟を水蒸気蒸留してえられるd-カンファー、いわゆる樟脳は古来より防虫剤などとして用いられてきました。もともと中国南部や台湾、日本などの狭い地域でしか育たない植物で、これに目をつけた日本政府は台湾領有後すぐの1899年に専売制をしき、台湾での樟脳のプランテーション栽培を始めます。(当時台湾で専売制が敷かれたのは、阿片、樟脳、塩、酒、タバコの5品目。)
19世紀末に人類初の人工熱可塑性樹脂セルロイドの原料として世界的に需要が高まると、台湾の樟脳は世界需要の6割以上を生産するようになり、日本の経済だけでなく世界中の化学工業の発展を後押ししました。当時の用途は映画のフィルム、おもちゃ、写真乾板、医薬品など用途はさまざまですが、1920年に化学合成法が確立するまで台湾の樟脳は世界の需要を満たし続けます。プラスチックが実用化されて以降はほとんど使われなくなりますが、当時は「作っても作っても追いつかない」と表現されるほどの需要がありました。今でもピンポン玉やボールペンの材料などとして日本でも少量が生産されています。
日本が専売をしいていた上記製品については栽培、採取、生産、加工、工場などの資料は大量に残されており、社会・経済・人文系の分析・研究のテーマとして根強い人気があります。鈴木商店との関連も強いので、現在の日本経済につながる面白い物語がたくさんあります。中国語の分かる方は論文や著作を探して読んでみるとよいでしょう。
今回の料理は樟のチップと茶葉で鶏肉をいぶして作ります。オーブンで作れるので、チップをさまざまに変えてオリジナルの香りを作ってみてください。その場合は料理名を「○茶鶏」に、○に使ったチップの名前に変えましょう。
難易度:
☆☆☆
調理時間:
半日
材料1:
鶏肉 ……… 1匹分
ごま油 ……… 大さじ4
ネギ ……… 4本
材料2:
樟チップ ……… 50g
茶葉 ……… 200cc
調味料1
塩 ……… 大さじ1と1/2
花椒 ……… 小さじ1
八角 ……… 2個
調味料2:
豆板醤 ……… 大さじ1
砂糖 ……… 大さじ3
水 ……… 大さじ2
作り方:
1.鶏肉はよく洗い、血を抜いて、水気を切っておく。
2.熱した鍋に大匙2の油(分量外)をひき、調味料1を弱火で加熱して油に香りを移す。十分に香りを引き出したら、この油を作り方1の鶏肉に塗る。3-6時間放置して味をなじませたら、蒸し器で40分蒸して火を通す。
3.オーブンを230度に熱し、作り方2の鶏肉を上段に、材料2を混ぜ合わせたものを下段に乗せる。10分ほど加熱して鶏肉の表面がきつね色になったら取り出す。
4.鍋に油を170度ほどに熱し、作り方3の鶏肉を揚げるようにして皮がパリパリになるまで炒め、適当な大きさに切り分けて更に盛り付ける。
5.別の鍋に大さじ4のごま油を熱し、調味料2の材料を炒めてソースを作る。作り方4の鶏肉にソースと、ぶつ切りにしたネギを添えて完成。
Point:
鶏肉に香料油を塗るときは皮だけでなく腹の中にも満遍なく塗りましょう。
オーブンが上段下段に分けられないときはアルミのカップにチップ、茶葉などを入れて一緒に加熱しましょう。
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